第18話 脱、砦!
田峯壮馬:女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」「攻城知識」
アグレアス:地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)
マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造II」「遠隔活動」、得物はモーニングスター
ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」、得物はサック
インプのロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」「偵察」、得物は弓(弓技)
ハーピーのピュセル:ロレイが拾ってきた
あれから数日間、ハーピーのピュセルはベッドの上で唸っていた。
ロレイが連れて来た時には瀕死の状態だったのだ。怪我が癒えたとはいえ、やむを得ないかもしれない。
ただ、瀕死の重賞と言っても見た目には血が流れているという感じでは無かった。だとすると、鈍器のようなもので殴打されたのだろう。確かに、ここにやって来た時に口から血が滴っていた。
その間もアグレアスたちは通常の営みを続けている。
インプのロレイは毎日のように洞窟の外に狩りに出かけるし、マルファスはソロちゃんのお手入れ、ビフロンは畑の手入れ、アグレアスは皆の食事を作っている。
俺はといえば、新たな家族であるピュセルの様子を見ながら、城の絵図を描いている。
本丸まで曲輪を作ってしまおうというアグレアスの意見を汲んで、朝から晩まで、ああでもない、こうでもないと修正をしている。
最終的に描いた城絵図は全部で五つの曲輪を備えた城となった。洞窟入口から順に一の丸、二の丸、三の丸、四の丸、本丸という感じ。
各曲輪と曲輪の間には細い回廊を配置、壁を挟んで反対側は畑の区画。
つまり入口である大手門から入って、一の丸、一の廊、二の丸、二の廊、三の丸という感じになる。
曲輪と回廊は門で閉じられるようにし、各曲輪の入口には虎口と呼ばれる小さな部屋を作る。本来であれば虎口は出口にも扉を設けるのだが、修繕やら日常生活を考え、出口の扉は設けない事にした。
一の丸の上が四の丸になるのだが、そこにも多聞櫓を設置。
入口から反対側、三の丸と三の廊の奥は岩肌となる。
一の廊の奥、二の丸の入口は虎口になっているのだが、入口とは反対側に高櫓を設置。高櫓は足の高い簡易の櫓で、そこから一の廊や二の丸に入り込んだ者を狙撃できるようにする。
そんな感じでマルファスに説明していったのだが、途中から壊れた置物のように首を前後に振るだけになってしまった。
「……すみません壮馬様。かなり早い段階で話を見失いました」
だろうね。なんとなくそんな気がしてた。だって顔が呆けてたもの。
「とりあえずこの絵図を元に、本丸まで大雑把に備えを作ってよ。で、今いる一の丸と一の廊、それと四の丸、そこだけ防御機構を設置すれば、そこは戦闘用の『曲輪』になるから」
まずは順番通りに一つ一つやっていこうと言うと、マルファスはわかりましたと返事して元気に櫓から飛び出して行った。
「う……うん……」
マルファスが城作りに出かけて間もなく、ピュセルがやっと目を覚ました。
「ピュセル。こちらは壮馬様です。死にかけていたあなたを助けてくださったんですのよ。良くお礼をおっしゃい」
俺の隣に椅子を置き、アグレアスがピュセルにそう促した。
「あ、あの、私、ピュセルって言います。た、助けていただきありがとうございました。か、川で魚を獲っていたら、き、急に変な人たちに襲われてしまって」
何かで殴られたようで、気が遠くなってしまい、そこからの事はよく覚えていないのだそうだ。
すると、きゅるるという可愛い音がピュセルから聞こえてきた。
顔を真っ赤にして恥ずかしがるピュセル。
「あらあら、ピュセルったら。ずいぶんと可愛らしい音をたてますのね。でも、そろそろお昼ですわね。わたくし、食事の用意をしてまいりますわね」
アグレアスが出て行くと、入れ違いにビフロンがやってきた。
目を覚ましたピュセルを見ていきなりがばっと抱き着く。
「うわぁ、ピュセルぅ、元気になって良かったぁ! 畑のぉ、水やりがぁ、大変なのよぅ。あなたもぉ、手伝ってよぅ」
ロレイの時のマルファスもそうだったが、こいつらには病み上がりの人を労わるという考えが無いのだろうか?
だがそんなビフロンにピュセルはにこりと微笑みかけ、わかりました言って頷く。
何となくだが、この子、これまでで一番『良い子』な気がする。
昼食はロレイの採取してくれた栗や胡桃といった木の実を砕いて、鹿肉にまぶして焼いたもの。それをアグレアスは切り分け皿に並べていく。
何故かそこから何枚かを小さな皿にとりわけて床に置いた。
それをじっと見ていると、ピュセルがその視線に気が付き、恥ずかしそうに見られたら食べづらいと言ってきた。
「あ、ごめん、ごめん。じゃあみんな、昼食にしよう」
トウモロコシの粉を水で溶いて焼いたトルティーヤに、鹿肉を乗せて一口頬張る。
改めて思うのは、香辛料と野菜の種が欲しいという事だ。
岩塩はかかっているものの、ほぼ素材の味のそれ。
ふとピュセルを見ると、顔を直接皿に付けて、むしゃむしゃ音を立てて食べていた。
……見るんじゃなかった。
「そうだピュセル。この洞窟さ、水が無いんだよ。お前のスキルで水源を探り当ててくれないかな?」
トルティーヤを頬張りながらマルファスがピュセルに言う。
ピュセルは口の周りにべったりと鹿肉の油を付けて、こちらに振り返った。
「い、良いですよ。し、食事が済んだら見てまわりましょう。こ、ここは山の中ですからね。お、温泉も掘れるかもしれませんしね」
にこっと微笑むピュセル。だが、口の周りは鹿の油でべったべた。
「俺も行くよ。場合によっては絵図に修正が発生するかもだからね」
その後、昼食を終え、櫓から一歩外に出て度肝を抜かれた。
なんとちょっと前までこの一の丸とその奥の畑、さらに先に動物を飼っている小屋しかなかったのに、だだっ広い空間が豪快にくりぬかれていたのだった。
しかも見上げると中々の高さのところに恐らくは四の丸と思しき高台が見える。
櫓など建物は一切無いし、何なら塀も無い。ただ単に高台が作られているだけではある。
だが、これまでのような洞穴の中の空間ではなく、はっきりと城のようなものになっている。
「す……すげぇよ、マルファス。気が付いたら城ができてるじゃん。俺たちの、俺たちだけの城が。よく頑張ったな!」
マルファスの頭を優しく撫でると、マルファスは目を細め、首をすくめて体いっぱいで喜びを表してきた。
そんなマルファスをピュセルは羨ましそうにじっと見つめていた。
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