戴冠式 内乱 15
「事態は大混乱です。国王の戴冠なんてやってる場合じゃなくなったわけですが。市内は、革命を連呼する市民活動家によって、治安は崩壊し、王城以外のすべての行政機関や庁舎が襲撃の対象となりました」
各国の大使館や領事館でも、国外退去を本気で考える段階にあるようで。
駐留軍の展開を始めている。
もっとも、ドーセット帝国の領事館も似た雰囲気のようだ。
「王国側が引き金を引かせたのかもね」
ヒルダが甲冑に着替え始めてた。
背中の留め具はひとりでは難しいから、ミロムさんが手伝っておられる。
あ、あたし...着方が分からない。
「こういう時も、ぜんぜん使えませんね姐さんは」
いや、面目ない。
「褒めちゃいないんですが」
頭ごと隠してるあたしがある。
後輩である“紅の修道女”の彼女は、国外脱出案を引っ提げてきた。
「ま、ここで燻っているよりかは、まだ安全かも知れません」
とは言っても、直ぐではないらしい。
女神正教会は、派遣している神殿騎士の召集と、聖堂騎士団の集合次第と定めてた。
武王祭に参加してた子も、その戦力らしい。
ほう。
「感心してないで!」
ミロムさんも甲冑に身を包んでた。
いや包み終えてて、胸元の肉の張りが...その、エロい。
「セルコットも、着替えるよ!」
ちょ、ちょっと待って、待って。
あたしは森の中に住んでたエルフのハーフの...ダークエルフで。
その締め付けられれるのは、。ハーネスでもお断りというか。
だらだら背中に変な汗が。
じっとり脇汗も出て、
うーん、下の方もジメジメする。
「着馴れないとか、そういうのは後にして。この胸当てひとつで助かる事もあるんだから!!! ここはぐっと我慢で」
我慢?
が、我慢...できるものなの~ぉ~
締め付けられた。
これは、ドレスの前に着せられた、拘束具と同じような締め付け具合。
「ちっ、胸になくとも腹に駄肉が!!!」
ああ、言わないで。
「ぐふぅ、キッついわ...ねえ!!」
よっこらせ~
とか、聞こえてくる。
◇
拷問の時間は終わった。
デブなエルフはいない。
でも、お腹周りがちょっと緩いエルフはまま、居る。
要するに。
そうは見えないだけの着痩せしているだけ。
外的な容姿に騙されてるんだわ。
ちゃんとぷよぷよの腹を持った人はいるって話。
「領事館が用意できる兵力は?」
ずっと踏み込んだ話だ、これ。
後輩はヒルダに問う。
「帝国式使いは私を含め、10人足らず。約1個中隊(200人強)の海兵隊と、残りは文官たち30人程度。市井に散らした特殊部隊が50人くらいだけど...作戦決行時までに全員が集まれるかは、ちょっと不透明といったところかな? 特殊部隊の方も、王国内に散っている帝国市民の誘導などで手一杯だろうし、助力は期待できないとみるべきね」
ま、ごもっとも。
それよりも領事館が先に逃げる話でいいんだろうか?
「国家間の問題に発展するから、領事を逃がすことに抵抗を持たなくていいわ」
「いや、国家云々言ったら、ヒルダも」
彼女は目を丸くしている。
ああ、自分は勘定に入ってないのか。
周りの武官だけでなく、その領事さんも国外退去の最優先は“彼女”だと目で訴えてる。
「なんで?!」
「いや、お姫様じゃん、よ!!!!!」
やっぱり勘定に入れてない。




