武王祭 騒動 19 事後処理
あたしが控室に戻ると、
歓声とともに罵声も、覆い被さってきた。
他国の戦士、騎士、そして友人たちも――それぞれに拍手、とは違うけど。労ってくれる...失格判定だった、あたしをそれぞれが慰めてくれてるわけだ――そして胸中、あたしと戦わなくて良かったと思う連中からの...安堵した励ましも。
これはこれで非常に複雑な気分。
「えっと、その...ね。じ、実は...」
歯切れ悪いじゃねえか、糞でもケツの先で詰まった感じか?ってな要領で、問うてくるのは戦士団。
ヒルダみたいな脳筋を筆頭にした、
ガサツな女の子の~
不謹慎極まりない~
不潔な物言い。
いや、問うならもうちょっとマシな、言葉があるじゃろ~
あたしの腹具合なんか...
いや、いい。
「みんな、いろんな思惑があるだろうけど」
やや上目遣い、
指を捏ねくり、もじもじとした雰囲気で――これで察しろ、馬鹿ども――
「やっぱり便秘か?!」
デリカシー!!!!
「便秘は辛えーよなあ、おい!! 腹が張って、屁が出るとよ~ 臭えーんだわ!!」
デリカシー!!!!
戦士団は、あれ、女の子じゃないわ。
皮被ったおっさん。
「ちがーう!!」
あたしのキレ具合に、皆が仰け反る。
あたし自身、ちょっと甲高い声になった。
裏返ったんだわ...
「はい、どうどう」
ミロムが手綱を引く。
落ち着く素振りのあたし...
「ぽんぽんは痛くないよ~」
いやあ、ぽんぽん冷えてないけど。
ああ、ぽんぽん撫でられるのもいい~
「いや、ミロムさんもちょい、待ち!」
「は、はい?」
「ささ、みんなも聞いてくれ!! 今の試合であたしは失格になったけど、上の試合には特例で...上がれることになった。ただし条件として、会場を壊さない事...何だけど」
って話が皆に伝わると、だ。
手のひらクルーってな現象を、目の前で見る事に成る。
まあ、そりゃそうだ。
彼らはライバルだ。
控室では和気あいあいと...
「TKB当てくい~ず!!!」
とか馬鹿な事して、
少女たちの蕾を摘まんで遊んでも、赦される雰囲気は部屋の中だけだ。
ここを出れば...
「良かったじゃないか! ってことは...私らとも戦えるのか?!!!」
ヒルダは本気で喜ぶ。
まあ、こいつとはじゃれ合う程度のゴッコしか、したことはない。
あたしの条件を聴いてたかは不明だけども、だ。
目が、目が怖い。
ああ、これ、やる気満々だなあ。
「失格と復権の条件が分からないけど、とにかく...トーナメント進出おめでとう!」
ミロムも、自分のことながらに讃えてくれる。
良き友よ~
ハグしに近寄ったら、
「あ、今は理性が跳びそうだから、ごめん」
突き放された。
ジジイに吹き飛ばされたせいで、服がボロボロ。
見えなくていい乳房がポロンしてた。
そう、こんな姿で戦ってた。
◆
会場にあった警備隊長は、両肩をおとし落胆した気分で座ってた。
賭博屋の官僚は相席にいない。
彼だけ...だが。
その周りにフードを被った者たちがある。
「首尾はって、聞く必要もねえなあ」
落胆の正体は、
あたしが吹き飛ばした箇所にある。
円形闘技場なのに、観客席だけは一円に、巡らされていない箇所がある。
そこに例の秘密の部屋があった。
もう少し仔細に話すと、
その部屋が、会場内で一番安全だと聞かされた、ラグナル聖国の法王は、だ。
会議が始まる数刻前から、接待を受けながら過ごしてた経緯がある。
そこへあたしは、炎筒を投じてしまってた。
――いや、わざとじゃない。
そもそもで言えば、だ。
ジジイがそっちに放らなければ...
「首尾は上々だ、貴殿の配置図によって猊下をあの場に足止めが出来た」
背後から鈍い痛みが広がる。
もがいて届くような位置に刃がある訳じゃ無い。
隊長自身の腰から短剣が抜かれ、
その獲物で背後からゆっくりと突き刺されている。
声を上げようとはもがいたけど、
血の泡しか口から出てこない。
「エールの飲み過ぎは、気を付けるといい...」
耳元から聞こえた、囁き声。
睨もうとしても身体が強張って動けない。
ゆっくりと意識が遠のき、彼は眠る様に亡くなった。




