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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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武王祭 騒動 20 ヒルダの試合 1

 官僚が席に戻ると、

 警備隊長の躯は血糊だけを残して消えてた。

 運営管理者を捕まえて、尋ねると――「変死です」としか返ってこない。

 少々不可解さと、心残りめいたもの...こう、

 胸の内のもやっと感があるんだけども。

 そんなに長い付き合いでもなかった。


 そんな事もあるだろうって、切り替えも早くて...彼、官僚さんは命拾いした。

 もしもだ、変に騒ぎ立ててたらと思うと、ゾッとすると思うよ。

 だって、

 変死が受け入れられなかったら、彼の躯も地下にあるカタコンベに横たわっていたかもしれない。

 その警備隊長と同じ姿で。



 さて、忘れられそうになった組の試合が始まろうとしてた。

 賭博管理員会は、大会運営を装って活動している非合法の組織である。

 その彼らが失念したのが――

 ヒルダの試合である。


 実のところ、

 棄権しますって通達があって、カードが繰り上がるところだったんだ。

 ヒルダの素振りを見てしまった、放浪の戦士がどうも戦意喪失したという。

「そいつは分からんでもない」

 ミロム・バーナードは、零した。

 同室の戦士たちは、食事に夢中だったんで彼女の()()()は、あたしが胸に納めたところ――「え?! なんで、何で誰も留めてくれないの!!!」――って掴みかかってきたんだけど。

「ミロムさんや、今、何時か...わるかな?」


「昼時でしょ」

 そう昼だ。

 ヒルダの試合は忘れられてた。

 本人にも通達されずに、じゃあ、控室の外でメシ喰おうってなノリになってたところへ。

 例の不戦敗じゃ締まりも、具合も悪いので()()()やっちゃってください!!

 運営からエキシビションみたいな試合が組まれた。

 もう迷惑レベルの何物でもない。


「ヒルダさんが、渋々連れていかれたのは...覚えてるかな?」

 ミロムの目が斜め上を仰ぐ。

 あ、覚えてない...

 こりゃ、ダメだ。

「――ま、勝っても負けてもヒルダさんは、次の試合に出れるそうなので...運営さんらが宥めるようにして連れて行ったわけですよ!!」

 ああ、それも覚えてないと。

「ま、そんな試合ならと...みんなもこう、食事に夢中なわけです」

 腕を広げて、あたしは部屋の動物園化を披露する。

 さあ、目を覚ますんだ! ミロムさん。


 あ...


 神殿騎士の乙女たちが、

 腕を広げたあたしの元に殺到すると、だ。

 脇の下を吸っていきやがった。

「ふぅー!!!」

 ミロムさんが毛を逆立てながら威嚇する。

 ケモノかッ

「なんで吸うかなあ...」

 ご神体を拝むようなものだろうか。



 この試合の裏では、

 ちょっと外交的駆け引きめいたものがあった。

 先ずは不慮の事故として、ラグナル聖国の法王の変死がある――いやあ、これはあたしの()によるものだし、とことんまで追求するとか言われると...ちょっと尻が痒くなる感じが。

 煙の立たないところに火はないとかいうものだけど。

 守銭奴とか過去、言われるようなことしてたあたし。

 下手うったら、それ...暗殺したんじゃ?

 って濡れ衣もあり得る。


 ああ、やだやだ。


 メガ・ラニア公国出身だという、ジジイが地下道にある。

「未だに手がジンジン響いておるわ! なんなんじゃあの小娘は、見た通りならば10...6、7歳くらいの小便臭い青二才だと思って対峙して...戦って見れば場数は、組織の狂戦士らと大差ないというレベル。まっこと本当マジにアレで、魔法使いなのか!!」

 って、怪訝な表情をつくる。

 曲がってた腰も、突いてた杖もない。

 見た目がジジイだけど、

 あたしの事を知ってるような、素振り――

「宗主さまのお導きです」

 崇拝者ならば、

 そう切り出されると、悪態も吐けなくなる魔法の呪文。

 ジジイは、履き捨てるよう...

「まあ、いい。俺の仕事は...終わったのだよな?」

 賢者の目の前に、和装の男がある。

 扇子を広げ、口元を隠し...

「無事、舞台は整いました」

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