第19話 空堀が水堀に
田峯壮馬:女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」
アグレアス:地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)
マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造II」「遠隔活動」、得物はモーニングスター
ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」、得物はサック
インプのロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)
ハーピーのピュセル:地0水5火1風0、スキル「水流操作」
「こ、このあたりです。す、少し穴を開けてみてください。や、山に沁みた水脈がここを通っているはずです」
ハーピーのピュセルが言った山肌に拳大の穴を開けるマルファス。
山肌が濡れているとかならまだしも、周囲と何も違いの無い場所で、マルファスも半信半疑の顔をしている。
少し穴を開けるとピュセルからもっと深くと言われ、指示のままに掘っていく。すると、蛇口でも捻ったのかという感じに、勢い良く穴から水が噴き出てきた。
最初にピュセルが指示した場所は四の丸の横の山肌で、マルファスは慌てて山肌に沿って三の丸の先の堀まで水路を掘っていった。
次にピュセルが指示したのは、一つ目の穴から少し一の丸に近い場所で、さらに言えば少し高い位置。
ピュセルの指摘した岩肌をさすり、何やらむにゃむにゃと呪文を唱えると、掌大の穴が開き、そこから水が噴き出してきた。
「壮馬様、この水はどこに引きましょう? このまま一の丸の外堀まで引いてしまいます?」
そうマルファスがたずねると、俺が返答する前に、一の丸の方にも一か所水源がありそうだとピュセルが言い出した。
「じゃあさ、本丸の手前の牧場になる予定の区画に引いちゃってよ。動物たちに飲ませよう。それとそこから各畑にも水路を通して水を送ろう。それでも余る分は畑から堀に零せば良い」
わかりましたと言って作業をしているマルファスを置いて、ピュセルと二人で本丸へと向かった。
ここには後々天守閣を建てる予定の場所である。
だが今は何も無い、雑草一つ生えていない丘にすぎない。強いて言えば、洞窟の天井が一の丸に比べるとかなり近く感じ、ビフロンの召喚している光源に近いせいか非常に明るい。
「そ、壮馬様。こ、ここにも水源がございますよ。こ、この端っこの、ここの地下深くに。か、かなり掘り進めないと駄目ですけど、ま、マルファスなら何とかなるかも」
そう言ってピュセルは石を足で掴んで、目印になるように地面に印をつけた。
この城の設計を練っていた時、本丸の水をどうしようとずっと考えていたので、この情報はかなり嬉しい。
さっそくマルファスを呼び穴を掘ってもらうようにお願いした。
確かに水は出た。だが、先ほどのような勢いが無く、ちょろちょろと湧き出るような感じ。
……ん? 湯気が出てる?
「おお! これ温水じゃんか! マルファス、ここに膝よりちょっと低いくらいの広い池を作ってよ! 溢れる湯は手前の放牧場に落として。きっと動物たちが飲むから」
こんな感じと指示をすると、マルファスは楽しそうに魔法で湯舟を作っていく。
温泉が出来上がると、マルファスが後ろで手を組み、なにやらもじもじしながらこちらを見て来た。
何となくマルファスが何を望んでいるかわかり、ご苦労様と言って頭を撫でる。するとマルファスは目を細めて嬉しそうに首をすくめた。
その光景を見たピュセルが羨ましそうな目でこちらを見つめている事に気が付いた。
ピュセルの頭も同じように撫でてあげると、ピュセルも目を細めて喜んだ。
どうやら、また一人、この城に妹ができたらしい。
今日から夕飯の後は温泉だ!
◇◇◇
「うぅん……」
目が覚めるとアグレアスの寝顔がかなり近くにあって、朝っぱらから何とも悩ましい声をあげた。
勿忘草色の長く美しい髪がぱらりと顔にかかる。
洞窟入口からピュセル、ロレイ、ビフロン、マルファス、アグレアス、俺の順にベッドが用意されている。
多聞櫓の入口は中央にあり、マルファスとビフロンのベッドの間に厨房と食卓がある。
人が増えたせいで食卓も少し広くなっており、それに伴いベッドの間隔が非常に狭くなってしまっているのだ。
少し視線を移すと、ほぼレースのみという際どい紫色の下着が目に入る。
相変わらず、アグレアスの下着はあまり体を隠してはおらず、それに何の意味があるんだろうと疑問を覚える。そもそもアグレアスは非常に細身で、あえて何がとは言わないがマルファスと大差がない。
幸せそうに寝息をたてているアグレアスの先には、黒い健康的な下着を身にまとい、大の字で寝ているマルファスが目に入る。
「なんなんだ、この背徳的な光景は……」
コケッコー!!
外から鶏の元気な鳴き声が聞こえる。
それに合わせてコキコキというあまり聞き慣れない音も聞こえてくる。
ベッドから出て窓から外を覗くと、ビフロンが敵兵から作り出した骸骨兵が餌箱片手に鶏に餌を撒いていた。
兜はかぶっているものの、面当てがないので完全に頭蓋骨が見えてしまっており、実に不気味だ。目の部分が鈍く赤く光っており、不気味さにさらに拍車をかけている。
櫓から一歩外に出ると、右方から水が流れる何とも気分の安らぐ音が聞こえてくる。
昨日四の丸に引いた水源から汲んだ土瓶で顔を洗う。
ふと上の本丸を見ると、湯気が立っているのが見える。
昨晩久々に風呂に入れたおかげで、今朝はかなり体が楽になっている気がする。
……その後で彼女たちが裸で入って来てちょっと焦ってしまったが。
「あら、壮馬様。今日はずいぶんと朝がお早いんですのね。もしかして、あまりよく寝れなかったりいたしました?」
その心地良い声の方に振り返ると、いつもの膝丈のワンピースにサマーカーディガンという服装のアグレアスが立っていた。
「いや、ちゃんと寝むれたよ。ただ単にここもずいぶんと賑やかになってきたものだって、ちょっと感傷に浸ってただけだよ。最初は俺と君、あの小さな小屋に二人きりだったのにな」
そう言って微笑むと、アグレアスは突然顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。
そんなアグレアスを見ると、あの日の夜を思い出し、何となく照れくさくなってしまう。
「……おはようございます」
背後の声に首だけ向けて、おはようと声をかけてから前を向き、もう一度振り返った。
そこに立っていたのは、弓道衣に短い袴といういで立ちの美少女であった。
ぺこりとお辞儀をすると、濃茶の長い髪がそれにつられてふわりと舞う。
背はマルファスと同じくらい、顔もマルファスと同じくらいあどけなさが残っている。
先ほどの声からするとロレイだろう。
まあ、これまでも同じような事が何度もあったので、もはやこの程度では動じない。というより、何となくロレイはイメージ通りであった。
ビフロンの時がインパクト絶大すぎて、あれを超えるのは中々難しいであろう。
懐から二本の白い紐を取り出すロレイ。一本を肩にかけ、もう一本で長い髪を束ねる。肩にかけた方の紐で手際よく袖をたぐる。
その状態で顔を洗い始める。
こちらに振り向いたロレイは、俺とアグレアスの視線を集めている事が恥ずかしかったようで、いそいそと櫓に帰って行った。
入れ違いに素っ裸のビフロンがやってきた。
「ああっ、壮馬様ぁ! 朝っぱらからぁ、人の顔を見るなりぃ、ため息はぁ、無いんじゃないですかぁ?」
少し気分を害したという顔をビフロンはするのだが……
清楚なロレイを見た後のお前だぞ、そりゃあため息くらい出るだろ。
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