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【完結】あの山にダンジョンを築城しよう! ~命の実を守るために俺だけの城に引き篭もってやる~  作者: 敷知遠江守
第十章 平城(前篇)

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第42話 大いなる喪失

田峯壮馬:女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」

アグレアス(消失):地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)、奥義「彼岸の舞」

マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造IVソロちゃん」「遠隔活動」、得物はモーニングスター

ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」「栽培」、得物はサック

ロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)

ピュセル:地0水5火1風0、スキル「水流操作」、得物は刀(刀技)

ハルパス:地3水0火0風3、スキル「経理」「兵站」「建築」、得物はハンドアックス

フルフル:地0水0火0風5、スキル「栽培」「精霊召喚」、得物は杖

ザガム:地0水4火4風0、スキル「酒造」「金属加工」、得物は長柄の鎚(鎚技)

ウサグー:地2水2火2風2、スキル「治癒」、得物は鞭(鞭技)

梟のソラス:地4水4火4風4、スキル「予知」「軍師」「大魔導」、得物はタクト

「蘇生魔法みたいなので復活ってできるよね? 命の実が治癒してくれるよね?」


 アグレアスが消失したという事実を受け入れる事ができず、目を見開き、動揺しきった顔でビフロン、ハルパス、ロレイ、梟のソラスと順に顔を見ていく。

 ハルパスとロレイが顔を背け、ビフロンとソラスは瞳を閉じ左右に首を振った。


「どうして! だって、腕がぐちゃぐちゃになったって、矢が何本も体を貫いたって、これまで命の実が治してきたじゃないか!」


 大怪我と体が消し飛んだのを同列に扱えない事くらいわかっている。

 だが、それでも、万に一つの可能性に賭けたいと心が求めている。

 ……それが目の前の三人にとって、精神的にキツイ事であろう事も頭では理解している。


「あれだけ強烈な神の光に身を割かれたのです。アグレアスという存在が消え去ってしまったと考えるのが普通だと思います。実は、この事は予知の中にあったのです。だから……わらわは、ここから動くなと申したのです」


 ソラスが今にも泣き出しそうな震える声で言った。書き消えそうな小さな声で。俺の言い方で自分が責められていると感じたのかもしれない。


 二の丸からウサグーの慟哭する声が本丸に届く。

 ウサグーが抱き抱えているアグレアスの腕が、風に舞う砂塵かのようにサラサラと崩れていく。


「姉さぁぁぁぁん! 姉さぁぁぁぁん!」


 泣き叫ぶウサグーをザガムがそっと抱きしめる。


「いやぁぁぁぁ! 姉さぁぁぁぁん!」


 その腕を振りほどこうと、ウサグーが喚きながら身を震わせる。


 その光景に俺の膝がカタカタと震えてしまい、体を支え続けられずにぺたんと腰を落としてしまった。気が付いたら目からボロボロと涙が零れ落ちていた。後から後から止めどなく溢れ出てくる。

 そんな俺の背から、ビフロンがそっと抱きしめてくれた。



 その日の夕刻。

 全員がアグレアスがいないのだという事を重く受け止める事になった。

 毎日、皆の夕食はアグレアスが一人で作ってくれていた。他の者たちは気分が向いた時に手伝っていただけ。誰が夕飯を作るのかという話になったのだった。


 マルファスは以前、アグレアスに張り合って料理を作った事がある。だが、味はともかく見た目がぐちゃぐちゃ。そこからあまり手を出さなくなった。

 ビフロンはやればやれるらしいのだが、面倒がってやらない。

 ロレイとフルフルは火魔法が扱えず、完全に食べる専門。

 ピュセルはお菓子専門。

 ハルパスは少し味覚が独特で、何にでも唐辛子の粉を大量投入しようとするので論外。


 結局、この日は普段からアグレアスの手伝いでよく料理を作っていたザガムが作る事になった。

 皆、戦闘で疲れているだろうからと、ザガムは野菜のシチューを作ったらしい。だが、残念ながら味なんてわからなかった。

 食事の間、全員言葉は無し。

 ウサグーは食事を前に席を立ってしまい、自分の部屋に籠ってしまった。



 皆が寝静まった後、何となく眠れず足が温泉に向いた。

 いつの頃からか、洞窟の外壁に苔が生えるようになっている。夜になるとビフロンの光魔法は消えてしまうのだが、その苔が輝いて、まるで星空のように見える。

 湯舟に腰かけ、足を湯に浸し、腰にタオルを当てて天井を仰ぎ見る。

 湯口からお湯が流れ出るチョロチョロという音だけが辺りに響き渡る。


 胸にぽっかりと大きな穴が開き、そこを冷たい風が通り抜けているかのよう。ふいにアグレアスを失った事を思い出し、手がカタカタと震える。なぜかそれを寒いという風に感じ、温泉に首まで浸かった。


 そんな真っ暗な温泉に誰かが入って来た。

 ひたひたという足音が近づいて来る。


「あれ? もしかして、誰かいます?」


 この声はウサグー。

 そのあまりにアグレアスに似た声に、思わず胸がきゅっと締め付けられる。


「ご、ごめん。すぐに出るから。ごめんね」


 シルエットだけでよくは見えないが、その細い体に腰まで垂れた長い髪がアグレアスを想起させて、思わず声が震えてしまう。


「あ、壮馬様でしたか。あの、どうぞお構いなく……」


 そう言ってウサグーは桶を手に取り、かけ湯をして湯舟に体を浸した。ざあっという音と共に湯が湯舟から溢れ出る。


 しばらく静寂が続く。

 ふうという、ウサグーの吐息が聞こえた。

 徐々にウサグーがこちらに近寄って来るのが見る。


「つかぬ事をお伺いいたしますけど、壮馬様は姉さんの事をどう思っていらしたのですか? 何となくですけど、姉さんに対してどこか特別な接し方をしていたような気がしていたのです」


 それはきっと気のせいでは無いだろう。この世界に気て最初に出会った人。今日までいつも隣にいてくれた人。そして、唯一二人だけで一夜を過ごした女性。


「ザガムが来た時さ、アグレアスが拗ねたんだよ。色気が足らないって思ってるのかって。その時俺は言ったんだ。アグレアスと最初に会ったって事は、俺にとっては最も好みだったって事だと思うって」


 それが思い出話のように聞こえてしまったようで、ウサグーが震える声で「姉さん」と呟いた。

 ウサグーの目から雫が零れる。そんなウサグーの雰囲気に感じるものがあり、俺の頬にも熱いものが滴った。


「……ごめんなさい。わたくしが姉さんを受け入れられなかったから……わたくしなんかを守って姉さんは……本当にごめんなさい……」


 か細い声を震わせてむせび泣くウサグー。

 そんなウサグーの肩をそっと抱き寄せる。


「誰のせいでも無いよ。強いて言うなら、あの女勇者をあんな化け物に変えた剣を与えた奴のせいだから。だからそんな風に思いつめないで、ね」


 優しく声をかけると、ウサグーは両手を俺の背に回して、ぎゅっと抱き着いた。

 控えめな胸の柔らかな感触を感じる。アグレアスに似た少し酸味のある爽やかな香りが漂う。


”壮馬様、わたくしと同じように、ウサグーにも接してあげてくださいまし”


 ふいにウサグーを仲間にした時のアグレアスの言葉を思い出す。その言葉が、一陣の風に乗って聞こえてきた気がした。

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