第49話 勇者の質問
田峯壮馬:女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」
アグレアス(消失):地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)、奥義「彼岸の舞」
マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造IV」「遠隔活動」、得物はモーニングスター
ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」「栽培」、得物はサック
ロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)
ピュセル:地0水5火1風0、スキル「水流操作」、得物は刀(刀技)
ハルパス:地3水0火0風3、スキル「経理」「兵站」「建築」、得物はハンドアックス
フルフル:地0水0火0風5、スキル「栽培」「精霊召喚」、得物は杖
ザガム:地0水4火4風0、スキル「酒造」「金属加工」、得物は長柄の鎚(鎚技)
ウサグー:地2水2火2風2、スキル「治癒」、得物は鞭(鞭技)
ソラス:地4水4火4風4、スキル「予知」「軍師」「大魔導」、得物はタクト
ビム:地0水0火5風0、スキル「戦鬼」、得物は大剣(剣技)
勇者は仲間たちにも武器から手を離すように指示。最初に大男が長い鍵爪の付いた手甲を外した。さらに女魔導士が鞭から手を離す。だが、踊り子は歯を食いしばってザガムを睨みつけ、細剣を向けたまま身構えている。そんな踊り子の前に女魔導士が立ち、首を横に振った。
「そこを退いて! 私はこいつらに弟を殺されたのよ! 仇討ちをしなかったら、弟に合わせる顔が無いのよ!」
涙目で震える声を絞り出す踊り子。そんな踊り子の肩に、勇者はそっと手を置いた。
「このままでは敵討ちどころか全員犬死だ。それよりも大魔王ソウマの話を聞いて、奴の真意がどこにあるのか、それを探るべきだ。その上で一戦するならすれば良い。その時は俺も覚悟を決める」
そう言って勇者は踊り子の手にその手を置いた。
踊り子の細剣が地に落ち、カランカランと音をたてる。
「そうだわ、再生をしないと……あ……」
踊り子が男魔導士の方を見た時には、もうどう考えても手遅れの状態で、体から黒い霧が沸き出してしまっていた。
踊り子が冷静であったら助かったかもしれないのに。その場の誰もがそう思ったが、あえて誰も口にはしなかった。
◇◇◇
「お前が……大魔王ソウマ? どう見ても普通の人間ではないか。ああそうか、仮の姿って奴だな」
俺の姿を見た勇者が、そんな意味のわからない事を言い出した。俺の隣に立っているソラスが「何の話ですか?」と勇者にたずねたのだが、小声すぎて聞こえていない様子。
「仮の姿も何も、俺の姿はこれだけだ。あと、『大魔王』って何の事だ?」
そうたずねると、勇者は「少しだけ剣を握らせてくれ」と言って、地面に落とした剣を手にした。ピュセル、ザガム、ビムの三人が警戒して俺の前に立ちふさがる。
剣を地に突き刺し、攻撃の意志が無い事をアピールしながら、右手をこちらにかざしてくる。すると、瑠璃色の光が手から放たれ、こちらを照らし出した。
それに特に何かあるようには見えない。だが、ふと隣を見ると、ソラスが少し透けていて、元の姿である小さな梟の姿がその内部にくっきりと浮かび上がっていた。ソラスだけじゃない。ピュセルも、ザガムも、ビムも。
最初に声をあげたのは踊り子であった。
「嘘……そんな。じゃあ神様の言う事が嘘だったって事?」
神様?
そう言えば、前に来た勇者も天の神がどうと言っていた。もしかして、命の実を託してくれた女神が俺たちを消そうとしている?
