戴冠式 内乱 12
第二王子の戴冠式を二日先だと国内に周知させた。
狙いとしては、国内外の不穏な一味に対抗した処置。
或いは、とにかく急ぎたい理由があった。
一度はバラバラに成りかけた、国内の引き締めに掛かる。
いや、現在進行形で不穏であるのも払拭したい意向があった。
魔法詠唱者協会の地下施設――検視台の遺体が先ずは、頭の痛い問題である。
「で...騎士団は、この計画にどう? 関わっているんだね」
尋問?
拷問?
死霊に出たり入ったりさせられた挙句、魂を擽られた騎士団のみなさんがここに。
訳もなく咽び泣く騎士の方も、ちらほら。
「ほら、いいな。話して楽になるんだよ」
ガムストンさんの指が鳴る。
ポキ、ペキ...
「偶然だ、いや偶然をも仕組まれた感もあるけど、偶然、通りかかった俺たちが聞いた話を...隊長に告げ口したんだ。したんだよおおおおお!!!」
尋問用に飼い馴らしている幽霊たちが、
騎士の腸を掴んで引っ張り出そうとしたり...
出たり入ったりしてる。
幽霊が中に入ると、激しい悪寒を全身で感じるし。
出た瞬間にも、鳥肌と吐き気に襲われる。
おそらくはアレルギー反応に似たものだろう。
「侍医長殿、検視の結果はこのような次第となりました」
協会の宗主として報告書とともに、尋問での調書も手渡しておく。
彼らの方も、貰って得になることはなく。
むしろ...
危険が増したような。
◆
帝国が草案した“コンバートル騒乱”。
どこから漏れたのかが気になるところだ。
が。
それよりも、王国を掌握したいという欲が生まれたのは......誰もが同じということだ。
そこに諫める者はいなかった。
国王の死体は近衛兵の中でも、口の堅い者たちで始末した。
生前こそ玉体が。
と、人間の盾にもなった騎士たちだけども。
躯になると、彼らはそれを主君とは思わなくなってた。
まあ、忠誠心なんてこんなものかも知れない。
為政者は、国を富ませるための装置でしかない。
その国というのも、本来ならば...
民ではなくてはならないんだけど。
仕える騎士や貴族たちが、
と民よりも大事にしない奴は~
って考える者も少なくはない。
『俺たちは特権階級!! 生まれながらにしての〇〇公と、呼ばれるべき畏れ多き存在だ!!!』
とか...考えてた。
叙任された騎士爵も、平時においては職業軍人と大差なく。
一代消滅制度もなくなって、騎士爵に生まれた子も騎士爵と名乗ってた――騎士でもないのにだ。
そんな、コンバートル王国に未来はあるのだろうか。
否!
ナジク伯はそれを否とした。
「改革は必要だ! 先の御前会議でも、王に献策し諫言もして諭したものだが、義父としての礼はとっても家臣としての重用は無い。いや、そう示すことで自身の判断力低下を胡麻化している。これが、いや、およそ事実だとするのならば...王に成りすました者を利用して、国家の未来を救わねばならぬ!」
伯爵としての立ち位置は、こんな感じ。
私利私欲?
あっても口には出さないでしょ。
それこそ狸、化かすのもお得意って。
近衛騎士団長を感服させると、主導権はすっかりナジク伯が執った。
第一王子も父親譲りの公正な生き方を執って、伯爵と距離を置くようになってた。
邪魔だったので、それとなく偽王の脇へ追いやった。
対外的には皇太子と目されているから、都合がいい。
第二王子は、勿論、貴賓席の横に伯爵が来る地へ降りて戴く。
第三王子は...
市井に近い席で――暗殺させればよいと。
いずれ下手人なる者を捕まえ、これに途方もない罪状をかぶせて処刑すれば...
国がまるまる自分たちの手の中に転がり込むと、考えたのだ。




