第16話 死闘
田峯壮馬:女神から「命の実」を託された、スキル?「城郭知識」
アグレアス:地2水2火2風2、スキル「知識(命の実とリンク)」、得物は鞭(鞭技)
マルファス:地5水0火0風0、スキル「土木工事」「土人形創造II」「遠隔活動」、得物はモーニングスター
ビフロン:地1水2火1風2、スキル「陽光召喚」「宝石加工」「死霊傀儡」、得物はサック
インプのロレイ:地0水1火0風1、スキル「遠隔活動」「狩猟」、得物は弓(弓技)
大手門から入ると桝形虎口という塀に囲まれた狭い小部屋に入る。出口は向かって右手にしか無く、出口を出てもすぐに正面に塀がある。曲輪に向かう道は細い通路で、途中で一度折れ曲がっており喰違虎口となっている。
その喰違虎口の出口で敵の兵たちと一進一退の攻防を繰り広げている。
最前線はビフロンの繰り出す敵兵の骸骨兵、その後ろにマルファスの土人形ソロちゃん、その隣にアグレアスが陣取り、倒れた兵を鞭で引きずり出して後方のビフロンに渡している。
多聞櫓の中ではロレイが門に至る通路の兵を狙撃している。
戦いは非常に長引き、アグレアスにもマルファスにも疲労の色が見て取れる。
ビフロンはそろそろ限界が近いかもしれない。
このままでは……
そうは思うのだが、いかんせん俺には何のスキルも魔法も使えない。
……いや、ある!
俺には一つ大きな武器があるじゃないか!
攻城の知識という大きな武器が。
「アグレアス、マルファス、ビフロン、もう少しで敵は引くと思うから! もう少しの辛抱だから!」
俺の檄に最初に答えたのはビフロンであった。
明らかに疲れ切った顔を無理やり笑顔に変えて俺に微笑んだ。
マルファスもこちらを一瞥して小さく手を振ってきた。
アグレアスは「はっ!」と掛け声を発し、鞭を伸ばして敵をしたたかに打ち付けて答えた。
三人の士気が多少なりとも上がった事を確認し、櫓内のロレイの下へと向かった。
俺の姿を見るとロレイは無言で首を横に振った。
どんな状況なのかと窓から通路を見てみる。重装の兵の足下に打ち払われた矢が虚しく散乱しているだけ。悲しいくらい何の戦果もあがっていない。
「ロレイ、ここから俺が指差す奴を正確に狙撃できるか?」
俺の必死の眼差しにロレイは少し怯んだのだが、すぐに無言でコクっと頷いた。
そんなロレイに門前にいる面当てを上げている人物を指差した。
「あいつがわかるか? 兜から顔が見えている奴だ。あいつを狙い撃つんだけど、その前にわざと数本ひょろひょろの矢を撃ってくれ。相手を油断させたいから」
あの面当てを上げた重装兵は恐らく指揮官。面当てをしていると声が遠くまで届かないから上げているんだと思う。であれば、あれが狙撃できれば一時的にでも前線の兵は混乱するはず。
首を傾げながら、ロレイはひょろひょろの矢を一本、二本と重装の兵に向かって放った。
橋にすら届かず、その手前の堀に落ちる。
「どうやら敵の疲労は限界だ! 押せ! ここが正念場だ!」
面当てを上げた重装兵が大声を張り上げた。
案の定だ! あれが前線の指揮官だ!
念のため、もう一本だけひょろひょろの矢をロレイに撃たせる。その一本はやはり橋に届かず堀に落ちる。
「もう射手も限界らしいぞ! もう一押しだ!」
面当てを上げた重装兵がこちらを見て嘲笑う。
よし、引っかかりやがった!
ロレイを見てにやっと笑うと、ロレイも微笑みを返す。
「ロレイ! あのにやけ顔を正確に狙い撃ってやれ! ゆっくりで構わない。正確にだ!」
俺の指揮にロレイが再度コクっと頷き、窓の前に立ち、弓を構え矢をつがえてゆっくりと狙いを付け始めた。
ロレイの左側で外の状態を観察していると、ピュンという風を切るような音が耳元でした。
「ぐっ! ぐわあああ!」
ロレイの放った矢が指揮官の頬に深々と突き刺さっている。
しかも兜に当たって少し貫通した状態で矢は止まっており、指揮官はその場で仰向けに倒れ、ごろごろと転がって悶え苦しんでいる。
「……耳障り」
ボソッとロレイが呟く。
二矢目が放たれ、ちょうど顔がこちらに向いたタイミングで眉間を矢が貫いた。
それを見て何人かの兵が純白の全身鎧の王を守るように位置を変えた。
「ロレイ、次はあの純白の鎧の奴の角の部分を撃ってくれ。たぶんそれであいつらは引くはずだ」
そう指示すると、ロレイはゆっくりと弓を構えてじっと狙いを付けた。
だが中々良いタイミングが無いようで矢を放てないでいる。
一旦矢を戻し、一呼吸置いた。
敵兵からロレイに視線を移すと、緊張で肩を上下させていた。そんなロレイに再度やれるかとたずねる。
ロレイはふっと短く息を吐き、無言で頷いてから再度矢をつがえた。
全身鎧の王に視線を戻す。
先ほどまでうろちょろしていた兵が少し落ち着きを取り戻し、何人かが前線の指揮に向かっている。
ひゅん!
ロレイの放った一矢は、ほんの少しだけ弧を描き、純白の全身鎧の兜の角の部分に命中。
クワンという小さな鐘を叩いたような音が櫓にまで届いた。
全身鎧の王が尻もちをつく。ここまで音が響いたのだ、恐らく兜の中ではかなりの音がしたはず。
側近だろうか、王の周囲の重装兵が慌てている。こちらに盾を向けて警戒の姿勢を取っている。
王は腰を落としたままぴくりとも動かない。
王の奥の兵が面当てを上げて王の名を呼んでいる。
どうやら先ほどの音で王は気絶してしまったらしい。
さらにひゅんという風を切る音が鳴る。
王の奥の面当てを上げた重装兵の眉間に矢が深々と突き刺さる。
やるなあと言ってロレイを見ると、何だか楽しくなってきたようで悪戯っ子のような表情になっていた。
「者共一旦引け! 態勢を整える!」
ひゅん!
「ぐががっ!」
面当てを上げて後退を叫んだ重装兵の口にロレイの放った矢が突き刺さった。
重装兵たちが王を抱えて洞窟から逃げていく。
軽装兵を指揮するという事を完全に忘れ、重装兵たちが我先にと逃げていく。
そこからはまさに潰走という感じであった。
叫び声を発しながら軽装兵たちが無秩序に逃げて行った。
ロレイに向かって右手をひらひらさせる。
ロレイも意図がわかったようで、嬉しそうな顔で右手をこちらに向ける。
ロレイの右手をパチンと叩いて音を鳴らす。
二人で揃って広間に向かうと、アグレアスたちは互いに背を預けてへたり込んでいた。戦闘の疲労で三人とも息が荒い。
すでにソロちゃんは土隗に戻っており、ビフロンが操っていた骸骨兵のものと思われる鎧と槍がそこかしこに散乱している。
「みんなご苦労様。よく頑張ったね」
労いの声をかけたのだが、三人が三人ともこちらをチラリと見て笑みを返しただけで燃え尽きたようにぐったりしてしまった。
唯一声を発したのはビフロンで、「水ください」であった。
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