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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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武王祭 騒動 28 あたしとヒルダと... 3

 遠巻きに眺めてた、意識の薄らぐ翁の顔に絶望が現れる。

 これで戦争が回避されると――恐らくは、自分の中で解決を見てた瞬間だったのだろう。

 そして、安心して逝けると。


 ただ、それもつかぬ間の夢で終わる。

 第一と、第二の王子たちには()()()という、特別な者たちの手垢にまみれている。

 とてもクリーンじゃないし、王家の権謀術策にも積極的に関与している節があった。

 いや、精通しているだろう。

 秘密結社きょうりょくしゃたちからの情報によって、そう、認識している。

 だから、敢えて...

 翁は、余命のすべてを投じて、

 このような暴挙に出たのだ。

 崩れる仮初の姿と、

 薄れゆく意識の中で――第一王子も、また。

「天誅!!」

 って他の誰かに、殺害されてた。

 いや、あれは「王殺しに成敗を...」だった、か。



 燕尾服姿の少女がころころと笑う。

 ヒルダの行動にだ。

「帝国の治安部隊か...手際が良すぎて読み易い。第三王子が手元にあれば、これを御せばよく...無くとも計画に支障きたさない、団主は何処まで先を読んでいるんでしょうねえ~」

 マディヤもほくそ笑む。

 3人は、この会場を見渡せる位置にあって――

 成り行きに任せたままにしている。

「どうして積極的に参加しない」

 ...は、和服のアグラからのもの。


「介入する必要がない。いや、これは正確な返答じゃないな、ぶっちゃけると...介入する必要性いとまがないくらい、勝手に進行している。俺たちは、見ているだけでいい。手を貸せるときは、ま、今後...そういう場面に立ち会えるかは不明だけども、な」

 最高指導者の描いた餅の出来栄えがいい。

 この絵に何を添えられようか。

 まあ、そんなとこだろう。



 矢を射かけてきたのは、衛兵様です。

 ま、まってちょっと混乱してるけど、ちょっと待って。

「セルコット!! 早く気持ちを着切り替えな!!!」

 ミロムのと比べると、やや筋肉質だってのはわかるけど。

 うん、いい匂いがする。

「私を吸ってやがる、こいつ...」

 ヒルダのご機嫌を害したようで、

 あたしはミロムの方へ丁重に返された。

 うーん、なんでかなあ。


「姐さま、浮気はだめです」

 後輩があたしの腕にとりつく。

 ヒルダから突き返されたんだから、次の主導権争いに、彼女たちが名乗りを上げたんだけど。

 ま、後輩は...ちょっと。

 気持ちよくさせてくれるんだけど。

 一方的に潮吹くの、あたしなんだわ。



「抵抗はするな! キサマ達には聞きたいことがあるからな!!!」

 とうとう、

 円形闘技場の通路から出てきた、兵士たちに囲まれたところです。

「こ、これは誤解が」


「王子を斬ったのはお前たちであろう?!」

 目撃者も多数ある。

 運んできたあたしも、間違いなく襲撃者の一味のように思われてる。

 だって、ラグナル法国の最高指導者を、暗殺したんじゃないかって思われてるのも、()()()だし。

 こりゃ、いいところ何もないようですなあ。

「まてまて、私と以下3人には外交官特権がある!!」

 いつから?って、つぶやいたのは内緒。

 ミロムの咳払いと、後輩の平手であたしは黙らされる。

 犬歯で、口の中切ったみたいだけど。

 そこは泣き寝入りするわ。

「外交官だと?!」


「ドーセット帝国の外務部特使、ヒルダ・アインバックス。これでも、第13継承権保持者である!!! 故あって、士分に扮して会場にあったが、これは私の趣味である。師であるホーシャム・ロムジーからも、道中の苦労は買ってでも...と、言付かっている故」

 ほう、継承権か。

 ふむ、それはいったいどこの継承権で?

「うっさいなあ~ 今、ヒルダさんが兵士さんの“こっち来い”って要求を突き放してるトコじゃないですかあ!!」

 後輩があたしを邪険にする。

 あ、ミロムからもにらまれた。

「...っ」

 ヒルダも舌打ちした?

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