ある日の放課後
放課後の職員室の廊下前で、僕はある人に会っていた。
「そうか、やめるのか。」
弓道部顧問の飯島虎次郎が、僕の眼をまっすぐに見てきた。
「席だけでも置いておけ。」
「いえ、もうここ数か月は顔を出せていないんです。」
そういった僕は、退部届に署名した。
「今までお世話になりました。」
頭を下げると、飯島先生は溜息を吐いた。
♢
僕はその後、文芸部顧問の太田文子先生にも退部する旨を伝えた。
引き留めようとはしたものの、意志が固い事を感じ取ったのだろうか。
残念そうな顔で退部届を受理された。
♢
僕が部活動をやめる決断をした理由。それは他の部員を危険に晒すことのないようにするためだった。
聞いた話では、この高校の近くに不審者が多く目撃されているらしい。
彼らの目的は僕の体だろう。だから、被害は僕一人に抑えるために部活動をやめることにしたのだ。
しかし、この事が油断に繋がったのかもしれない。
下駄箱で靴を履き替えた後、正門から敷地外に出る。
この日は龍田と蕨田は先に帰っていた為、僕一人で帰る事に成ったのだが。
(ここから駅までは見通しのいい坂道だけだ。拉致される危険性は低いだろう。)
そして坂を下りだして5分ほどたった時、首筋に冷ややかな感覚が現れた。
後ろを振り返ったが、何も見えなかったため安心してしまった。
正面に視線を向けた時、大型バンの後ろ半分が視界の左側にうつった。
直後、左の方に引き込まれる重力加速を感じた。掴まれたのは左腕。
僕は逆にそいつの腕を右手でひっつかんで車の外に引きずり出した。
慌てる襲撃者、僕はそのまま振り返らず坂道を全速力で駆け下った。
相手は後進をかけて追いかけてきたが、このタイミングでパトカーが登場。
後ろから妙な、だが明らかに何かが壊れたような音が聞こえてきた。
しかし振り返ることはしない。逃げる。
♢
何とか駅の構内にたどり着くと、ベンチに座って電車を待つことにした。
(散々な目に遭ったな。これからは龍田と蕨田の二人と下校するしかなさそうだ。)
これからの生活を想像して、僕は陰鬱な気分になった。