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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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戴冠式 内乱 12

 第二王子の戴冠式を二日先だと国内に周知させた。

 狙いとしては、国内外の不穏な一味に対抗した処置。

 或いは、とにかく急ぎたい理由があった。


 一度はバラバラに成りかけた、国内の引き締めに掛かる。

 いや、現在進行形で不穏であるのも払拭したい意向があった。

 魔法詠唱者協会の地下施設――検視台の遺体が先ずは、頭の痛い問題である。

「で...騎士団は、この計画にどう? 関わっているんだね」

 尋問?

 拷問?

 死霊に出たり入ったりさせられた挙句、魂を擽られた騎士団のみなさんが()()に。

 訳もなく咽び泣く騎士の方も、ちらほら。

「ほら、いいな。話して楽になるんだよ」

 ガムストンさんの指が鳴る。

 ポキ、ペキ...

「偶然だ、いや偶然をも仕組まれた感もあるけど、偶然、通りかかった俺たちが聞いた話を...隊長に告げ口したんだ。したんだよおおおおお!!!」

 尋問用に飼い馴らしている幽霊たちが、

 騎士の腸を掴んで引っ張り出そうとしたり...

 出たり入ったりしてる。


 幽霊これが中に入ると、激しい悪寒を全身で感じるし。

 出た瞬間にも、鳥肌と吐き気に襲われる。

 おそらくはアレルギー反応に似たものだろう。

「侍医長殿、検視の結果はこのような次第となりました」

 協会の宗主として報告書とともに、尋問での調書も手渡しておく。

 彼らの方も、貰って得になることはなく。


 むしろ...

 危険が増したような。



 帝国が草案した“コンバートル騒乱”。

 どこから漏れたのかが気になるところだ。


 が。


 それよりも、王国を掌握したいという欲が生まれたのは......誰もが同じということだ。

 そこに諫める者はいなかった。

 国王の死体は近衛兵の中でも、口の堅い者たちで始末した。

 生前こそ玉体が。

 と、人間の盾にもなった騎士たちだけども。

 躯になると、彼らはそれを主君とは思わなくなってた。


 まあ、忠誠心()()()こんなものかも知れない。

 為政者は、国を富ませるための装置でしかない。

 その国というのも、本来ならば...


 民ではなくてはならないんだけど。


 仕える騎士や貴族たちが、

 と民よりも大事にしない奴は~

 って考える者も少なくはない。

『俺たちは特権階級!! 生まれながらにしての〇〇公と、呼ばれるべき畏れ多き存在だ!!!』

 とか...考えてた。

 叙任された騎士爵も、平時においては職業軍人と大差なく。

 一代消滅制度もなくなって、騎士爵に生まれた子も騎士爵と名乗ってた――騎士でもないのにだ。

 そんな、コンバートル王国に未来はあるのだろうか。


 否!


 ナジク伯はそれを()とした。

「改革は必要だ! 先の御前会議でも、王に献策し諫言もして諭したものだが、義父としての礼はとっても家臣としての重用は無い。いや、そう示すことで自身の判断力低下を胡麻化している。これが、いや、およそ事実だとするのならば...王に成りすました者を利用して、国家の未来を救わねばならぬ!」

 伯爵としての立ち位置は、こんな感じ。

 私利私欲?

 あっても口には出さないでしょ。


 それこそ狸、化かすのもお得意って。

 近衛騎士団長を感服させると、主導権はすっかりナジク伯が執った。

 第一王子も父親譲りの公正な生き方を執って、伯爵と距離を置くようになってた。

 邪魔だったので、それとなく偽王の脇へ追いやった。

 対外的には皇太子と目されているから、都合がいい。


 第二王子は、勿論、貴賓席の横に伯爵が来る地へ降りて戴く。


 第三王子は...

 市井に近い席で――暗殺させればよいと。

 いずれ下手人なる者を捕まえ、これに途方もない罪状をかぶせて処刑すれば...

 国がまるまる自分たちの手の中に転がり込むと、考えたのだ。

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