武王祭 騒動 34 帝国領事館 5
「ま、本国から次の命令が無いから、領事館の客間、食堂、売店に...応接間とか、娯楽用のクラブハウスへ自由に移動することが出来るけど。とりま、飲み食いしたらお金は払ってね?!」
まあ、当然、あたしからは『えー!!!』って叫んでみた。
ヒルダのこれまた“面倒だなあ”って表情が、あたしには恐怖に見えた。
「ま、そういう反応は推測してた」
「は、はあ」
「なんで、こっちの予想通りに振舞ってくれるんかねえ? もう少し捻りの利いた反応が見たかったよ。だったらば、だ! セルコットを壁まで突き飛ばして、壁ドン...はい、チビらして耳でも噛みながら、さ...俺のものに成れば好きなだけ喰わせてやるぜとか、言えるんだが?」
ヒルダさんの目がマジだ。
ミロムに対しての挑発だってことは百も承知。
あたしを背にかくして、ミロムが威嚇してる。
「まあ、そういう遊びもできる...ミロムもそっちの気があるとはねえ。おっと、私は残念ながら百合じゃない。ち〇こは太さと長さ、これが大事! まあ、多少の柔らかさには目を瞑るけども...短いのは物足りないから、初めから却下なんだわ」
ミロムの警戒心は解かれてないけど。
ヒルダが歩み寄って、
「大丈夫、自分でも持ってる穴に興味なし!!」
ってことで決着する。
◇
「まあ、なんだ...お前の指、しょっぱいな?」
ミロムの指先を
ヒルダが舐めてた。
「領事館の客間を占領しててもいいけど、ベッドの上でだけにしてくれよ。ハウスキーパーを困らせないでくれ。どこぞの獣のように、トイレや浴室で処かまわずに貝合わせに、潮吹き、放水は迷惑だから」
って傍から、
あたしの噴いた水たまりに、ヒルダがはまってた。
別にやることが無いと、
ミロムと目が合っただけで、こうムラムラ来る。
欲求とは、突然に来るものだ!!
「そんな哲学的でもないだろ」
「じゃ、おしっこと同じで生理現象!!」
飽きられながらも、
「ま、それでもいいよ。爪の先が短くなってる時点で...ああ、こいつらお盛んだなとは思ってた。けしかけるような事は言ったけども。この部屋を磯臭くしろとは言ってない!! ヤルもうちょい健康的に換気もこまめにしてくれよって話だ」
あたしの指も、ヒルダが舐めた。
納得したように――うん、しょっぱい。
◆
コンバートル王国は薄氷の上を、かろうじてという絶妙なバランスで踏ん張ってた。
お飾りでも玉座に就くことが許された、第二王子の存在がこのバランスをわずかに支えていたのだ。
こんなにも脆弱な体制になるとは、先の国王でさえ考えなかっただろう。
「戴冠式だけは...逃げ回ることはできない」
王妃の父、第二王子の祖父となるナジク伯爵と、近衛騎士団長が雁首揃えた部屋には体を震わせる小男がある。
兄と弟を一瞬で失った者だ。
自らの手で下していれば、多少の度胸も付いてただろう。
が、彼は対人恐怖症のどん底にあった。
「どうにか、身内で内々に...」
「そんな戴冠式があるものか! 百歩譲っても国民の主人となるものが、国人を恐れるというのは滑稽すぎる。お前は座ってるだけでいい、その頭上に王冠を載せるだけが仕事だ!!!」
項垂れた男も頷いた。
と同時に、鬱になる。
「やっぱり」
「それでもヤレ!!」




