表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
65/539

武王祭 騒動 21 ヒルダの試合 2

 ヒルダの対戦相手は、

 コンバートル王国の()()()()だった。

 冒険者から身を立て、名を轟かせた“剛勇のべリア”。

 大剣を振り回すロロ・ベリア男爵だった。


 ヒルダと対比させてみると、だ。

 べリアがオスの灰色熊に見え、ヒルダはそう――小型の狩猟犬みたいに見える。

 いま、彼女ヒルダから文句がきたので訂正する。

 子供のオオカミが()()そうだ。

 ま、正直...あたしからすると、大して変わりそうにもない。


 このカードは本当に、余興なのだろうか。


 あたしは、控室から会場の観客席へと移動してた。

 言い方を変えると...

 逃げてきた。

 なんせ、気を許すと神殿の乙女たちが、だ。

 あたしを吸おうと、果敢に挑んでくるんだわ。

 これをいなし、躱し、そして踏み台にして外へと逃れる――ってなやり取りの中、どさくさ紛れでミロムも、ついてきた。手を繋ぎたがるので...後輩ちゃんがいないことを入念に確認しつつ、そっと指と指の間に手を絡ませてた。

「ひとりで出歩くと、迷子になるといけない!!」

 いや、満席でもないとこで迷子はない...だけど。

 あたしの手を引き、腕を胸の谷間へと引き寄せた。

「ダメだ! ()()迷子になる!」

 あ、そっか。

 そっちの話か...



 両手剣のべリア。

 或いは、

 大剣のべリアは有名だ。

 冒険者の狭い界隈で、貴族にまで出世したとなると、伝説にもなる。

 そして政治色の強い“プロパガンダ”にも。


 ヒルダは、獲物のブロードソードではなく会場へ入る前、立てかけてあった武器の中から、刺突剣レイピアを引っ張り出してた。いわずもがな切り付けるためのものではなく、鎧の間に滑り込ませ、急所をひと突きにする刺す武器だ。

 より使い込めば、

 いや、或いは相当の高い練度と、優秀な鍛冶師の腕が合わされば、分厚いブレストアーマーでさえ貫通しえる武器になる。

 けれどもまあ、それは剣星にまでなった人物が、大業物を手にした場合に限られるわけで...

 さて、ヒルダにしてみれば、だ。

 帝国式の力技を行使するのならば、千枚通しも夢じゃあない。

 けど...


 本気ならば、自分の獲物を使うだろうなあ~

「さて、エキシビションって話ですけど...本当にそういう話なのですか?」

 ヒルダが対峙する、半身で捉える男爵にそれとなく問う。

 構えている訳じゃないのに、音が聞こえた。

 こう、

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴってな感じ、の。

「これは、ある方からの依頼だ」

 会場には聞こえない。

 もとより雑踏の中のふたりだけの会話。

 口が動いてても読唇術でなければ...

「試合が始まり10分ほどは、それぞれが互いの技で観客を楽しませること...それが条件となっている」

 やや不思議そうに、

 胸当ての上に、手のひらを置く。

 ()()から届いた命令書。


「それは、男爵あなたを殺さないように、ですか?」

 男爵は無言で頷く。

 対峙すれば、剣客じゃなくても力量の差異くらいは分かる。


 その危険回避能力で、多くの冒険で名を馳せたのだ。

 目の前のヒルダが何者かであることくらいは、勘でなんとなく理解はした。


 図体こそは巨躯と、極小の剣客。


 だが、実力では“三つ首のドラゴン”と大差ないヒルダと、“ケモノ上がり”の冒険者べリア。

 外と中とで逆転しているのだ。

 これで()()()()などは、出来ない。

 いや、そもそも試合としての成立もしないだろう。

「じゃ、こっちに元帥せんせいを通じて依頼をされたのは...」


「切っ掛けこそは当方であるが、依頼者は別にある。10分経てば依頼通りに捌いてくれていい。ただし...その前にだが?」

 ヒルダもため息交じりに呼応して、

 首を傾けながら。

「骨が折れるってのは、こういう事を言うんかなあ。...っ、男爵さまだっけか? 悪いけどさあ、腕か或いは...足、どっちか一つは貰ってくけど恨まないでね」

 だって。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