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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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戴冠式 内乱 6

 ラグナル聖国の玄関都市として、辺境公・藩主ジャーン・ジャシーィはその名跡を、幾代にも重ねてきた民である。また、聖国の譜代として絶大な信頼も勝ち得てた――コンバートル王国・第11代王が来訪するまでは。

 聖国祭とか、()()()()()()()の生誕祭とも呼ばれる、国教の式典に招待された各国の王族たち。

 神秘の国・姫巫女を一目見ようと、大陸中の人々が押し寄せたその席で、11代王はジブリィの姫と恋に落ちた。

 いや、それは違うか。

 王の手付きにされたんだわ。

 しかも、無理やり。


 彼女の兄で、藩主だったジャーン・ジャシーィ21代目の怒りは、怒髪天に達する。

 まあ、彼女には、幼いころから夫婦になる約束が交わされてた。

 聖国・執政官の子息だったんだが。

 当然、破断で白紙。

 運が悪いことに、彼女は、王子を生んでしまった。



「老翁さんの過去はこの辺にして...あなたは、国王に成りすました訳ですよね? では、単刀直入にお聞きします、王はどこで殺したのですか!!!!」

 教授はざっくり切り込んだ形。

 内心はみんな、思ってたこと。

 国王に成りすますなら、()()もういない。


 近衛騎士団の態度は物語る。

 そうまでして、偽王を隠すのなら...

「検視はもう十分だ!」


老翁かれは未だ、答えてませんが?」

 真相を探る方と、探られたくない側の攻防。

 行きつく先は――武力衝突だろうか。

 騎士らが柄に手を掛けたところで、

 肩越しに影が差す。

 背中に灯があったから、己の身をも覆うとなると...

 恐る恐る振り返り、

「まあ、その辺で止めときなって」

 怪我するよ?

 大鎧の巨漢が立ってた。

 天井に被った兜が擦れるようで、首を斜めに傾けて眼光だけが、ギラギラと光ってるように見えた。

 ちびりそう!!!


 わかる、わかる。

 あの人の地下に入った時の窮屈そうなの表情がもう、めっちゃ怖い。

「う〇こ、でそう...」

 とか、言っても笑えないジョークが定番で。

 それも合切で怖い。

 まあ、いろんな意味で怖い。


 ゾディアック・マーシャルアーティストのガムストン・レイといえば、リーズ王国でもタダ飯くらいは食える知名度だ。ま、その代わりにだけど、名のある武芸者から執拗に狙われるんだけどね――そりゃ、ひとつお手合わせを、とか。

 果たし試合ですよ。



「――で、この爺さんが? 齢50ちょいの国王さんに化けてた...と???」

 悪い冗談はやめて、よし子さん的な言い回し。

「ちがう、ちがう...それを言うなら“悪い冗談はよし子さん”だ!!」

 何の訂正?

 宗主を覗き込む死霊。

 じじい同士に親近感でも、湧いた?

「あの」


「で、どこに埋めたんだね?」

 問い詰めると、騎士団を指さす。

 当の本人たちからは『裏切者!!』なんて声が飛んだけど。

 近衛騎士団すべてが関わっているとも、思えない。

「じゃあ、さ。生きてる君たちにも問うんだけど?」

 魔王使いの巣窟では、今日も尋問にむせび泣く、誰かの声が木霊してた。

 それは或いは、死霊の声かもしれない。



 王国内で、第二王子とナジク伯爵、近衛騎士団長と対抗できる人物は少ない。

 彼らが官軍になるのは必定だから。

 いや、早晩にも第二王子は即位式を済ませて、新王へと位を変えるのだろう。

 新王は病がちとして、国父となった後見人の伯爵と団長の専横政治が始まる。

「ドーセットはどうするの?」

 ミロムは、あたしの代わりにヒルダに問う。

 膝の上には幅広の大剣があった。

 手入れの手を止めさせたのだけど...

「どうもしないと思うけど、この領事館は完済を見届けるために置かれてる。先の王が渋ってきた賠償金、耳をそろえて差し出すってんなら、その時点で引き払ってもいいかもね」

 すげぇー、ドライじゃんよ?

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