戴冠式 内乱 17
「だからじゃ、相手は礎石たる部分を弾き飛ばしただけで...事を成し遂げた。これらの計画が最終的になんの目的のために練られたものかまでは、分からんが。はっきりしていることは、港町クリシュナムでの人体実験は、この日の為のデモだったということだ!!」
宗主としては、魔法の悪用に憤りを覚えてる一人だ。
こんなことをしでかして...とか、言っちゃう人。
まあ、それはなんとなく分からなくもない。
あたしも魔法使いだし。
そんな腕があるのに勿体ないと、思う一人だな。
うん。
で、疑問。
「コンバートル王国を混乱させることに、何の意味があるかですよ」
ガムストンさんとあたしの問いは同じ。
あたしは、この質問を帝国の兵であるヒルダに向けた。
◆
領事とその秘書官たちは馬車へ。
あたしと、ミロム、ヒルダに後輩は領事館の中庭へ。
領事館の人々は最後まで、ヒルダの身を案じてた。
マジで。
「良かったの?」
「何が」
ほら、やっぱり自分を勘定に入れてない。
「領事も含め“姫様~あ”って悲しそうに囀ってたじゃんよ」
こんな事言ってくれるのは、あたしだけだよアピール。
「...っ、ミロムにも改めていったが、私は帝国の姫である以前に帝国の将校でもある。その指揮官が、だ。指揮する海兵隊を残して我先に下がれる者か!! これは帝国軍人たる矜持である!」
だって。
いや、その前に案じた人がもう一人いました。
「じゃ、さ。こんなことして...何か徳でもあるのかな?」
呟きというか、
あれ、ぼやき。
神殿騎士との合流も含め、海兵隊の分隊が教会へ向かってる。
数千人超の教会側即応戦力が、帝国領事館サイドと行動を共にすることが出来れば、小国家の軍隊並みに拡大する。これで陸軍の特殊部隊とも連携が取れれば...
「ふむ、内戦で混乱した国に成らないよう、尽力しようと苦悩したものだが...こと、ここに至って考えてみれば、確かに何が出来るかと考えた方が、良いのだな?」
肘を抱えて、頬杖をつく。
彼女は深く、深く考えた。
草案の骨子は、帝国の背後でチョロチョロ動く小国の、混乱のみに終始したものだったから。
帝国の利益という点では全く触れられていなかった。
仮に武力の押し売りとか...
或いは、兵器の調達といったアプローチ。
いや、根本的に――そう、帝国にとって都合のいい傀儡政権の樹立とか。
考え出すと背筋が寒くなる。
甲冑を着ているせいか、汗ばんだ背にあたしの吐息だけでも...ヒルダはぶるっと震えてた。
バレてスリッパで叩かれた。
「ちょっと!!」
「めんご、めんご」




