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【完結】あの山にダンジョンを築城しよう! ~命の実を守るために俺だけの城に引き篭もってやる~  作者: 敷知遠江守
第六章 小城(後篇)

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第25話 取引をしないか?

田峯壮馬:女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」

アグレアス:地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)

マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造IIIソロちゃん」「遠隔活動」、得物はモーニングスター

ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」「栽培」、得物はサック

ロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)

ハーピーのピュセル:地0水5火1風0、スキル「水流操作」、得物は刀(刀技)

鳩のハルパス:地3水0火0風3

「なんだそれ? サルトゥス? 聞いた事が無いな。俺は高原国から来た兵士で、生まれも育ちも王都だかな。そのサルトゥスとかいう場所に何かあるのか?」


 狩人は剣と盾を構え、臨戦態勢のままアグレアスにたずねた。


「ご存知ないのでしたらよろしいのです。あなたがそれに関わっているからここに来たのではと思っただけの事ですわ。でも、だとしたら、あなたはいったい何の目的でここにいらしたんですの?」


 アグレアスは鞭を蛇のようにうねらせて狩人を牽制している。

 狩人の盾と剣が少し下がる。


「うちの国、今まさに亡ぼうとしているんだ。隣の大地国の侵攻を受けて領土を削られまくてて。もう二回も遷都してるんだ。そんな国でも何とかできる悪魔がこの山に住んでいるって伝説を聞いたんだよ。だから俺は潜入したんだ。だけど、悪魔じゃなく、住んでたのは若くて美人の女性たちだけだったよ」


 とんだ無駄足。

 そう言って狩人はがっかりした顔をする。

 アグレアスは顔色一つ変えないが、ピュセルは『美人』と言われて耳が赤く染まっている。


「ここは宝の山でも無ければ、黄金郷でもありませんわ。ここはわたくしと壮馬様の愛の巣。それを邪魔立てする気なのでしたら容赦はいたしません」


 アグレアスの啖呵に狩人の顔が引きつる。

 ピュセルまで「え?」という顔でアグレアスを見る。


「それはそれで違うんじゃないの?」


 隣のマルファスがツッコミを入れる。

 背中を向けているのでよくわからないが、アグレアスの耳が真っ赤になっている事だけはわかる。

 当然、俺の耳も真っ赤だ。


「なあ、取引しないか? もしこのまま俺を逃がしてくれるのなら、俺は国に戻って、この山に価値のあるものは無かったと報告する。逆に神聖な場所として守るべきと進言するよ。うちの姫様は物分かりが良いから、きっとあんたらの仲間になろうって言ってくれるはずだ」


 突然交渉を持ちかけられて、アグレアスがこちらをちらりと見る。

 だが、そんなアグレアスの隣でピュセルは震えていた。


「ふ、ふざけないでください! わ、私たちの姉妹を傷つけておいて、け、形勢が不利になったから、に、逃がしてくれなんて、つ、都合がよすぎです!」


 狩人を包む霧が集まり、細剣のような形を形成して狩人に向かって飛んで行く。

 狩人はそれを盾で防ごうとした。だが細剣の霧はその盾を貫き、狩人を襲う。咄嗟に避けたのだが、その腕に突き刺さり、緑のチュニックに血が滲む。

 盾には楕円の穴が開いている。


「待て、ピュセル。迎撃態勢は取っていて構わないが、攻撃はしないでくれ」


 俺の指示にピュセルは無言で従った。

 だが、狩人の流れた血を集めて真っ赤な刀を作って狩人に向けている。


「あんたがこの山の主か。じゃあ、あんたがソウマとかいう奴か?」


 狩人は目の前の二人を通り越し、こちらに話しかけてきた。

 俺を呼び捨てにした事でマルファスが苛立ち、モーニングスターを握りしめる。だが、それを手で制した。


「お前、自分が何をしでかしたかわかってないのか? 逃がしてくださいと言われて、はいわかりましたと言うわけが無いだろう? 逃がして欲しいのなら代償を差し出せ。それができないのなら諦めて覚悟を決めろ」


 狩人がこちらをじっと睨む。

 ここで視線を反らしたら侮られる、そう考えて狩人をじっと睨みかえす。

 命の実から出て行く黒い霧の量が増えているのが見える。恐らくはビフロンかロレイが少し危険な状況になってしまっているのだろう。どちらにせよ、できるだけ早く結論を出したい。


「わかった。この王家の紋章の入ったオカリナを置いていく。これは姫様から賜った大切な王家の宝だ。吹けば風を呼ぶ事ができるという代物さ。そこの姉さん。あんたなら見れば俺が言っている事が嘘じゃないってわかるんじゃないか?」


 そう言って狩人は、盾を背にかけ、剣を地に差し、首にかけられたオカリナをアグレアスに手渡した。渡した後は両手を上に上げている。


「あの者の言う事に間違いはありませんわ。これには風の妖精が住み着いています。吹けば小さな竜巻を起こすくらいの事ができる代物ですわ」


 オカリナには三角形を基調とした紋章が刻み込まれている。

 残念ながら俺が見てもごく普通のオカリナにしか見えないのだが。


「わかった。これで納得する事にする。次来る時はもっと友好的な態度で来るんだな。でなければ次は容赦はしない。命乞いも聞かない」


 それを聞くと狩人は地に差した剣を抜き、背中の鞘に納めた。


「仲間を傷つけてすまなかった。これ、傷薬。これも置いていくよ」


 そう言って狩人は腰に吊るした革袋を一つアグレアスに手渡した。


「アグレアス、申し訳ないけど、そいつを入口まで送ってやってくれないか。素直に城から出て行くか見届けて欲しいんだ」


 アグレアスはペコリと頭を下げ、狩人に出て行くように促した。



 狩人が四の丸から出て行ったのを見て、ピュセルにビフロンを探すようにお願いし、ロレイの手当に入った。

 マルファスの怪我はすでに黒い霧によって表面上は塞がっている。


 ロレイの方も矢は突き抜けていて、黒い霧が注がれて傷口は塞がり始めていた。だが出血が多く、完全に気を失っており、顔色は真っ青であった。

ロレイをマルファスのベッドに寝かせると、ピュセルが慌ててやってきた。


「そ、壮馬様! い、急いで来てください! び、ビフロンが!」


 命の実のはまった杖を手に、ピュセルを追って四の丸を出て三の丸へ向かった。


 三の丸にも柿や桜桃といった果樹が植えてあるのだが、その中の一本にビフロンが矢で縫い付けられていたのだった。

 肩と腹、腿の三か所に矢が刺さっている。

その足下には血が滴り、水たまりのようになってしまっている。


 慌てて駆け寄ると命の実から黒い霧が吹き出してビフロンの体を覆い始める。

 矢を引き抜き、その場に寝かせると、覆っていた霧が矢傷を塞ぐように集まっていった。


「ロレイもそうだったけど、ビフロンもここまでされたのに致命傷じゃないんだな。つまりはあいつは本当に最初から偵察のつもりだったという事か。嫌な奴だったな……」

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