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【完結】あの山にダンジョンを築城しよう! ~命の実を守るために俺だけの城に引き篭もってやる~  作者: 敷知遠江守
最終章 平城(後篇)

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最終話 落城の日

大魔王ソウマ(田峯壮馬):女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」

アグレアス(消失):地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)、奥義「彼岸の舞」

マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造IVソロちゃん」「遠隔活動」、得物はモーニングスター

ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」「栽培」、得物はサック

ロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)

ピュセル:地0水5火1風0、スキル「水流操作」、得物は刀(刀技)

ハルパス:地3水0火0風3、スキル「経理」「兵站」「建築」、得物はハンドアックス

フルフル:地0水0火0風5、スキル「栽培」「精霊召喚」、得物は杖

ザガム:地0水4火4風0、スキル「酒造」「金属加工」、得物は長柄の鎚(鎚技)

ウサグー:地2水2火2風2、スキル「治癒」、得物は鞭(鞭技)

ソラス:地4水4火4風4、スキル「予知」「軍師」「大魔導」、得物はタクト

ビム:地0水0火5風0、スキル「戦鬼」、得物は大剣(剣技)

ゴブリンのセイル:地0水0火0風4、スキル「伝達」「転移」、得物は短剣

 軍団長が討たれた事で、大地国の兵は我先にと逃走に入った。

 ソラスはマルファスやビフロンに追撃無用という指示を出した。さらにビムたちにも歯向かう者以外は逃がしてやれと指示。

 これでまたしばらく、いつもの平穏な日々が訪れる。そうほっと胸を撫でおろした矢先の事であった。洞窟の入口から子供の声が聞こえてきた。


「父さん、先ほどの兵たちの話だと、大魔王ソウマがいるのはこの奥らしいね。という事は、こんなところが天の神の言っていたソウマの城って事なのかな?」


 コツン、コツンと複数の靴音が近づいて来る。次の瞬間、ピキンという悲鳴のような音が洞窟一杯に響き渡る。その音を聞くのはこれで三度目。城内の全員がその音で勇者の来城を察した。


 ふと隣を見ると、ソラスが真っ青な顔で目を見開いて唇を震わせていた。


「どうした、ソラス? どうかしたのか?」


 反応が無い。肩にポンと手を置き優しく微笑むと、ソラスは泣き出しそうな顔をし、顎に皺を寄せてこちらを見てきた。


「壮馬様は、予知は変えられるとお思いになられますか?」


 突然の質問に戸惑ったが、恐らくはこの光景を事前にソラスは見ていたのだろう。そしてその中で良からぬ光景を目にしたのだろう。

 ソラスの正面に立ち、屈んでソラスと目線を合わせ、にっと笑顔を向ける。その俺の顔にソラスもつられて笑顔を作ろうとする。


「ソラス。予知はあくまで予知だ。全力で抗ってやろうぜ」


 俺が拳を握ってみせると、ソラスは何か吹っ切れたようで、顔をくしゃりとさせて微笑んだ。鼻に皺の寄った顔が実にキュートだ。



 ガシャンという派手な破壊音が洞窟内に鳴り響く。振り返って一の丸を見てみると、無数にいた骸骨兵が全て粉々に破壊されており、ソロちゃんも無残な姿に砕かれていた。


 洞窟にやってきたのはわずか五人。

 先頭はまるで陽光のような明るい金髪の男の子。見た感じ中学生くらいだろうか。背には天の神から授かったであろう竜を象った剣を背負っている。

 その母親と思しき、同じ髪色の女性がその後ろに控えている。短めの鉄色のワンピースと編んだ髪が活発そうな印象を受ける。

 それと群青色の髪をした少女。見た感じでは小学校高学年くらいだろうか。

 さらにその母親と思しき同じ髪色の女性。白と藤色のワンピースは金髪の女性より丈が長く、こちらはかなり清楚な印象を受ける。

 最後は紺色のターバンを巻いた黒髪の男性。赤い大きな宝石のはまった杖を手にしている。


 どうやら群青色の髪の女性が派手な風魔法をぶっぱなし、一の丸にいた骸骨兵を粉微塵にしてしまったらしい。まだ女性の右手には風がまとわりついている。


「勇者一行が来ました! 数は五。ビム、ピュセル、ザガム、フルフルは三の丸で待機。ロレイも三の丸へ。ウサグー、マルファス、ビフロン、あなたたちはこちらに来て壮馬様を警護してください」


 ソラスの指示で、皆が一斉に配置を変える。


 フルフルが風の精霊を召喚。するとそれを見たビムが両手合わせ何やら呪文を唱え始めた。


「我が熱き闘気よ、我から別れ、その姿を現わせ! 『焔影えんえい分身』!」


 そう叫ぶと、ビムの背後の影がゆらりと揺れ、そこから全く同じ姿恰好をした影が現れた。その手にはビムと全く同じ大剣。


 ゆっくりと勇者たちが三の丸に向かう。誰も声を発しない。勇者たちもその先に強敵が待ち受けているという事を肌で感じているのだろう。


 戦端はロレイの弓技によって開かれた。

 追尾能力を持った矢が先ほど風魔法を唱えた群青色の髪の女性を襲う。女性は風魔法で防ごうとしたのだが、ロレイの矢はそれを打ち破って女性の肩に食い込んだ。


 それを合図に、勇者の少年、黒髪ターバンの男性、金髪の女性の三人が一斉に突っ込んで来た。勇者にはビムと影、ターバンの男性にはピュセル、金髪の女性にはザガムが当たる。


