表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
70/538

武王祭 騒動 26 あたしとヒルダと... 1

 あたしは少年を担いで逃げてた。

 貴賓室からぐるっと回るように、いや、観客を盾にでもするような真似で。

 これは不本意だ。


 不本意だけど仕方がない。

 だって、あたしの腰にある筈のブロードソードは、自業自得で破損中。

 踏み台にしてガタついて、早々にオーバーホールに出している。

 こういう試合に成ると、鍛冶師のおいちゃんたちも都の店閉めて、出張所なんてのを開いてるもの。

 ひと試合終えるごとに、防具や武具の手入れをしてくれる。

 あたしみたいに壊す奴が居るからだ。


 で、


 2本あったショートソードだって、今しがた...そのひとつを、盛大に溶かしたところ、だ。

 手持ちの武器と言えば、残り1本のショートソードのみ。

 いやあ、こうなると元来の貧乏性ってのも、でてくる。


 あたしが、金に煩いのは...

 その()()も、あるんだけど――って、間合いを持たないヒルダからの斬撃が容赦なく飛んでくる。

 全く...

 っ本当に手加減ってのを知らなすぎる。



《手加減してやってるのに...ちょろちょろと、何だって見ず知らずの王子、抱えて逃げてくれるかねえ? あれで勘の鋭い子だから...もしや。こっちの狙いを察して、いや。それも...いにゃいにゃ、そんなに回るとも思えないし》

 ヒルダの舌打ちが聞こえそう。

 彼女は、片腕を失ったべリアの元まで戻ると...

 意識のない男から予備の剣を奪う。


 観客席からのブーイングも聞こえてないし。

 彼女の目はずっとあたしを追ってた――だから、会場に飛び込んできた衛兵さえも見えてない。いや、見ないでも分かる――だって、彼女、狩人だもん。


 “ドーセット帝国式剣一刀流・月衝みかづき

 横薙ぎのひと太刀が、彼女の無呼吸で振るわれた瞬間...

 ブーイングの声が消えた。

 たぶん、たぶん...絶句させられたんだと思う。


 間合いとは何か。

 誰もが思う事だろう。

 ()()()を敵に回すな。

 戦場における、禁忌の言葉のひとつ。

 幸い、ドーセット帝国は今、現在勇者と共に魔物狩りを遂行中である。

 故に人の世の戦争に構っているほど暇ではない。


 ま、だから...

 ヒルダみたいな連中が送られる訳なんだけども。

「セルコットちゃ~ん、鬼ごっこかなあ????」

 裏返ってるような、甘い声色が聞こえる。

 ちらっと覗けば、

 会場の砂を身体から叩き落としているように見え...


 貴賓席側から迫ってた衛兵を横薙ぎで、身体ふたつに引き裂いてた。

 5人が10人にされた様な、おぞましい血の海だ。


 おっと...ま、マジ、、、、か?!


 端目で見て、背筋に電気が走る。

 こりゃあ、不味いわ。

 やや気を引き締めにゃあって一寸、気が抜けたスキに前髪が目の前を舞った。



 僅か数秒先のあたしが今、死んだ。

 気配で、仰け反ったから無事のような雰囲気だけども。

 前のめりで全力疾走を、今も数秒続けてたら――あたしの頭は、ダガーナイフで()()()にされてた。


 あっぶねえ...

「外れた、か」

 ヒルダの手にナイフがある。

 暗殺者の御業ともいうべきか...

 まだ、何か隠しているような雰囲気だけども。

 男爵から盗んだブロードソードを握り直し、腰の太い革ベルトにも手を伸ばす。

《ナイフは残り2本、これまで投げると...昨晩買った肉を食うのに難儀しそうだし。...じゃあ、投げ杭となると、大降りになっちまうしでちと積かな? これ...》

 目だけが、あたしを追ってくる。

 もう少し行けば、ミロムの席まで戻れる。

 あと少し、

 そう、あとちょっと...

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