第50話 ゴブリンのセイル
大魔王ソウマ(田峯壮馬):女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」
アグレアス(消失):地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)、奥義「彼岸の舞」
マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造IV」「遠隔活動」、得物はモーニングスター
ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」「栽培」、得物はサック
ロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)
ピュセル:地0水5火1風0、スキル「水流操作」、得物は刀(刀技)
ハルパス:地3水0火0風3、スキル「経理」「兵站」「建築」、得物はハンドアックス
フルフル:地0水0火0風5、スキル「栽培」「精霊召喚」、得物は杖
ザガム:地0水4火4風0、スキル「酒造」「金属加工」、得物は長柄の鎚(鎚技)
ウサグー:地2水2火2風2、スキル「治癒」、得物は鞭(鞭技)
ソラス:地4水4火4風4、スキル「予知」「軍師」「大魔導」、得物はタクト
ビム:地0水0火5風0、スキル「戦鬼」、得物は大剣(剣技)
「本当に良いんだな?」
そうたずねると、勇者はその無造作に伸ばした瑠璃色の髪を前後に振った。勇者の視線は剣に注がれており、その眼差しはまるで汚物でも見るかのよう。
合図を送ると、ザガムは長柄の鎚を振りかぶった。チャリチャリという音と共に、鎚から細い鎖のような光が伸びる。鎖が剣に絡みついて固定。ガタガタと勝手に小刻みに震える剣に向けて、ザガムが一気に鎚を振り下ろす。
ギィィヤァァァ!
悲鳴にも似た音が剣に組み込まれていたコアから発せられる。粉々にコアが砕け散り、破片からどす黒い霧が発生し、命の実に吸い込まれていく。
「今の音はいったい……」
勇者一行の踊り子が、目を見開いてコアの残骸を凝視。晴れた日の海のように淡い青色であったコアは見る影もないどす黒い色になっている。
すると、女魔導士が突然神話の一節を話し始めた。
――かつて、この世には二柱の神がいた。
一柱は天の男神、そしてもう一柱は地の女神。二人は仲睦まじい夫婦であった。だが、ある日、地上の者たちの扱いをめぐって仲違いする事になった。
悪しき者は出来損ないであるから、今すぐ作り直すべし。改革無くして良き未来は無いという男神。
温かく見守るべき。元凶となる者だけに罰を与えれば良い。大きな変革をして混乱させてはならぬという女神。
二人が対立している間にも、地上の者たちはやりたい放題をしていた。それに激怒した男神は、女神に統治能力が無いとして、地上よりもさらに深い死者の世界に追いやってしまった。
こうして地上を支配した男神は、その苛烈な性格で地上に改革をもたらした。
暴食であると言って日照りを続け作物を枯れさせ、
怠惰であると言って病を流行らせ、
傲慢であると言って雷で焼き、
淫乱であると言って同性愛を流行らせ、
暴力的であるといって批判し合わせ、
強欲であると言って奪い合わせた。
その結果、地上の者たちはモラルが崩壊、無暗に互いを傷つけあうようになり、死者が続出。
女神が追放された死者の世界に、地上を追い出された棄民が続々とやってくる事になった。
その状況を憂いた女神は、地上の鍛冶師に働きかけ、一振りの刀を打たせた。黒皮鉄を芯に使ったその刀は、まるで陽を吸うかのように黒光り。一振りすれば空が切断されるとうたわれた。あまりの切れ味に、つけられた名は「斬天」。
ただ、刀は刀身が異常に長く、普通の剣士に扱える代物ではなかった。
ある時、名も無き剣士がその刀を手にする事になる。だが刀身が長すぎて鞘から抜くのも一苦労。だが、徐々に剣士は刀の魅力に憑りつかれていく。
寝食も忘れて、一心不乱にその刀を振り続けた。そして、剣士は徐々に刀に込められた思いに感化されていく事になる。男神を懲らしめろという思いに。
そして、剣士はついに天の男神の前に立ちはだかった。
死闘の末、剣士は左右袈裟斬りで男神を切り裂いた。だが剣士もただでは済まず、雷に身を焼かれてしまう。剣士が焼け死ぬと、まるで役割を終えたかのように刀も砕け散った。
切り刻まれた男神は、四肢を残し、首だけとなって天に帰って行った。
残された四肢のうち、右手は太陽の女神となり、左手は月の男神となり、下肢は海と風の男神となった――
「これは私の里に言い伝えられていた古い神話です。私は幼い頃からこの話を聞いていたので、最初から天の神を胡散臭いと感じていたのです。あまり信用しないようにと勇者に助言したのは、そのためなんです。恐らく剣には月の男神が封じられていたのでしょう。いざとなったら勇者を乗っとるために」
まるで邪神。
誰かの呟きに皆が頷いた。
◇◇◇
勇者一行が去ってから、しばらく穏やかな日々が続いた。
そんなある日、朝食を終え、畑に収穫に行ったビフロンたちが畑で大騒ぎしている声が聞こえてきた。
「なんだこのゴブリンは!」「ど、どっから入ってきたんですか?」「そっちに逃げた!」そんな声が聞こえてくる。
一緒に食事の仕込みをしていたウサグーが、極めて冷静に「もしかしたらまた仲間が来たのかも」と指摘。とりあえず命の実のはまった杖を持って、三の丸の奥の畑へと向かった。
二の丸で釣りをしていたロレイや、鍛冶場で武器を打っていたザガムまで出てきて、三の丸が大わらわになっている。泣きそうな顔をしたソラスが、こちらに気付き、とことこと近寄って来た。
「壮馬様。聞いてください。わらわはあの者たちに、壮馬様を呼ぼうと申していたのです。なのに誰も聞き届けてくれず、討伐すると言っているのです」
……多分、小声過ぎて聞こえていないのだろうな。
目の前ではザガムたちが「追い詰めろ!」「討伐だ!」と盛り上がっている。
そんな馬鹿騒ぎに苛立ったウサグーが鞭を取り出し、無言で地面をぴしゃりと叩きつけた。
「何事ですの、この騒ぎは! どう考えても、壮馬様が仲間に招いた者ではありませんか! たいがいになさい!」
ウサグーの一喝にシュンとする一同。ゴブリンが腰を抜かして震えている。
そんなゴブリンに命の実から黒い糸のような霧が伸びていった。
気を失ったゴブリンを抱き抱えて、本丸に連れて行こうと、三の丸の先、坂道となっている通路を行く。
天守の一角、フルフルが寝ている部屋の隣のベッドに寝かし、布団をかけた。
恐らく、このゴブリンが以前ソラスが言っていたセイルという伝令なのだろう。
しばらく寝ていたソラスだが、突然パチリと大きな目を開き、がばっと起き上がった。キョロキョロと周囲を見渡し、俺を凝視。かなり焦った顔でその血色の悪い大きな顔をこちらに近付け、子供のような小さな手で俺の服を掴んだ。
「大変です! この山に向けて軍隊が進軍しています! おびただしい数の兵がこの山に向かっているんです!」
次の瞬間、外から大勢の人の声が聞こえてきて、次いでソラスが慌てて部屋に飛び込んで来た。
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