「お前たちの言う神というのは、もしかして白銀の衣装を身に纏った女神の事か?」
どうにも話が噛み合わないらしく、勇者が片眉と首を傾げる
「我々がお会いした天の神様は確かに髪は長いのかもしれないが、しっかりと耳横で束ねていて、どう見ても男神だったぞ」
俺が見た女神は、若干……かなり胸の大きさが控えめではあったものの、髪は背で束ねており、薄っすらと見えた体形は女性のそれであった。つまり、彼らの会った神とは別の神という事だと思う。
「実は俺も、ここに来る前に神にお会いしているんだよ。もしかしたら、俺がお会いした女神と、お前たちが会った神とは敵対関係にあり、お前たちを使って、代理戦争を仕掛けてきたのかもしれんな」
勇者はそれを聞くと一言「なるほど」と呟くように言った。ここまでの諸々を思い出し、何か答え合わせができたのだろう。突然「ふざけやがって!」と吐き捨てるように言い、神から賜ったはずの剣を蹴り飛ばした。
「大魔王ソウマ。いくつか質問に答えてはくれないだろうか。一つは尖塔国の姫をどうしたのか。二つ目はエルフの郷をなぜ攻め滅ぼしたのか。三つ目、四連国の王をどうしたのか。四つ目は大地国の王弟の娘を石化させたというのは本当か」
すでにこの城にやってきた者たちの会話によって、大地国がなにやらこの城をダシにして他国を侵略しているというという事が判明している。ソラスにもその話はしている。それを踏まえて、ソラスなりに答えを導いたのだろう。俺の袖を引き、小声でこういう事ではないかと助言してきた。
ソラスの出した答えは、『武力侵攻に失敗したから、この山の主を魔王に仕立て上げ、勇者に滅ぼしてもらおうとしているのではないか』というもの。「この勇者は賢そうなので、素直に答えればわかってもらえるだろう」とソラスは助言してきた。
「まず一つ目だが、尖塔国の騎士は、その話を大地国から聞いたと言っていた。その時は、隣国の生命国か四連国が、尖塔国に侵攻するために兵を減らそうとしているんだと思っていた。だがどうも情報を収集していると純粋に大地国の策謀らしいな」
その解答に勇者たちは黙ってしまった。質問の一番目がそれであったのだ。恐らくは真っ先に聞きたかった事だったのだろう。そして、恐らくその件に勇者なりに疑問を抱いていたのだろう。
「二つ目のエルフの郷の話は、時間軸的に合っていない。俺がここに来たのは郷が滅んでかなりの年月が経過した後らしい。その生き残りがうちにいて直接聞いたから間違いない。三つ目、四連国の王はここに侵攻してきて討死した。そんなのは攻め込んで来た者が悪いだろう」
勇者一行はその説明もじっと耳をそばだてて聞き続けた。それぞれ思う事はあるのだろうが、黙って聞いている。
「四つ目の質問だが、それは本当の事だ。大地国の指示で闘技国の姫がここを襲った事がある。その際、絶対に開けるなと言って宝石の入った宝箱を渡した。俺は警告はしたぞ。ならば開けた奴が悪いだろう。そもそもなんなんだ、この質問は?」
その質問だけ、勇者に代わって踊り子が説明した。
「あなたが先ほどおっしゃっていた闘技国、四連国、尖塔国は大地国に吸収されました。その前に高原国が吸収されていて、先日、私たちの祖国である生命国も吸収されてしまいました。その際に、大地国の王弟が言ったのです。ディアボリ山にソウマという大魔王が住みついている。だから今は六国の力を束ねる時なのだと」
そのソウマは五つ罪を犯した。そのうちの四つが先ほどの勇者の質問らしい。さらに大魔王の手先として、闘技国の一人の商人が公開処刑にあっている。商人には妻と息子がいたのだが、二人も同様に公開処刑となっている。
「最後の質問をさせて欲しい。天の神は『陽の剣』『月の剣』『嵐の剣』の三本の剣を我らに賜れた。そこにあるのはそのうちの一本『月の剣』だ。その前に『嵐の剣』を持った勇者がここに来たはずだ。その勇者はどうなった?」
勇者の口調は責める口調では無かった。知らないから教えて欲しいという口調であった。
「自我を失い、剣に身を支配され、異形の化け物に変化した。そして倒された。剣は中のコアを叩き潰されて、あそこの鍛冶場の中の宝箱に入れてある」
それを聞くと勇者は洞窟の上空を仰ぎ見て、静かに息を吐いた。大きく息を吸いながら視線を踊り子に移し、さらにその息を吐き出した。
「……この剣を神から授かってからというもの、何度も夢に見るんだ。目の前に邪悪な目をした者が現れ、憑りつかれ、心を取り込まれ、体を奪われる夢を。それだけじゃない、誰かが耳元で囁くんだ。『ソウマを殺せ』と。もう神に操られるのは御免だ! 大魔王ソウマ。同じように、その剣のコアも叩き潰してくれないだろうか」
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