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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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戴冠式 内乱 5

 王宮から離れざる得なかった腹違いの末弟は――父王から認知はされても、兄弟たちからは認められることもなく、市井に降らざる得ない状況に陥った。

 平民出身の母の()()でもあるし。

 豪商とか豪農などの後ろ盾もないからってのもあった。

 彼を受け入れたのは、婿が欲しかった王宮占術師の家である。

 まあ、今から思えば、だ。

 王族の血統が欲しかったんだと思われる。


 腐っても、だ。

 庶子とはいえ高貴なる王家の半分。

 もっと薄くなるけど、系譜に〇〇代国王の末弟が連なるのだから、名誉であることは間違いようない。

 誰かに自慢することがあれば、だ。

「俺のじいちゃんは、王様の弟なんだぜ!」

 って感じだろうか。

 これに乗るとしたら、

「おお! すげえじゃんよ?!!!」

 ってな、盛り上がりになる。

 酒場やスナック、ホステスさんのいるガールズバーなんかでは人気ものだろう~ねえ。


 でもね、

「それはお前のじいちゃんが凄いんだって話で、お前じゃないなじゃんよ?」

 とか、空気を読まない子も確かに、ある。

 そういう時は、先ず。

 殴っちゃおう!!

(脳筋かっ!


 いやいや、いあ...今のは忘れてくれ。


 えっと。

 先々代王の正室は、塔に幽閉されがちだった。

 原因は、今、降霊された翁のせいである。

 本人はその気も、覚えてもいない。

 ただ、ちょっと気まずい憧れを口にして、寂しそうな顔に微笑みを灯したかったとか。

 こいつの無自覚から、はじまった()()()()()である。



 降霊した霊の傍に立つ教授。

「あなた、妖精の粉を使用しましたね?」

 死霊が近衛騎士団らに目を向けた。

 当然彼らは、そっぽを向いて鼻歌である。

 もう、分かり易い子たちだなあ。

「ああ、使った」

 掠れて声が出ないかと思ったら、

 意外に流暢な、北方地方の訛り入りの公用語で喋ってた。

 本人も驚いているようだ。

「上品な響きですね。王都ここから北方となると...ラグナル聖国ですか。老翁は、そちらのご出身ですか?」

 教授の問いには困惑しているようだ。

 白い母の手で引かれて、

 王都に来たのは5つの頃。

 それよりも昔となると...さすがに覚えてはいない。

「この方の母君は、市井の方としか」

 そうなると、解せない。

 王国の公用語は、耳で聞く限りは鼻にかかった感じで、巻き舌を多用する。

 舌足らずだと、何喋ってんだか意味不明になるんだけど。

 高貴な人たちは、そのコンバートル語ってので意思疎通してた。


 しかし、ここで一つ。

 市井の人たちは違う。

 鼻にかからず、抑揚もないし、巻き舌も使わないで喋ってる。

 若干、()()()()()調が粋だとか言ってる雰囲気か。

 だから、市井で育ったんなら...

 老翁も、市井訛りが出てくるはずなのだ。

「ラグナルも、国境付近はコンバートル語でしたよね? あの地域で大きな都市というと...」


「ジブリィ、ジブリィって町が大きく、藩主ジャーン・ジャシーィ殿が納めている辺境領ですね!」

 侍医長のどや顔。

 私だってこの位は、って胸だって張ってた。

 婆さんは、そのまま大人しく。

「読み書きとなると、手習いは最低限受けられてた...」


「何の話をしている?」

 死霊の翁も狼狽えてる。

 死体の見分は、教授の弟子たちによって終わってるから。

 あとは降霊した死霊との面談のみである。

 彼がどこまで覚えてるか...

 ではなく、

 何をしたかについて問いただす準備に入ってた。


 そう、


 何をしでかしたのか。

 そのことに焦点を当てる。

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