表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
8/489

港街の悪い噂 5

 翌日目覚めると、天蓋付きベッドの柵四隅から伸びた革ひもで固定されてた。

 大の字のマッパ。

 辛うじて武士の情けに、股下のデルタゾーンへシーツが掛けられてある。

 そうだと分かったのは――天蓋の天井にある鏡でだ。

 ああ、なんとも情けない姿であろう。

「こりゃ、貰い手は当分...ねえな」

 って独り言のつもりだったけど。

「大丈夫ですよ! 姐さんの妻でも夫でも、私が努めますから問題無しです!!」

 頭の上から後輩の声。

 ったく、未だいたんか...お前は!!

「居ますよ、昨晩はあんなに激しく求められるなんて」

 覚えてねえよ。

 気絶させた挙句に、麻痺毒たらふく沁み込ませてたじゃねえか。

「そうでした?」


「...ったく」

 解くの待つしか...

「解きませんよ。トッド先輩が定時連絡するっていうんで...先輩を独り占めしていいって許可貰ったんで」


「は?」

 要するに、気絶中の看病を買って出た後輩は、だ。

 かこつけて()()()をつまみ食いしたのだという。

 で、その第二ラウンドがこれから始まるのだ。

 おいおい。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 アサシン君の報告方法は彼の所属する、アサシン教団という組織が挟み込まれる。

 この教団は、魔法詠唱者協会が出資しているグループ組織でもあった。

 収支報告では...確か本体をも上回るんだっけか。

「ガムストンさん」

 教団の奥にある修練場で汗を流す男がある。

 手練れの暗殺者を相手に、多対ひとりって感じの立ち合い。

 トッドの顔を見て、眉根だけ上げて応答した。

「どうだった?」

 というのは、あたしの()()

 戦力としては十分に使えると判断されている。

 が、探索任務とか、そっちの評価は未知数だった。

「本当にひとりで盗賊団を潰してたんですね。解き放った途端に見失ったんで、こっちも面喰いました。()の彼女が出て来てくれなかったら...査定ができなかったと思いますね」

 落ちてきたタオルを腕に絡める頃には、稽古相手は床で蹲っている状態へ。

「マスターが不甲斐ないと思われるので、お手柔らかにお願いします。弟子たちの心は折らないでくださいよ? ガムストンさん」

 格闘、白兵戦主体の彼の前で組手は下策。

 とはいえ距離があっても、飛び道具を使わない訳ではないので、やはり無駄に下がるのも下策だ。

「“妖精の粉”の方は?」

 小男と巨漢の構図は珍しくはない。

 その小男は裏の世界で、指折りの暗殺者である。

 小男の弟子たちさえ考える――マスター同士が戦ったら、誰が勝つのかと。

「お前たちは技を磨け、そんな無駄なことが考えられないように、な」

 と、弟子の足元に小刀くないが投げ込まれる。


「いいのか?」


「何がです...」

 ややムッとした表情を、ガムストンに返して見せた。

「お前が()()だと伝えなくて?」

 肩を竦め、

「止してください。火炎球ひとつクリティカルヒットで、幾重層ものダンジョンを吹き飛ばした挙句。地表に巨大なクレーターを生じさせたエルフの前に、誰が最強なんて無意味じゃありませんか?」

 ガムストンは天井を仰ぎながら、

「違いない、些細なことだな」

 と、零した。

 怪奇な現象が起きているのは、いずれも街の再開発地域から以南になる。

 冒険者ギルドの行方不明者も街の倉庫区で、消息を絶ったとみられていた。

「真相といってもレベル的には、騒がられると不味いって雰囲気レベルじゃないか。感触的には彼らも薬の実験台にされたようにしか見えん、な」

 ギルドを通じて更なる手練れが送り込まれるよう、わざと泳がしてた。

 頃合いを見て拉致したと考えた。

「冒険者ギルドに警告を」


「いや、あくまでもその可能性だ...下手に動いたら、意図の読み間違いで地下に潜られるとも」

 最悪は、資金と人を提供してた領主を差し出して、有耶無耶にされる間違いを犯すことだ。

 協会が絡む以上は成果が大事なのだが。

「紅の修道女さんにも期待ですね」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