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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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戴冠式 内乱 7

 ドーセット帝国がドライな方針を貫くのは、この大陸に関わる()()がないからだ。

 かの帝国がある大陸の方が大きい。

 もうちょっと卑しい目線で、事実を告げれば、だ。

 もっと大きな土地が、目の前に広がっている。


 故に。

 コンバートル王国をはじめとした大陸には、ちょっかいを出そうという気にならないのだ。

 表向きにはだ。

「賠償金って?」


「最初の取り決めでは数年程度だったみたいだよ」

 詳しく知らないけどと、つづけた。

 が、出し渋ったあと元本それがどうなったかは、当事者は知っているのだろうか。

「支払いは年を追うごとに細くは...なったようだけど。分割手数料分は、払ってくれてたみたい。いや、さ...支払いが苦しいのならば協議を持ち掛ければいいんだよ。そもそも、帝国籍の民間船を襲撃してタダで置かれる筈もないのだし。プライドとか言ってる場合じゃないじゃん?」

 王国の生産力が低下したという話は聞かない。

 ただ、他国に賠償金を払いながら...。

 軍備の増強をしてたとも考えられない。

 じゃ、どこから軍備の拡充がなされてるのかって流れたか、だ。



 ヒルダの自室脇に武器庫がある。

 あたしの装備もマネキンに着させて、飾られてた。

 ミロムが業物でもない、なまくらの剣を眺めてる――それ、あたしのだ。

「未だ、こんなんで?」

 冒険しているのかって問うてきた。

 無言でうなづく。

 試合に出るから持ってきたけど、結局、自分の獲物を使うことはなかった。

 後輩くれないが借りてくれた宿から、こっそり持ち出した装備。

 普段は、寝袋と一緒に丸められて仕舞ってある。

「これ、卒業試験の...」


「バランスのいい剣って、なかなか見つからないからね。街に行けば...」

 ミロムが首を傾げた。

「セルコットは、街行かないじゃん」

 あたちは、ミロムの顔をみつめる。

 彼女もこっちをじっと見てるんだけど――なんか、ね。なんか笑うしかできなかった。

 あれ?

 一つの街に縛られることが無かった頃は、工房を覗くことが常だったような。

 不思議だ。

 あれって、いつのことなんだろう。

「こんなトコにいるってことは、もう、出る準備が整ったのか!!」

 あたしは筋金入りのニートだ。

 しかも給金さえ貰えれば、このまま領事館で働いちゃっても、全然かまわないと思っている。

「なんか良からぬことを考えているようだが、軍属が多数、武官として派遣されてるから...火の玉娘の居場所は、何処にもないからな。間違っても売り込みに行くんじゃないぞ」

 って言われるのが、もう少し早かったら。

 あたしの苦笑が顔に浮かび上がる。


 セルコット・シェシーの名は、帝国にもやや微妙な伝わり方で有名だ。

 あたしの詠唱する“火炎球”は炎属性の火蜥蜴サラマンダーさえ食べ頃にするという。

 食べた事なんてないけど。

 そういう宣伝になってる。

 誰がしたんだろう?


 で、


 間違われるのが――「いやあ、料理人は間に合ってるから」だ。

 傭兵か、冒険者でバイトを...

 あしらわれる。

 誰かの吹聴のせいでもある。

 これの“ドラゴンも、手頃に調理する火の玉娘”ってのが、いくつかの仕事があたしの指の間から、零れ落ちていった。

 いうなれば、だ! 奪われたんだわ。

「売り込んだけど、丁重に断られちゃった」

 涙目。

 協会からは未だ、前金しかもらってない。

 仕事の内容は、例の“妖精の粉”追跡だけど。

 王都に入ってからは、そんな噂はとんと聞かない――ドーセット帝国の領事館でも、首は横に振られたのだ。スパイ活動だってしているだろう帝国が知らないのだから、完全にお手上げである。

 摘んだあって思ったんで。

 バイトしようと思った。

「ふ~ん」

 ヒルダさんの部屋着は、ヨレたシャツに短めのホットパンツ。

 足元は裸足という、姫に見えない姿。

 姫には見えないけど、平民でもない。


 シャツは、シルクかなあ。

「バイトね、そんなにお金欲しいの?」

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