第36話 思い出の相違
田峯壮馬:女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」
アグレアス:地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)
マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造III」「遠隔活動」、得物はモーニングスター
ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」「栽培」、得物はサック
ロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)
ピュセル:地0水5火1風0、スキル「水流操作」、得物は刀(刀技)
鳩のハルパス:地3水0火0風3、スキル「経理」「兵站」「建築」、得物はハンドアックス
鹿のフルフル:地0水0火0風5、スキル「栽培」「精霊召喚」、得物は杖
牛のザガム:地0水4火4風0、スキル「酒造」、得物は長柄の鎚(鎚技)
エルフのウサグー:アグレアスの妹
目を覚ましたエルフのウサグーが俺をじっと見つめている。まるでそういうブロンズ像か大理石像であるかのように何とも美しい。その目は少し閉じられており、どこかデジャヴのような奇妙な感覚を覚える。
「ウサグー、アグレアスです。あなたが生きていてくれて本当に良かった。わたくしは、てっきりあの襲撃であなたは亡くなったものと思っておりました。本当によくご無事でいてくださいました」
そう声をかけたアグレアスにウサグーは視線を移さず、じっと俺の方を見続けている。
そんなウサグーの態度に、アグレアスの表情が少し強張る。
「ウサグー、こちらは壮馬様といって、わたくしたちの主人です。そしてここの主でもあります。姉妹二人、一緒に壮馬様とこの洞窟を盛り立てていきましょうね」
少し引きつったような笑顔で声をかけたアグレアスを、ウサグーがちらりと見る。そしてまた俺に視線を移す。まるでアグレアスなど見えないとでもいうような態度にも感じる。
「わたしくには確かに姉がいました。ですが姉はわたくしたちを侵略者に売って村を捨てたのです。おかげで残されたわたくしたちは……。あの日から、わたくしは姉を恨まなかった日はございません」
じっと俺の目を見て言い放ったウサグーに、俺は何と声をかけて良いかわからなかった。
ちらりとアグレアスを見ると、両手で口を覆って震えている。
俺はその場に居合わせたわけではないから、残念な事にどちらの言っている事が合っているかはわからない。あえて中立に立つならば、お互い憶測が含まれていて、お互いが自分の辻褄が合うように、見えない部分を穴埋めしてしまっているように感じる。
隔たれこじれた二人の仲を元に戻すには、少し時間が必要なのだろう。
「ウサグー、過去の事を水に流してくれとは言わない。こういう事はお互いの見解ってのがあるだろうからね。だけど、それを前面に出してしまったら他の人がどんな気分になるか、それは良く考えて欲しいんだ」
ちらりとマルファスとフルフルを見ると、二人とも居心地の悪そうな何とも言えない表情をしていた。
その日の昼食の後、皆に集まってもらい、この城の防衛について話し合う事にした。発端は前回の防衛戦で、マルファスのソロちゃんを、フルフルの風魔法が砕いてしまった件。
あれから何度かそれについてアグレアスと話し合っている。だが、どうにもこれといって良い案が出なかったのだった。
「最近思うんだけど、一の丸、あそこで迎撃するのって、効率的じゃない気がしてるんだよね。あれから冒険者がちょくちょくやってきて、骸骨兵も増えてて、強敵が来るとごちゃごちゃしちゃってるんだよ」
前回の姫様パーティのような強敵と戦うのは、釣堀しか無い二の丸が良いのではないかと考えている。
一の丸はソロちゃんと骸骨兵だけ。マルファスとビフロンには四の丸の多聞櫓で安全にソロちゃんと骸骨兵を制御してもらう。
強敵は骸骨兵をものともしないので、あまりソロちゃんに深追いしてもらわず、二の丸に進んでもらう。
そこで、アグレアス、ピュセル、ザガムに迎撃してもらう。
さらに、現在、四の丸の多聞櫓で迎撃しているロレイ、フルフルには天守閣から高さを活かして迎撃してもらう。
昔書いた城絵図を机に広げ、これまで練っていた体制の草案を説明。そこに鳩のハルパスが木の駒を即興で作って置いて行く。
実はこの草案にアグレアスは反対している。それでは一の丸の防御機構が無駄になってしまうと言って。
「防御機構ならぁ、骸骨兵たちがぁ、使うからぁ、問題無いんじゃないですかぁ?」
相変わらず間延びした言い方で意見を述べるビフロンに、全員がそれぞれの苛々の反応を示す。
「あたしが四の丸で、フルフルが天守閣ってのは気に入らないですけど、ソロちゃんを壊されたらたまらないですからね。あたしは全面的に賛成ですよ」
鹿のフルフルをギロリと睨み、ぷいと顔を背ける。
「あらあら。二人とも喧嘩はダメよ。壮馬様が困ってしまっているじゃない。そもそも、あななたたちが揉めているから、壮馬様はこんな提案をされているのですよ。少しは反省なさいな」
牛のザガムが二人をたしなめる。
マルファスは口を尖らせ、フルフルが前脚を折ってうなだれる。
「あの、一つ聞いても良いですか? うちとウサグーの名が挙がらへんかったみたいですけど、うちらはどこで何をしたらよろしいんでしょううか?」
ハルパスがそう言って首を前後させる。
申し訳ないが、ハルパスの事はすっかり忘れてた。
「ハルパスは俺と一緒に天守閣で指揮かな。伝令をやってもらうかも。ウサグーは、当面は俺の護衛かなあ」
ウサグーの表情を確認すると、少し恥ずかしそうに微笑んでいた。
するとアグレアスが小さく手を挙げた。
「あの、それですとウサグーのレベルが上がらないですわ。しばらくは一の丸に詰めてもらうのがよろしいかと。ウサグーはわたしくと同じで鞭技を得意としております。レベルが上がらないと護衛も少し不安が残りますから」
その指摘に、それまで微笑んでいたウサグーが露骨に不快そうな表情になり、ギロリとアグレアスを睨みつける。
「わたくしは治癒魔法が使えます。鞭技だけしかできないわけではありません!」
姉妹で一触即発の雰囲気を醸し出し、他の人たちが二人を交互に見る。
「あ、あの、そ、それなら、ま、まずは少し一の丸をお任せして、せ、戦闘に慣れたら、わ、私たちの二の丸組に、へ、編入してはどうでしょう。れ、レベルが上がれば、か、回復力も増えますよね」
ピュセルが緊張で真っ赤な顔でそう助言。それにウサグーも納得し、無言で頷いた。
「じゃあ、決まりだね。暫くその体制で行ってみよう。ウサグー、くれぐれも無理だけはしないようにね。ピュセル、一の丸でウサグーを補佐してやってくれないかな」
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