00.とおいとおい、いつかのおはなし。
一つめは、まず【核】を作った。
二つめは、その【核】を守る【殻】を作った。
三つめは、それらが根を張ることの出来る【大地】を作った。
四つめは、それらを包み込み守れるよう【天空】を作った。
五つめは、それらが息づくように【大気】で満たした。
六つめは、それらがいつか還る場所にと【大海】を作った。
そして、七つめが、手探りながらも、ついに最初の【命】を作り上げた。
「ならば、私は何も作りません」
そう言ったのは、最後のひとつ。八つめだった。
「作らない? 何故?」
誰かが問うと、八つめは答えた。
「皆の力で、小さな小さなこの子は、ここに生まれた。けれど、生まれたてのこの子は、きっと、脆い。私は何も作らないその代わりに、この子を守りましょう。長く、永く、生きていくことが出来るように」
皆が、ひどく驚いた。
「我等は皆、いずれ〝ここ〟を去ることになる」
「お前は、独りきりで〝ここ〟に残るというの?」
「それは、とても寂しいことだよ」
「独りぼっちは、とても、とても、寂しいことだ」
八つめは、穏やかに笑った。
「独りではない。皆が作ったこの子に、私は永く寄り添うでしょう」
大丈夫。
私は、孤独ではない。確かな温もりと共に過ごしていける。
生き続けるのだ。生きていけるのだ。
ずっと。ずっと。
ずっと。
そうして、去って行った七つ達の名だけが残り、最後の八つめは、誰にも覚えられないまま、知られぬまま、どこかに消えてしまった。
物語が始まるよりも、ずっと、ずーっと、昔の〝はじまり〟。
※完結まで予約投稿済みです。