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【完結】あの山にダンジョンを築城しよう! ~命の実を守るために俺だけの城に引き篭もってやる~  作者: 敷知遠江守
第八章 平山城(中篇)

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第35話 エルフのウサグー

田峯壮馬:女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」

アグレアス:地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)

マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造IIIソロちゃん」「遠隔活動」、得物はモーニングスター

ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」「栽培」、得物はサック

ロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)

ピュセル:地0水5火1風0、スキル「水流操作」、得物は刀(刀技)

鳩のハルパス:地3水0火0風3、スキル「経理」「兵站」「建築」、得物はハンドアックス

鹿のフルフル:地0水0火0風5、スキル「栽培」「精霊召喚」、得物は杖

牛のザガム:地0水4火4風0、スキル「酒造」、得物は長柄の鎚(鎚技)

 姫様が帰ってから、城は平穏そのものであった。


 たまに冒険者が迷い込んで来る事はあるものの、強化された骸骨兵に敵わず一の丸で命の実の養分になり、新たな骸骨兵となっていった。

 一組だけ、赤い金属鎧の戦士、緑の革鎧の盗賊、白と黒のローブ姿の魔術師の計四人という冒険者パーティが骸骨兵をものともせずに、一の丸を突破できそうだった。だが、結局はピュセルの刀技、ソロちゃんの武技、ロレイの弓で全滅。命の実の糧となり、少し強い骸骨兵となっている。



 そんなある日、一人の旅人が城にやってきた。

 その声を聞いてすぐに、ピュセルは何の冗談かと思ったらしい。

 どうやら声がアグレアスそっくりらしく、門を開け、中に入って来た旅人に対し、ピュセルは『アグレアス』と呼んだ。


 だが、何やらよくわからない言葉をピュセルに投げかけ、鞭を構えて攻撃の体勢を取ってくる。その時点でピュセルもそれがアグレアスでは無いと思いながらも、共通点の多さに混乱。

 刀を構えアグレアスに良く似た女性と対峙するピュセル。どうにも仲間意識があり、積極的にはなれない。


 そこに狩りに出かけていたロレイが帰って来た。

 ロレイもピュセル同様、最初はアグレアスだと思ったらしい。だがピュセルから「気を付けて!」と忠告を受け、慌てて弓矢を取り出し、旅人に向けて構えた。


 この事を最初に知らせてくれたのはフルフルであった。

 現在四の丸の多聞櫓は鹿のフルフルと牛のザガムが使用している。なにやら一の丸が騒がしいと窓から外を眺めたフルフルが、慌てて館へと走ったのだった。


 アグレアスの食事の仕込みを手伝って、サヤエンドウの筋を取っていた所に、フルフルは駆け込んできた。


 アグレアスと二人、急いで多聞櫓に行き、窓の外から様子を覗き見る。旅人を見てすぐにある事を思った。

 『初めて会った時のアグレアスによく似ている』

 勿忘草色の美しい髪、整った美しい顔、非常に細い体の線、そして、笹の葉のような長い耳。


 旅人は何語かわからないが、何やら喚き散らして鞭を右に左にと走らせている。

 隣のアグレアスを見ると、長い睫毛をふるふると震わせ、色の薄い唇を噛み、じっと旅人を見つめていた。


「……ウサグー。生きてらしたのですね」


 俺の視線に気が付いたアグレアスが、はっとした顔をして旅人を指差した。


「あの娘はわたくしの妹です。ずっと生き別れになってしまっていたのです。壮馬様、行って契約してあげてくださいまし」



 いつものように黒い細い霧に当てると、ウサグーは気を失い倒れてしまった。

 彼女を背負う際、非常に懐かしい感覚に襲われた。初めて小屋で会ったアグレアスを抱き抱えた時も、このように非常に軽かった。確かにこの娘はアグレアスの妹だと、何となく納得ができる。


 屋敷へ向かいアグレアスのベッドに寝かせた。

 長い睫毛を交わせ寝息ひとつたてず眠るウサグーを、アグレアスがじっと見つめる。


「壮馬様にはまだ話しておりませんでしたわね。わたくしたちエルフはいつくかの集落に別れて住んでいたのです。その中の一つ、『サルトゥス』という集落にわたくしたちは住んでいました」


 アグレアスはウサグーの顔にかかった髪を長い中指で丁寧に顔から避けた。



 ――大地国と高原国の狭間の森林地帯。そこに『サルトゥス』を含むエルフの郷があった。

 エルフは自然崇拝が強く、多くの事はそれぞれの部族ごとで決めていた。部族同士の揉め事があった場合は、部族の長老が集まり、物事を決めるといった感じ。自警団はあるものの軍隊は無く、その代わり外に向かって侵略もしない。そんな閉塞した社会であった。


 ある時、部族の一つが郷から忽然と姿を消した。

 元々その部族は集落の中では左翼思考が強く、長老会議で煙たがられていた存在であった。他種族との混血、秩序に拘らない生活、武器による侵攻、それらを声高に叫んでおり、他の部族はいつも眉をひそめていた。そのせいで、彼らが消えても、皆、うるさい奴らがいなくなったという程度の認識であった。


 だがその部族はエルフの郷から逃げたわけではなかった。


 その部族は人間の王国と結び、エルフの郷の情報を漏らし、集落の一つを焼き払った。

 自警団があるとはいえ、軍隊相手ではひとたまりも無い。軍隊によって蹂躙された集落では、男性は赤子に至るまで惨殺され、女性はどこかに連れ去られてしまった。


 それでも他のエルフの集落は、自分たちは大丈夫という変な自信を持っていた。我々は平和を愛する種族なのだからと。そのせいで互いに連携する事が無く、運の無い奴らという程度の認識であった。


 だが、軍隊は容赦なく次の集落を襲った。そしてついにサルトゥスを除いて全ての集落が攻め滅ぼされた。


 軍隊はサルトゥスも同様に攻め滅ぼした。

 その時、アグレアスと母は、たまたまサルトゥスを離れており、家に帰ろうとしたら居住区が燃えていて、そのままディアボリ山まで逃げた。


 あの小屋はアグレアスの母が建てたもので、アグレアスが炊事ができるくらいまで育った頃、その母もこの世を去ってしまった――



「今日の今日までウサグーは、あの時、父や一族と共に死んだのだと思っていました。それが生きていただなんて……」


 アグレアスが優しい笑顔で俺を見て微笑む。


「壮馬様、わたくしと同じように、ウサグーにも接してあげてくださいまし。わたくしと異なり、少し威圧的で生意気なところがある娘ですけれど、なにとぞ、腹をお立てになりませんように」


 ウサグーの前髪をかき上げるように撫でる。

 額に薄っすらと古い傷跡があるのが見えた。きっと俺たちが思うより、ずっと厳しい目に遭いながら、ここに辿り着いたのだろう。


「当たり前じゃないか。ここに来た者は全員家族なんだから」

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