第21話 一騎打ち
田峯壮馬:女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」
アグレアス:地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)
マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造III」「遠隔活動」、得物はモーニングスター
ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」「栽培」、得物はサック
ロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)
ハーピーのピュセル:地0水5火1風0、スキル「水流操作」
「敵の数は少ない! だが一体一体が強力だ! 必ず複数人で一体に当たれ! お互いの連携を密に! 射手がいるから姿が見え次第対処せよ!」
門の外からそんな号令が聞こえてきた。
この声、間違いない。以前ソロちゃんを見て撤退していったあの冒険者風のおじさんだ。
「第一隊、攻めかかれ!」
団子鼻の下の口髭を上下に揺らしながら、おじさんが号令をかける。すると兵たちが慎重に城内への侵攻を始めた。
「ロレイ! 何か盾になるものを用意しろ! じゃないと……」
そう言った矢先の事であった。
虎口内の兵に矢を放とうとしたロレイが膝を付き倒れてしまった。
「ピュセル! ロレイを櫓から降ろしてくれ! お前も敵の射撃に気を付けろよ!」
ピュセルが一歩、二歩と助走をつけ、多聞櫓の屋根上に向かう。
ロレイを鳥の足でがっちり掴んで、空を滑るようにこちらに滑空してきた。さすがにロレイを抱えて飛ぶのは無理があったようで、最後は落下するように着地。
介抱しようと近づくと、ロレイは完全に気を失っており、口からはどす黒い液体を垂れしていた。右胸と腹部、左腿に深々と矢が付き刺さっている。鏃は胴を貫いて背中から出てしまっている。
白い和服が矢の周囲からじんわりと朱に染まっていく。
矢の羽根を折り、背中から鏃を思いっきり引っ張ると真っ赤な血が噴き出した。
すぐに命の実から黒い霧が発せられ傷口をゆっくりと塞いでいく。
三本の矢を引き抜き終えたのだが、命の実からの黒い霧の流出が止まらない。
そんな治療中の所に骸骨兵の骨が飛んできた。
戦況を見ると、虎口からの通路は完全に突破されていて、広間での戦いとなってしまっていた。
ソロちゃんが顔の付いた杖を槍のように扱い、敵を刺し貫いている。
その横ではアグレアスが鞭で敵兵を殴打している。
見た目とは裏腹に、今回のソロちゃんも武闘系らしく、杖を巧みに操り、穂先で敵を突いている。その一連の行動の中に顔を部分敵の頭部に近づけるという動きをしている。
どうやらその際に杖の顔は紫色の毒霧を吹きつけているらしい。兵が途中で動きを止めて膝から崩れ落ちるというシーンを何度も目にする。
ふいに通路の奥のおじさんと目が合った。
おじさんはこちらを向き、にやりと口元を緩ませると、兵たちの隙間をすり抜けてこちらに向かって一直線に走って来た。
固太りのくせに、なんという俊敏な動き!
腰にぶら下げたボウガンでアグレアスの腹部を撃ち抜き、ソロちゃんの槍をすんででかわし、武器を槍に持ち替えて走り込んで来る。
マルファスもモーニングスターを振ったのだが、彼女の腕前で当たるはずがない。
少し離れたところで足を止め、おじさんが槍を持つ手に力を込める。
「そこの男、覚悟せよ! 『槍技 轟雷一閃』!」
おじさんの槍がパチパチと閃光のようなものをまとってこちらに突き出される。
アグレアスの「逃げて!」という悲痛な叫びが響き渡る。
避けなきゃ!
逃げなきゃ!
頭ではそう思うのだが、足がすくんで動けない。
体が硬直していう事を聞いてくれない。
その時、白い何かが目の前の視界を塞いだ。
無数の羽根が上から舞い落ちる。
「ピ……ピュセル……」
ぷしゅっと嫌な音がして、ピュセルの血が羽から噴き出る。
「だ、大丈夫です。壮馬様さえ無事なら」
こちらを振り向きもせずに、気丈な台詞を吐いてピュセルがおじさんの槍の前に立ちふさがっている。
命の実から黒い霧がピュセルの、恐らく骨が砕けていると思われる右の翼に向かって伸びて行く。
「ん? 男、何だその禍々しい色の球は!? まさか貴様は……」
おじさんは槍をピュセルに向かって突きつけながら、視線はこちらに注いでいる。
何とかこちらに近づこうとするのだが、ピュセルが盾になってくれて近づけずにいる。
おじさんは標的を変えたらしく、ピュセルに向かって槍を突いて牽制。その都度、何やら水滴のようなものが飛び散っている。
「あ、あの球の事は、あ、あなたには関わりの無い事です」
そう言い放つと、ピュセルは何やらむにゃむにゃと呪文を唱え始めた。
ピュセルの前に無数の水滴が集まって行く。
「なるほど。モンスター、やはりお前を倒さないとダメなようだな。いいだろう。先ほどはその水の壁で威力を削がれたが、果たして今度も同じようにいくかな?」
おじさんは先ほどと同様に、槍の穂先にパチパチと閃光を発生させた。
先ほどより閃光が激しく瞬いている。
「じ、じゃあ私の方は、ど、どの程度我慢ができるか見せてもらいます」
するとピュセルの眼前に漂っている水球からおじさんに向かって水柱が伸びていった。まるで日本刀のような鋭さを持った水柱がおじさんを襲う。
たまらずおじさんは槍で水柱を弾く。
二本目、三本目、四本目と次々に水柱がおじさんを襲う。
うち一本がおじさんの頬を切り裂いた。
おじさんは舌打ちし、ごそごそと懐を探って、なにやら手に取った。
おもむろに手に取った物を投げつけると、ピュセルの足に小刀が突き刺さった。
「モンスターよ、この勝負預けておこう」
吐き捨てるように言うとおじさんは来た時と同じように全速力で逃げ帰って行った。
途中アグレスの鞭をかわし、アグレアスの脇腹に飛び蹴りをくわえて兵たちに合流。
「今日はここまでだ! お前たち、退くぞ!」
おじさんの号令でそれまで数人で固まって戦っていた兵たちが、一斉に防御体勢を取った。
出口に近いグループから細い通路に向けて走り出す。
広間の入口付近で兵たちは横に広がっていたはずなのだが、気が付いたら全員通路に撤退している。
おじさんの号令一下、兵たちは整然と撤退して行ったのだった。
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