戴冠式 内乱 13
ナジク伯爵の計画案には穴がある。
まあ本人が自らに最大限の利益追求で草案したものじゃないから、当然と言えば当然だろう。
元もは帝国が、この大陸に火種を植え付けさせるために起こしたものだし。
その草案に対して、秘密結社が何かしらのアレンジもしている。
そんな得体のしれないレールに、別の...
引き込み線みたいなもんを書き足したのだから、そりゃあ穴もでる。
いっそ、その穴を覗き込みながら...
『ポロリもあるよ』
とか、言ってみたいものである。
◇
伯爵の綻びは、この計画を企図したものが誰であるかについて調べなかったことだ。
引かれたレールに乗ってしまう。
とてつもなく気持ち悪くて、怖い発想だと思う。
次に、偽王をその時点でも偽王だと認識できなかったことだ。
伯爵自身も、死体を見て――「よく化けたものだ」って関心てたほどだという。
“妖精の粉”の効果は切れていた。
第一王子は、咄嗟のことだったけども...父親ではないという直感で、老翁を殺害した。
やっぱり親子だと、美談にもなるだろう。
が、人々には乱心したのは王子に見える。
だれも疑わないだろう。
「名籍ばかりに現を抜かし、貴族であるという立場に国家に殉ずるという精神さえも見失った...似非貴族などという輩はこの王国に不要!!!! 騎士爵を継ぐなど言語道断。まして、父祖の貢献を我がものとして振りかざす輩も同罪である」
ナジク伯爵の言葉は国父の言葉となる。
新国王は、成人しているんだけど...心神喪失により政務は執り行えないからと、宣言もされる。
戴冠式はあくまでも、パフォーマンスだとした。
まあ、けじめだろう。
「しかるに先代国王が叙任された爵位は、当代のみとする!」
貴族院から反発の声が上がる。
当然だが、その一方でしかないという声も上がる。
そういう声を、よく耳にするのは財務方からのものだ。
「いや、聞いて欲しい! 諸兄方...先代王が在位だった頃までに、約20名の伯爵以下の夫人方が後宮に上がり、奥の院では国家予算の実に9%もの浪費があった。これは例年の奥の院12%の経費に加算されていないものだ。しかも、土地さえ持たぬ名跡だけの貴族(男爵以下)は、500人を数えている。彼らには一時金としての報奨も年1回付与されていた...」
無駄な金だ!と、叫ぶ声が散見する。
声を上げたくても上げられない、貴族もある。
根回しをして、王より下賜された爵位ってパターンもあった。
こちらの方は、土地持ち貴族の家に嫁ぐ、婿入りするなどで優位に働くからなんだけど。
「うむ伯...いや、国父殿が申されるように、やや貴族の体を成していないようだが。それならば、土地をくれてやればいいのではないか?」
市民議員の商人ギルド長は立ち、対岸にある貴族各位へ頭を下げていた。
とりあえずは礼を尽くす。
市民と貴族の間に、伯爵が立っている。
まあ、時々水を勧められたり、
着席を促されたりしてた。
「確かに、確かに。...ギルド長には何かしらの献策が御ありのようだが...仮に身分は低かろうとも、男爵の位にある者に報奨金の代わりに、食い扶持は己の才覚で獲得せよは、だ。...結果的に、世襲制を認めてしまう。今の代は苦労して身代を立てるだろう! 要するに我が子には“親の苦労はさせられない”一心で、だ」
皆が頷く。
「それはいい、もはや美談にさえ聞こえがいいほどだが...騎士でもない子が、騎士爵を受け継ぐのにどれほどの違和感を持つだろうか?! 市民は..いや、市民をその者は守れるのか」
今、改革を断行中だ。
もちろん、一筋縄ではいかぬだろう。
だが...
成功すれば、本物の騎士に爵位が渡る。
似非ではない者に適正の位が与えられ、国が守られる。
「却下だ!」
誰とは特定できないところから、声が上がる。
「却下だ!」
再び、声が上がる。
これが木霊のように叫ばれるのにさほど、時間はかからなかった。




