第44話 日常的な朝
田峯壮馬:女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」
アグレアス(消失):地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)、奥義「彼岸の舞」
マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造IV」「遠隔活動」、得物はモーニングスター
ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」「栽培」、得物はサック
ロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)
ピュセル:地0水5火1風0、スキル「水流操作」、得物は刀(刀技)
ハルパス:地3水0火0風3、スキル「経理」「兵站」「建築」、得物はハンドアックス
フルフル:地0水0火0風5、スキル「栽培」「精霊召喚」、得物は杖
ザガム:地0水4火4風0、スキル「酒造」「金属加工」、得物は長柄の鎚(鎚技)
ウサグー:地2水2火2風2、スキル「治癒」、得物は鞭(鞭技)
梟のソラス:地4水4火4風4、スキル「予知」「軍師」「大魔導」、得物はタクト
目が覚めたら、ウサグーはいなかった。
もしかしたら、あれは俺がアグレアスを失った悲しさから見てしまった夢だったのではないだろうか。そんな事を思いながら重だるい上半身を起こす。
昨晩には無かったはずの薄手の布団が、はらりと腰のあたりにずれる。よく見れば、昨晩は二枚だけだった座布団が、まるで敷布団のように縦に三枚敷かれている。
間違い無い。あれは夢なんかでは無い。
窓から差し込むフルフルの光魔法が非常に眩しい。
天守閣を下の階に降りて行く。
一階は脱衣所になっているのだが、そこにちょっとした作業台がある。その上に各種お酒の瓶が置かれているのだが、梅酒の瓶が一番手前に置かれている。さらにその横には立て掛けられたお盆と湯飲みが二つ。どうやら湯飲みは洗ってあるようで上下が逆になっている。
「きゃっ! そ、壮馬様、あ、朝風呂でしたか。き、今日はお早いですね」
声のした方を見ると、頬を朱に染めたピュセルが、タオルを胸の辺りで抱えて立っていた。よく見ると髪はぼさぼさ、顔も寝起きのそれ。
「おはよう、ピュセル。ピュセルも朝風呂かい? ごゆっくり」
微笑みかけて、小さく手を振ると、ピュセルも目を細めて笑顔を作り、ぺこりと会釈した。
本丸を出て、光魔法を頭上に仰ぎながら、四の丸の屋敷へと向かう。
どうやらザガムがもう起きていて朝食の準備を始めてくれているらしい。トントンと小気味いい音が聞こえる。
「おや? 相馬様。どこかに行かれていたんですか?」
包丁を片手にザガムが振り返った。じっとこちらを見つめている。そのうち何かに納得したような顔で、また調理に入った。
「昨晩、なかなか寝付けなくてね。風呂に入って、酒を呑んでいたら寝ちまったらしいんだよ」
するとザガムはまた調理の手を止め、こちらに振り返った。
「やけ酒は感心しませんね。体を壊しますよ。私でよければいつでも相談に乗ります。もしここで会うのが恥ずかしいのでしたら、工房にでもいらしてください」
優しく微笑むザガム。そんなザガムに微笑みで返す。
「あ、壮馬様、おはようございます!」
元気な声でフルフルがやってきた。その後ろでロレイがぺこりとお辞儀をしている。二人とも前髪が濡れており、どうやらここに来る前に顔を洗って来た事がわかる。
その後、ハルパスがやってきて、ピュセルが風呂から戻って来た。
さらにウサグーがやってきた。ウサグーは目が合うなり顔を真っ赤に染めて必死に顔を背けた。その仕草に、こちらも思わず顔が火照ってしまう。
「ピュセル、悪いんだけど、お寝坊組を起こして来てくれないかな」
ザガムに言われ、ピュセルがマルファス、ビフロン、梟のソラスを起こしに行った。
