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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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戴冠式 内乱 15

「事態は大混乱です。国王の戴冠なんてやってる場合じゃなくなったわけですが。市内は、()()を連呼する市民活動家によって、治安は崩壊し、王城以外のすべての行政機関や庁舎が襲撃の対象となりました」

 各国の大使館や領事館でも、国外退去を本気で考える段階にあるようで。

 駐留軍の展開を始めている。

 もっとも、ドーセット帝国の領事館も似た雰囲気のようだ。

「王国側が引き金を引かせたのかもね」

 ヒルダが甲冑に着替え始めてた。

 背中の留め具はひとりでは難しいから、ミロムさんが手伝っておられる。

 あ、あたし...着方が分からない。

「こういう時()、ぜんぜん使えませんね姐さんは」

 いや、面目ない。


「褒めちゃいないんですが」

 頭ごと隠してるあたしがある。

 後輩である“紅の修道女”の彼女は、国外脱出案を引っ提げてきた。

「ま、ここで燻っているよりかは、まだ安全かも知れません」

 とは言っても、直ぐではないらしい。

 女神正教会は、派遣している神殿騎士パラディンの召集と、聖堂騎士団の集合次第と定めてた。

 武王祭に参加してた子も、その戦力らしい。

 ほう。

「感心してないで!」

 ミロムさんも甲冑に身を包んでた。

 いや包み終えてて、胸元の肉の張りが...その、エロい。

「セルコットも、着替えるよ!」

 ちょ、ちょっと待って、待って。

 あたしは森の中に住んでたエルフのハーフの...ダークエルフで。

 その締め付けられれるのは、。ハーネスでもお断りというか。

 だらだら背中に変な汗が。

 じっとり脇汗も出て、

 うーん、下の方もジメジメする。

「着馴れないとか、そういうのは後にして。この胸当てひとつで助かる事もあるんだから!!! ここはぐっと我慢で」

 我慢?

 が、我慢...できるものなの~ぉ~

 締め付けられた。

 これは、ドレスの前に着せられた、拘束具コルセットと同じような締め付け具合。

「ちっ、胸になくとも腹に駄肉が!!!」

 ああ、言わないで。

「ぐふぅ、キッついわ...ねえ!!」

 よっこらせ~

 とか、聞こえてくる。



 拷問の時間は終わった。

 デブなエルフはいない。

 でも、お腹周りがちょっと緩いエルフはまま、居る。

 要するに。

 そうは見えないだけの着痩せしているだけ。

 外的な容姿に騙されてるんだわ。

 ちゃんとぷよぷよの腹を持った人はいるって話。

「領事館が用意できる兵力は?」

 ずっと踏み込んだ話だ、これ。

 後輩はヒルダに問う。

「帝国式使いは私を含め、10人足らず。約1個中隊(200人強)の海兵隊と、残りは文官たち30人程度。市井に散らした特殊部隊が50人くらいだけど...作戦決行時までに全員が集まれるかは、ちょっと不透明といったところかな? 特殊部隊の方も、王国内に散っている帝国市民の誘導などで手一杯だろうし、助力は期待できないとみるべきね」

 ま、ごもっとも。

 それよりも領事館が先に逃げる話でいいんだろうか?

「国家間の問題に発展するから、領事を逃がすことに抵抗を持たなくていいわ」


「いや、国家云々言ったら、ヒルダも」

 彼女は目を丸くしている。

 ああ、自分は勘定に入ってないのか。

 周りの武官だけでなく、その領事さんも国外退去の最優先は“彼女”だと目で訴えてる。

「なんで?!」


「いや、お姫様じゃん、よ!!!!!」

 やっぱり勘定に入れてない。

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