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【完結】あの山にダンジョンを築城しよう! ~命の実を守るために俺だけの城に引き篭もってやる~  作者: 敷知遠江守
第九章 平山城(後篇)

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第39話 勇者襲来

田峯壮馬:女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」

アグレアス:地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)

マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造IVソロちゃん」「遠隔活動」、得物はモーニングスター

ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」「栽培」、得物はサック

ロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)

ピュセル:地0水5火1風0、スキル「水流操作」、得物は刀(刀技)

ハルパス:地3水0火0風3、スキル「経理」「兵站」「建築」、得物はハンドアックス

フルフル:地0水0火0風5、スキル「栽培」「精霊召喚」、得物は杖

ザガム:地0水4火4風0、スキル「酒造」「金属加工」、得物は長柄の鎚(鎚技)

ウサグー:地2水2火2風2、スキル「治癒」、得物は鞭(鞭技)

梟のソラス:迷い梟

「ソラス、こちらは私たちの主の壮馬様です」


 目を覚ました梟のソラスにアグレアスが紹介。するとソラスは慌てて寝床から起き上がり、体を器用に前傾させた。


「お初にお目にかかります、壮馬様。早々で申し訳ないのですが、わらわにはわずかばかりですが先を見通す能力がございます。間もなくこの洞窟に勇者が訪れます。今すぐ万全の迎撃態勢を取ってください。その者は神から授かった剣を手にしており非常に危険です」


 ……声小っさ。

 それはさておき、ここに来る前にソラスは天から降り注ぐ光を見たらしい。それは山から見て西の空。夜だというに虹色に輝く眩い光は途中で緑、青、黄の三色に別れ、三つの地点を照らしていたのだそうだ。


「今しがた、そのうちの一本、緑の光を集めた剣を手にした勇者がこちらに来る予知を得ました。仲間は予知によれば二人。一人は有翼の者、そしてもう一人は竜神の眷属でしょうか」


 『竜神の眷属』という聞き慣れない単語に、相手がこれまで来た者たちとは異なる存在だという事を想起させる。


「それと……」


 ちらりとアグレアスに顔を向け、何かを言おうとしてためらうソラス。顔をぷるぷると横に振る。


「いえ。何でもありません。それと、これはあくまで予知ですから、必ずしもその通りになるというわけでは無く、外れる事もあるとご認識ください」


 目を覚まして早々に矢継ぎ早に話したソラス。その嘴から発せられた予言の内容に、皆、言葉を失ってしまった。


「間もなくという事でしたけど、具体的にいつくらいというのはわからないんですの?」


 アグレアスがたずねると、ソラスはその顔をじっと見つめた。またも何かを言いたげにして躊躇う。

 その仕草にアグレアスが首を傾げる。


「申し訳ないのですけど、予知というものは印象的な映像が断片的にふっと頭に浮かぶ感じなのです。だからそういう精度を求められるものでは無いのです。大雑把にこういう事が起きそうだから備えてくださいというものなのですよ」


 たしなめるように言ってから、ソラスは顔を右に左にと傾けた。いかにも梟という感じの仕草が実に愛らしい。


「その『緑の光を集めた剣』というのがどのような代物かはわかるかな? それがわかれば、それなりに対策ができると思うんだけど」


 そうたずねると、ソラスはしばらくその丸い両目を閉じた。再度その目が開かれるも、顔を右に傾けてしまった。


「残念ながらわかりませんでした。つばに竜を象った細工が、剣先に翼を象った装飾が施されているという事くらいです。形状から察するに地、火、水、風という魔力がバランス良く込められているのではないかと」


 そういう事であれば、ビフロンに宝石に魔法を込めてもらって、ザガムの鍛冶スキルで作った武器にはめ込んだらいけるんじゃないか。そう提案して周囲を見渡してみた。


「……あれ? もしかしてうちって、ザガムの武器を扱えるのってピュセルだけ?」


 ピュセル以外の人たちが互いに顔を見合わせ苦笑い。


「あたしのモーニングスターだって……って、そんなに露骨にため息つかなくたって良いじゃないですか!」


 マルファスの変な自信にため息で返すと、ハルパスもうなだれてしまった。ビフロンもファイティングポーズを取っているのだが、誰も気にも留めていない。


「わたしくとウサグーの鞭は魔力の込められた宝石を柄に組み込めば、属性が付与できると思いますわ。相手がいつ来るかわからないという事は、それまでじっくりと作戦が練れるという事。夕食後は毎日作戦会議の時間にしてはいかがでしょうか」