まず、マルファスが大欠伸で目をこすりながらやって来て、その後、ビフロンが素っ裸でやって来る。最後にどうにも起きなかったようで、ピュセルがソラスを手に抱えて戻って来た。
机の上に置き、ソラスのお腹の辺りの羽を指で逆撫でるようにさすって遊ぶピュセル。その光景に思わずほっこりしてしまう。
全員が揃ったところで、ザガムの朝食の支度が終わったようで、ウサグーと二人で各人に配膳していく。
いつの頃からか、俺が「いただきます」と掛け声をかけるまで大人しく待つ事になっている。
せっかく作ってくれた食事が冷めてしまってはザガムに悪いので、全員に配膳が行きわたったところで「いただきます」と声をかけた。
全員が一斉に「いただきます」と言ってから食べ始める。
「あの……あの……あの……」
何やら声が聞こえた気がしてキョロキョロを周囲を見渡す。すると正面に座ったマルファスが俺の左隣を指差した。よく見ると、ロレイの肩にソラスが乗っている。
……声が小さくて完全に咀嚼音に負けていたぞ。
「あの、壮馬様、食事の後で少しお話よろしいでしょうか」
頭を左右に振って返答を待つソラス。梟特有のコミカルな動きが実に可愛い。
「ちょうど良かった。俺も聞きたい事があったんだよ」
できれば二人だけで話がしたい。そう言って食事が終わった後で、ソラスは俺の部屋に肩に乗ったままやってきた。
「わらわの話の前に、先に壮馬様の聞きたい事というのを聞かせてはいただけませんでしょうか」
机の上に立って、まん丸の目でじっとこちらを見つめるソラス。そんなソラスにコクリとうなずいた。
「昨日ソラスは、アグレアスが消失する事が予知にあったと言ってたよね。それって本当にアグレアスなのか? それと、もしあの時、アグレアスが二の丸に降りていかなかったら、本当に誰も消失せずに済んだのか?」
ソラスはじっと目を閉じて考え込んでしまった。もしかして寝ているのかと思うほどに沈黙は長かった。
「なるほど。さすが壮馬様は聡明にございますね。言われてみれば、あれはアグレアスでは無くウサグーだったのやもしれません。そして、あの時アグレアスが二の丸に降りていなければ、その時はウサグーが消失していたのやも知れません」
やはり。
写真のように場面を見たと言っているのに、それでは、そっくりなアグレアスとウサグーの判別は付かないのではないかと思っていたのだ。
ただ、だからなんだという話ではある。どちらにせよ、どちらかは消失したのだろうから。
「何となく、ソラスのいう予知ってのがわかった気がする。で、ソラスの方の用件というのは何なの?」
ソラスは細い嘴をパクパクとさせてから、まるで意を決したように話始めた。
「ここにおびただしい人数の軍隊がやってきます。白き鎧を身に纏った王が、国の運命をかけてやってまいります。ただ、わらわが見たのは、こことは少し異なる城の形だったのです。それに何か心当たりはございませぬか?」
……もちろん、心当たりはある。ずっと心に秘めていたものが。
懐かしさを感じながらも、アグレアスから譲り受けていた行李の蓋を開け、一枚の紙を取り出した。
「これは、俺が最初にアグレアスにこういう城にしたいと言って見せたものだ。あの頃は水源が無く、このような城を築くのは夢のまた夢だと思っていたけど、今ならできそうな気がする」
アグレアスが素敵、面白い、素晴らしい、そう言ってくれた城の絵図。基本的な所は今とさほど変わらないが、各曲輪が水堀によって仕切られており、全体的に高低差が無く、石垣によって側面を固めた近世城郭による平城。
「わらわが見たのは、まさにこれです。この水の都のような姿です。ですが、これを再現するためには敷地がたりませぬ。マルファスに言って、全体的に地盤を深くして敷地面積を確保いたしましょう」
すでにソラスの視線は城絵図に釘付け。
「この城を大改修するのはいつ以来だろうな」
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