 その後方で群青色の髪の女性が矢を引き抜こうと手をかけた。その瞬間、フルフルの風魔法がその矢から発生。女性の左手を吹き飛ばしてしまった。


 ビチビチと噴き出す鮮血を浴びながら、群青色の髪の少女が急いで母親に治癒魔法をかける。そこにフルフルの風の精霊が風の刃を手に襲い掛かる。

 だが、その前に金髪の女性が炎魔法を投げつけ、風の精霊を爆散させてしまった。


 ビムと対峙していた勇者が、その剣圧で霧散させる。これで数の上では互角に持ち込まれてしまった。だが、勇者の少年もビムの攻撃を食らったようで右肩から血を垂れ流し、それを手で押えながら剣を持っている。


 その数的均衡はすぐに崩れた。

 まず、ピュセルが刀技で刀の刀身を長く伸ばし、一方的にターバンの男に斬りつけた。

 さらにちょこまかと動いていた金髪の女性の足にザガムが光の鎖を絡ませる。動きの止まったところを、長柄の槌で片膝を打ち砕いた。


 どうやら後方の二人が回復役らしく、勇者一行は全く回復が追い付かない。


 最初に消えたのは金髪の女性。ザガムの鎚をまともに脇腹に食らい、膝まづいたところをフルスイングの槌に腹を打ち抜かれた。

 次いでターバンの男性がピュセルに右腕を切断され、喉を刀で貫かれた。


 二人の仲間がやれる様を見て、勇者の少年は棒立ちになってしまった。

 「よそ見をするな!」と言ってビムが打ちかかる。だが、その大剣を勇者の少年は手にした剣で軽く打ち払い砕いてしまった。どうやらそれが凄まじい力だったようで、ビムが肘を押えて少し距離を取る。

 それまでの勇者のものとは比べ物にならない強い強い力だったようで、明らかにビムが戸惑っている。

 最初に勇者の異変に気付いたのはピュセルであった。


「し、少年の、よ、様子が、へ、変です! も、もしかしたら!」


 勇者が手にした剣から黄色い光が溢れ出し、勇者の手にまとわりついてく。


「貴様ら! よくも父さんを! よくも母さんを! 許さん! 許さん! 許サン!  許サン! 許サン……許サヌ……」


 激昂した勇者の声が徐々に子供のものから低い大人のものになっていく。その声が洞窟内に響き渡り、天井からパラパラと小石が落ちくる。


 少年の体が剣から溢れる光を吸収し、ボコボコという音を立てて膨らんでいく。以前来た緑髪の女勇者のように、少年がどんどん異形の化け物へと変化していく。最後に剣から光がどろりと垂れ、その光を異形の化け物の大きく開かれた口が吸いこんだ。


「みんな、離れろ! 勇者が神に乗っ取られた! 後ろの女性二人も離れろ! もうそれはお前たちの知る勇者じゃない、単なる異形の化け物だ!」


 その光景を見て、思わずセイルから緑の石を取り上げて叫んだ。

 ピュセル、ザガム、フルフルはすぐに意味が分かった。だが、ビムは良くわからなかったようで周囲をキョロキョロしている。

 その困惑しているビムに向けて化け物が口から細い光線を吐き出す。新たに出した大剣で防ごうとしたビムの右腕を、光線は一瞬で粉々に吹き飛ばしてしまった。


 化け物の後ろにいた群青色の髪の少女と、群青色の髪の女性は何が起きているのか解らず、「どういう事?」と何度も叫んでいる。


「グガガガガグギギ……許サヌ……悪魔ドモ。神ニ逆ラウ愚カサヲ悔イルガ良イ!」


 背に貼り付いた剣のコアが光り、化け物と化した勇者の大きな口から光線が噴き出す。なんとか避けたピュセルだったが、地面に倒れていたターバンの男に光が直撃。一瞬で蒸発してしまった。


 異形の化け物の後ろで群青色の髪の少女が呆然と立ち尽くしている。群青色の髪の女性はワンピースを深紅に染めて恐怖に震えている。


「ねえ、答えてよ! これはどういう事なのよ! お兄ちゃんはどこ? こんなのお兄ちゃんじゃない……お兄ちゃんはどこに行ったの?」


 異形の化け物が声のした後方に顔を向ける。面倒そうに無数に棘の生えた尻尾を左右に振る。すると、尻尾に生えていた無数の棘が取れ、後方の女性二人に向かって勢いよく飛んで行った。

