第20話 軍の侵攻
田峯壮馬:女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」
アグレアス:地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)
マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造II」「遠隔活動」、得物はモーニングスター
ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」、得物はサック
ロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)
ハーピーのピュセル:地0水5火1風0、スキル「水流操作」
「ちょっとこの図を見て欲しいんだ。これは俺がこれまでこつこつと描いてきたこの城の設計図なんだけど、設計上でこの四の丸だけ非常に広くなっているんだよ」
朝食後に食卓に城絵図を広げて、一の丸のちょうど上に当たる四の丸を指差した。
「本当ですわね。これは実際の場所もこのように広くなっているのですか?」
アグレアスが唇に人差し指を当てながらたずねる。
俺が何かを言う前にマルファスが実際もそうなっていると回答。
「あたしも、なんでここだけこんなに広いんだろうって思ってたんですよね。本丸とかっていう温泉よりも全然広いんですよ、ここ」
ロレイとビフロンは、それがどうかしたのかといわんばかりのキョトンとした顔をしており、ハーピーのピュセルは理解する事を放棄したらしく首をリズミカルに左右に振っている。
そんな三人を無視し、アグレアスとマルファスの二人に向かって得意気な顔をする。
「ここにはね、最初から御殿を作る予定だったんだ。本丸というのは防衛の際の最終拠点。ここは言ってみれば最後の砦だね。普段の生活はこっちの四の丸御殿というわけだ」
これまではこの場所に御殿を作るのに、実は一つ大きな問題があった。
それは水。
これまでは定期的にマルファスのソロちゃんに洞窟の外に水を汲みに行ってもらっていた。なのでどうしても一の丸に住むしかなかった。
だがピュセルが水源を掘り当ててくれた。しかもその場所は非常に都合の良い事に四の丸の外壁の上。
そこでもう一枚の設計図を机の上に置いた。
「これが御殿の完成予想図と間取り。小さな部屋をいくつも用意するから、完成したらこれまでのような雑魚寝状態から開放されるんだよ!」
……あれ?
なんだか皆の反応が薄い。
ロレイたちはともかく、アグレアスたちの反応も薄い。
「これまではいつでもみんなの顔が見れたんですけど、これからはそうではなくなってしまうんですね。何だかちょっと寂しいかも……」
少し恥ずかしそうな顔をして、マルファスが俺から視線を反らした。
……いやいや、そんな子だくさんの大家族じゃないんだからさあ。
改めて御殿の完成図を見て、マルファスが口を尖らせた。
「でもこれ、あたしだと壁くらいしか作れないですよ。こういうのできそうな人は……あ! ビフロン、お前レベルが上がったからやれるんじゃない?」
皆の視線が一斉にビフロンに注がれる。
「あたしのぉ、スキルはぁ、木を育てる方でぇ、加工用じゃないんですぅ。これをぉ、作るならぁ、誰かぁ、そういう者をぉ、呼ばないと駄目ですぅ
ビフロンの間延びした喋り方に苛ついたアグレアスが額に青筋を立てた。マルファスも貧乏ゆすりをしているし、ロレイは拳を強く握りしめ、ピュセルは歯を噛みしめている。
そういう事であれば、誰かやってくるのを気長に待つしかないだろう。
話はそれで終わり、ロレイは洞窟の外に狩りに出かけ、ビフロンは畑に出かけた。
残ったのはアグレアスとマルファス、ピュセル。
「ねえ壮馬様。じ・つ・は、じゃぁん! またまたソロちゃんの強化が可能になったんです! なので、前みたいに宝石をいただけませんか?」
ニコニコ顔でマルファスは言ってきた。
これまでこの城を守るのに、ソロちゃんの功績は計り知れない。戦闘では屁の役にもたたない召喚主に代わって、よく頑張ってくれいる。
そのソロちゃんが改修になると言われれば断る道理は無いだろう。
「こっから好きな石を一つだけ持っていって良いよ。一つだけな」
アグレアスの行李から宝石の入った方の革袋を取り出し、その中身を机に広げた。
多くは襲撃者たちの所持品だが、一部この城を作る際に地面から出てきた原石も含まれている。
ビフロンが宝石研磨のスキルを持っているそうなのだが、なかなか畑仕事が忙しくてそこまで手を付けれていない。
その数多の宝石の中からマルファスは一際大きな宝石を二つ手に取り、どちらにしようと悩んでいる。
一つは赤い石、もう一つは紫の石。
散々悩んだ末、マルファスは紫の石を選択した
跳ねるような足取りで櫓から出て行くマルファス。
ソロちゃんがどんな感じになるのかは俺も非常に気になるところ。
ピュセルと一緒に見に行くと、さっそくマルファスは宝石を地面に置き、なにやら人の形を指でなぞっていた。
それが終わると、魔法陣のような幾何学的な模様を描いて、むにゃむにゃと呪文のようなものを唱え始める。
最初は大雑把な人の形で地面が盛り上がり、その後、立派な戦士の造形に変化していく。額には前回の緑の宝石。顔は前回同様憤怒という感じだが、髪は頭上で綺麗に束ねられている。
特徴的なのは手にした武器。長柄に槍の穂先が付いていて一見すると普通の槍なのだが、反対側に人の顔のようなものが付いている。その顔の額に先ほどあげた紫の石が不気味に輝いている。
恐らくだが、今までのような戦士タイプではなく魔術師タイプなのだろう。
「あれぇ? なんか前より弱そう……」
マルファスがソロちゃんを見て呟いた。
……マルファスよ、例えそう思っても、本人に直接言ったら可哀そうだろうが。ほんとにこいつはお子ちゃまだなあ。魔法が使えて、なおかつ肉弾戦もやれるとしたら、もの凄く強いかもしれんじゃないか。
「前と違って、今はビフロンの骸骨兵がいるからなあ。前みたいな肉弾タイプよりは、こういうタイプの方が戦線では役にたつかもしれないぞ」
そう言ってフォローしたのだが、マルファスは完全に不審顔。心なしかソロちゃんの目が悲しそうに見える。
すると、急にピュセルがパタパタとせわしなく羽を動かして、ふわりと宙に浮かんだ。
虎口の塀に止まって洞窟入口をじっと見つめている。
「あら? 何やらロレイが慌てて帰ってきましたよ。 えっ、嘘っ!? 何だかこのあいだとは違う軍隊が洞窟の外に見えます!」
そう言ってピュセルが慌ててこちらに振り返った。
「ピュセル、農園にいるビフロンを早急に呼びに行ってくれ! マルファスはソロちゃんとそこの通路出口に布陣。ロレイが来たら櫓の上に上って虎口内に矢を撃つように言ってくれ」
ピュセルは返事もせずに大急ぎで農園に飛び立っていった。
マルファスは手にモーニングスターを持って、ソロちゃんの後ろに隠れた。
アグレアスを呼びに櫓へ向かっている途中で、鞭を片手にきりっとした目付きのアグレアスがやってきた。
「先ほどちらりと窓から見えましたけど、前回の固太りのおじさんが兵を率いて攻めてきたようですわ。あの方、冒険者に見えましたけど、どうやらそれなりの地位の御方のようですわね」
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