 アグレアスの提案に異議を唱える者はおらず、その日から毎晩作戦会議が行われる事となった。



 ◇◇◇



 こうしてその日はやって来た。


 勇者なる連中がやって来た事はすぐに全員気が付いた。ピキンという悲鳴ともとれるような音を城があげたのだ。

 その音に驚いて、屋敷にいた者たちは一斉に多聞櫓から一の丸を覗き見た。


 大手門前にやってきた者たちは、予知したとソラスが話した特徴そのまま。少し意外だったのは「緑の光を集めた剣を手にした勇者」が女性であった事。緑のレオタードの上に美しい細工の施された白銀の鎧。黄金のサークレットから溢れ出る髪は強いウェーブがかかているが美しい千歳緑。

 同伴者は菖蒲あやめ色の髪をし、白鳥のような大きな翼を背に生やしている女性。白きローブを身に纏っており、見た目は天使のそれ。手にはバトンのような短い杖。

 それと二足歩行の巨大なトカゲ。鱗の色は黄色。手には柄の長い斧。竜戦士といった風貌。


「あれ? 勇者しゃま、本当にここが悪魔の山なんでしゅかね? なんだか、山っていうより……」


 少し舌足らずな声が聞こえてくる。


「砦か城って雰囲気ね。まあ、入ってみればわかるでしょ。この剣の前では幻影など効果は無いのだから」


 剣を鞘から抜き、軽く一振り。その風圧で大手門の扉は綺麗に消し飛ぶ。砕けたとか、吹き飛んだのではない。剣から放たれた風圧によって消し飛んだ。

 あれをまともに食らったら骨が砕ける程度では済まないだろう。


「今の剣圧、かなり強い風の魔力が籠ってましたわね。ソロちゃんや骸骨兵ではひとたまりもありませんわね」


 アグレアスの表情がかなり曇っている。

 命の実の杖を持つ手が震える。ここまで冒険者たちの命を吸い続け、黒々と鈍く輝く命の実。これが果たしてどこまで色褪せてしまうのか。


「わたくし不安ですので、二の丸の加勢に向かおうと思います」


 それが良いだろうと許可しようとしたのだが、肩に乗っていたソラスが嘴で耳を引っ張る。


「アグレアス、そなたは今回はお控えなされ。あの者たちは極めて危険という予知だと申したでしょう」


 そのソラスの物言いに、アグレアスが露骨に不快感を示す。


「極めて危険だから! わたくしも加勢すると言っているのです。あなたはいったい何をおっしゃっているんですの?」


 二人がそんな事を言い合っている間に、勇者たちは骸骨兵たちを薙ぎ払いながら、二の丸までやってきてしまった。


「女性ばかり三人? それに風の精霊? もしかしてまやかし?」


 勇者が剣の柄を右に左にと回転させる。それに合わせて独特な刃も回転。


「効かない? とういう事はまやかしではない。そう。でもこの神の剣の神託ですもの。容赦はしないわ」


 その声を聞き、竜戦士が咆哮と共に猛然とザガムに向けて突進してきた。

 ザガムの長柄の鎚と、竜戦士の長柄の斧が激しくぶつかり合う。


 その横では魔法を唱えようとする有翼の女にウサグーが鞭を伸ばす。有翼の女が発動した魔法により空気の塊がウサグーを襲う。それを、フルフルの召喚した風の精霊がかまいたちを発生させて切り裂く。


 ピュセル目がけて勇者が走り込み剣を構えた。


「天の神よ! その力の一端をこの剣に宿したまえ! 『剣技 雷撃大斬』!」


 勇者の剣が雷を帯び、ビリビリと音をたてる。振り下ろした剣を、ピュセルはザガムの鍛えた剣で受ける。

 ピュセルの剣がギリギリという悲鳴をあげる。残念ながら勇者の一撃を耐える事ができず、剣が欠けて破片がピュセルの肩を貫いた。


「すぐに回復させます!」


 ウサグーが鞭を有翼の女に巻き付けた状態で器用にも回復魔法を唱え始める。

 それを見て勇者が瞬時にターゲットをウサグーに変えた。


「剣技・燕斬り!」


 勇者の剣から真空の刃が放たれウサグーを襲う。それに合わせて有翼の女もウサグーに向けて魔法を唱える。

 残念ながら風の精霊が防げたのは有翼の女の魔法だけ。鞭が真空の刃によってズタズタに千切れる。


 ピュセルが勇者に斬りつけた事で、勇者は相手をピュセルに戻した。またも鍔迫り合いが始まる。


 これまで片腕を鞭で封じられていて、片手だけで魔法を発動させていた有翼の女だったが、勇者の支援によって両手が自由になった。

 一方のウサグーは慌てて千切れた鞭を魔力で修復している。そんなウサグーを見て有翼の女がくすっと笑う。


 有翼の女が両手で無数の氷の刃を召喚しウサグーに向けて放った。片手から放たれた氷の刃はフルフルの召喚した風の精霊が全て見事に砕いた。だが、もう片方から放たれた氷の刃はウサグーまで届いてしまった。

 ウサグーも避けたのだが、避けきれなかったらしい。右腕がズタズタに引き裂かれてしまった。

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