新王と市民軍 王都灰燼 2
「でも、一番の実りは傭兵だろうなあ」
ギルド制みたいな商会や、会社みたいなのもある。
単独で自身を売り込むのもあるんだけど、傭兵はなんといっても“これまでの実績”を客観的に評価できる紹介人があってこそ。だからこそ、ギルド制のようなタイプの傭兵斡旋業者は、いつも独り勝ちしているんだという。
ほう、そういうのがあるんだ。
ヒルダさん曰く...
「帝国でも傭兵はよく使う。国軍は誰もが国を代表する兵士であれと、育成するから。国としては均一化した戦力と実力を把握したうえで、オールラウンドに使いこなせる。デメリットは、個々に違う伸びしろに対して長い時間を掛けて調整することにあるんで、コストが膨大である事。傭兵は、突出した戦力があっても使い捨てが容易であること...かな」
加えるなら、国軍は市民だから福利厚生に至るまでのケアが必要で、使いっぱなしは出来ない。
けがを負って除隊したのちに退職金なんてのも支払っているらしい。
ヒルダさん曰く、除籍された兵士にしてみれば一時金でしかないから、焼け石に水なのだという。
「国を守るために戦った人々なのだから、もう少し手厚く保護してもいい...とは、心で思っている。国家も潤沢な資金を国庫に蓄えてはいない。十分なケアとしてパッと思いつくのは、生活保護だけども。それだって多くの市民が納めた税金によって賄われる...それに報いる働きはしたけど、実際、何年も支援できるわけじゃ」
ヒルダさん、むせび泣きはじめました。
おーよしよし、いい子だねえ~
◇
落ち着きを取り戻したヒルダさんに後輩が付く。
心のケアということで。
ヒルダは、暗殺もこなす姫様だけども...
やっぱり武者修行してた頃となんら変わってないと、あたしは思う。
この子は純真だ。
「傭兵国家とか...やっぱりあるんかなあ?」
ミロムさんに胸を揉まれました。
あ、そこTKBです。
「何言ってんのよ、うちらのリーズ王国が、傭兵王の治める国家でしょうに!!」
激しいです。
激しくもみくちゃにされてます。
あ、あ、あ、あああ
ああ、あ、あああ、あああああ!!!
「姐さまを壊さないでください」
真っ白い世界の奥の方で、後輩がミロムさんに突っかかっていった感じ。
「ちちくり会うなら、他所でやれ」
って、ヒルダさんの笑い声。
あたしは...
果ててました。
そ、しなびれた茄子のような...それ。
◆
魔法詠唱者協会は、結局のところ退去してた。
ガムストンさんとその仲間たち以外はだけど。
先の損得では、協会も戦争ビジネスに行きつく。
いや、そうじゃない答えには行きつかない。
「秘密結社の仕業だとして、一体どれだけの楔を打ち込んでいるんだ?」
「そこです。盤石では無いにしても、不安定でもなかった政情を一気に瓦解して見せた」
ポール君の脇から、ライラ―が顔を出す。
あら、そこに居たの?!的なマスコットヒーラー。
「“妖精の粉”で姿写しさせた国王が、乱心したと刷り込むことで...動揺を操作できるんじゃないでしょうか?」
魔法使いらしい発想だ。
が、
「極めつけは、王子が父を殺した事実だろう。第一王子自身が、偽物と気付くこと...それが重要だった筈だ。策を張り巡らせた者たちにとっても、その上で走った者たちも誰が見ても驚愕でなくてはならない演出が欲しかったってとこじゃ」
盾兵のネイザーさんが、焚火に薪をくべる。
火の勢いがややます。