 群青色の髪の少女と、群青色の髪の女性は、棘に貫かれて穴だらけとなり、力無くうつ伏せに倒れた。二人の周辺が血の池となる。


「ゴチャゴチャト、ウルセエ……次ハ……オ前ラ、ダ」


 再度光の柱のようなものを口から吹き出す化け物。全員避けきったと思った瞬間、化け物がクイっと顔を横に振った。その瞬間、光の柱が横薙ぎになり、ロレイとフルフルを襲った。



「ああ、ビムをもってしてもダメでしたか……せめてもっと早く来てくれていて、もっとレベルが上がってくれていたら……」


 異形の化け物に仲間たちが虐殺され、そのあまりの凄惨さにソラスが悲痛な声を発した。


「かくなる上は、壮馬様だけでも!」


 何かの覚悟を決めたソラスが、キッと厳しい顔をしてウサグーの前に立った。


「ウサグー、よくお聞きなさい! あなたに最後の指令を与えます。壮馬様を連れて、この山から脱出してください。セイルが『転移』というスキルを持っています。あなたたち二人だけならここから遠く離れた所へ転移させる事は可能でしょう」


 どんな指示を出すのかと思いきや、まさかの皆を見捨てて逃げろという内容。

 沸々と怒りが込み上げてくる。気が付いたらソラスの服を捻り上げていた。


「ふざけんな! 俺がいなくなったら、この城は崩れちまうじゃねえか! そうしたら、お前たちは全員生き埋めだ。そんな真似ができるわけないだろ! 俺たちはみんな家族なんだぞ!」


 ソラスの服が乱れ、薄桃色の可愛い下着が露わになる。だがソラスはその俺の手にそっと両手を添え、力無く微笑んだ。


「壮馬様。そのお言葉だけで十分わらわたちは報われました。新たな地で、新たなお城をお築きくだされ。そこで必要とあらば、またわらわたちをお呼び下され。わらわたちはすぐに駆け付けますから」


 その瞬間、化け物の光の柱が天守閣の屋根を豪快に吹き飛ばし、天井の壁をも砕いた。

 上空からぼたぼたと大きな石が落ちてくる。その一つが俺目がけて落ちて来る。


「壮馬様、危ない!」


 ハルパスが俺を突き飛ばす。身代わりとなり、もろに岩が頭に当たってしまい、床に伏してしまった。血が床にじわりじわりと広がる。


 さらに岩が落ちて来る。今度はセイルの上に落ちてきてしまい、ソラスが覆いかぶさってセイルを守る。


「さあ……セイル、早く! ウサグー、壮馬様を頼みましたよ」


 ソラスも血まみれとなり力尽きて床に倒れた。


「嫌だ! 俺はまだお前たちと!」


 駄々をこねる俺にウサグーが抱き付く。ぎゅっと両手で強く抱きしめ、離すまいとする。固く閉じられた瞳からはポロポロと涙が零れ、頬を伝っている。


 その瞬間、俺とウサグーの足元に虹色の輪が輝いた。


 マルファスとビフロンがウサグーの後ろに立って、にこりと微笑んだ。


「壮馬様。お世話になりました。あたしたちの事、忘れないで――」


 その瞬間、目の前が光りの砂に包まれ、すうっと眠りにでも落ちるように気が遠くなっていった。



 ◇◇◇



 目が覚めると、そこは大きな木の根元であった。

 爽やかな風が頬を撫でる。

 どれだけの時間、ここでこうしていたのだろう。


 頭上にはざくろがたわわに実っている。なぜか妙にこのザクロに懐かしいものを感じる。

 そういえば、この世界に初めて来た時もこんな光景だった気がする。


 傍らには頭上のざくろによく似た形の玉がはめられた杖。


 ゆっくりと立ち上がる。

 もしかして、あの日に戻されてしまったのだろうか?


「まさか、強くてニューゲームって奴なのかな……」


 それならそれで、まずはアグレアスを探さなくては。全てはそこから。


 山道を頂を目指して歩いて行く。すると奥から一人の女性が姿を現した。忘れな草色の長い髪、そして綺麗な同じ色の瞳、長い睫毛、細い四肢、薄い胸。


「あら、壮馬様。もう動いてもよろしいのですか? 今、この辺りを少し探索したのですけど、この山も中々に良さそうな山でしたよ」


 頬にうっすらと傷の痕。管楽器のような美しい声。アグレアスより少しだけ高い声。この声はウサグーの声だ。


「そうなんだ。じゃあ、まずはカラスを呼ぶところから始めないとな。また家族みんなで引き籠れるような、立派な城になるように育て上げていかないと」


 「はい」と返事をすると、ウサグーは嬉しそうに目を細めて俺を抱きしめた。その瞬間、キンモクセイのような少し酸味の強い、何とも言えない良い香りが鼻腔をくすぐった。




『あの山にダンジョンを築城しよう! ~命の実を守るために俺だけの城に引き篭もってやる~』 ―完―

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暖かいご声援、大変励みになりました。

次回作も引き続きお読みいただけましたら嬉しく思います。

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