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【完結】あの山にダンジョンを築城しよう! ~命の実を守るために俺だけの城に引き篭もってやる~  作者: 敷知遠江守
第七章 平山城(前篇)

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第30話 密かな不満

田峯壮馬:女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」

アグレアス:地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)

マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造IIIソロちゃん」「遠隔活動」、得物はモーニングスター

ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」「栽培」、得物はサック

ロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)

ピュセル:地0水5火1風0、スキル「水流操作」、得物は刀(刀技)

鳩のハルパス:地3水0火0風3、スキル「経理」「兵站」「建築」、得物はハンドアックス

鹿のフルフル:地0水0火0風5、スキル「栽培」「精霊召喚」、得物は杖

 変態苺パンツ……もとい、銀の騎士の話で、どうやら以前来た冒険者風のおじさんの国が策謀を使ってここを攻略しようとしている事が判明してしまった。

 次回あの商人が来た時に、少し詳しい話を聞く必要があるだろう。



 そろそろ夏も終わろうという季節。

 汗をかくせいで、皆、毎日のお風呂がかかせない。


 温泉は先に俺が入り、出た後で女の子たちが入るという仕切になっている。

 入浴中は本丸の門扉を閉める事になっている。


 屋敷の居間の窓からは、ちょうど取水口から水が流れ出ているのが見える。

 そんな居間で一人涼んでいると、本丸の方から女の子たちのキャッキャという楽しそうな声が聞こえてくる。

 どうやら最近、皆で温泉に入るというのが彼女たちのブームらしい。

 ……その分マルファスとフルフルの喧嘩する声もよく聞こえてくるのだが。


 温泉から上がると、浴衣のような薄着で全員で屋敷に戻って来る。

 最近の楽しみは取水口で直接冷やした西瓜を湯上りに食べる事らしい。

 昼に収穫し、それを用水路に浸しておくと、夕方には良く冷えて食べ頃になっている。


 西瓜を片手に何とも楽しそうな彼女たち。

 薄着の彼女たちを順番に見ていって、ふとある事に気が付いてしまった。

 その時は、くだらない事を考えたものだと自分に呆れて自嘲しただけだった。



 ところがその翌日。

 大物を捕らえましたと、ロレイが得意満面の顔で帰って来た。


 確かに大物だった。

 全身茶色、少し肉付きは悪いが、どこからどう見ても乳牛。

 ただ牛にしてはやや小ぶり。


 聞けば、この洞窟の入口付近でウロチョロしていたという。

 恐らくは仲間になる者なのだろうが……

 ふっと以前、このダンジョンには俺が望んだ人がやって来ると言われたのを思い出す。

 いや、まさかね。いやいや、そんな。


 乳牛を見たアグレアスは目を細めて眉をぴくりと動かした。

 そしてどこかピリピリした雰囲気で俺の方に顔を向ける。


「壮馬様、この牛、仲間になると思いますので、命の実を取りにいかれてはいかがですこと?」


 いつものどこか甘い声でなく、明らかに機嫌の悪そうな声で言うアグレアスに、皆が視線を向ける。

 アグレアスの視線は牛に注がれたまま。


 こそこそという感じで命の実をはめ込んだ杖を取りに行く俺の後を、ロレイとピュセルが付いて来た。


「あ、あの、あ、アグレアスと、な、何かあったんですか?」


 あのピリついた感じ、多分アグレアスは気付いた。

 そして恐らくは激怒している……


 なるべくわかっていない風を装い、「さあ」と答えたのだが、その顔はきっと思い切り引きつっていただろう。


 いつものように命の実から細い霧が伸び、それが途絶えると乳牛は目を閉じ、その場にばたりと倒れてしまった。

 さすがに仲間を家畜小屋にいさせるわけにもいかないので、四の丸の多聞櫓を使ってもらう事になった。


 乳牛は名をザガムというらしい。特技は酒造。武器は鎚で、それなりに戦技も使用できるらしいのだが、本人曰く、アグレアスやピュセルほど戦闘特化という事ではないらしい。



 ザガムが来てからというもの、どうにもアグレアスの機嫌が悪い。

 食事の時も空気がピリピリしている。

 その空気に耐えられず、皆、食事をさっさと済ませてそそくさと出て行く。


 アグレアスも自分のせいで雰囲気が悪いという自覚はあるのだろう。

 そんな仲間たちを見て、ため息をついている。


 ある時、屋敷に二人だけになった時に、なかなか言えずにいた事を思い切って切り出してきた。


「……あの、壮馬様。わたくしたちに何かご不満な点があったりはいたしませんか? 特に、その、わたくしに対して」


 アグレアスは耳を真っ赤に染め、恥ずかしそうな顔で言ってきた。


「みんな、本当に良くやってくれてるし、不満なんて無いよ。不満どころか感謝しかない。ザガムが来てから、ずっと何か言いた気にしてるけど、どうしたの? 何かあったの?」


 するとアグレアスは口を歪め、拗ねたような表情になった。


「わたくしの取り越し苦労ならよろしいのです。わたくしはてっきり、その、わたくしたちの胸の大きさに壮馬様が不満を感じてらっしゃるのではと」


 ……だと思った。

 だって、俺もザガムが来た時、同じ事を思ったもん。


「俺は思うんだよ。何でアグレアスが一番最初だったんだろうって。それって俺にとって一番好みなのがアグレアスって事なんじゃないかって。だから不満なんて全然。何で急に、そんな?」


 真っ赤な顔で照れたアグレアスは、こちらに背を向けて手をもじもじさせた。


「実は、ビフロンが来た時に、少し思ったのです……それで……」


 そこまで言ってアグレアスは真顔で振り返った。


「壮馬様! 敵襲ですわ!」


 まったく想定していなかった発言に、最初何を言っているのか理解が追いつかなかった。

 だが、アグレアスの緊迫した雰囲気に、徐々に状況が飲み込めてきた。

 飲み込めてくると、もう足は屋敷を飛び出していた。

 


 二人急いで屋敷を出て左手の多聞櫓へ向かった。

 窓から身を乗り出して一の丸の様子を見てみると、すでに大手門の門扉はぶち破られていて、ピュセルは一の丸の広間まで引いていた。

 横にソロちゃんが侍っている。その後ろには武器を手にした無数の骸骨兵。


 敵は身軽そうな恰好の女性、護衛と思しき聖職者風の男、魔術師と思しき老人の三人。


「ふん。なによ、そんな土人形。私たちの敵じゃないわ。かかってきなさい!」


 女性がそう言って啖呵を切ると、それを聖職者風の男が窘めた。


「姫様、御自重ください。あまり派手にやられますと――」


「うるさいわね! 久々に骨のありそうな相手がいるのよ。気分も昂るってもんでしょ!」


 魔術師風の老人は目を覆っている。



「今、あの男、『姫様』とか仰いましたわね。だとすると、もしかしたら攻めて来たのではないかもしれませんわね」


 アグレアスはロレイに支援をお願いすると、鞭を多聞櫓の柱に巻きつけ、石垣を飛び降りて行った。


「ん! 今来たそこのあんた! あんた強そうじゃん、私と手合わせしてよ!」

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