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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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武王祭 騒動 18 あたしと賢者の試合 6

 狭いとこで戦いたい。

 これは思い付きだけど、

 向き変えられるんじゃ...ね?


 幸い、獲物の剣はブロードソード。

 片手剣のなかでは、長い方の部類。

 その分、重い。

 これは片手で扱うギリギリの重量ってことで。

 そうだなあ...刀身の重みで振り回す様に、考えられてた――主流トレンドな片手剣はショートソードの方。勘違いされるけど、ショートソードは振り回しやすいっていう意味で、短剣じゃあない。

 ブロードソードの刃渡りは平均で60センチメートル前後。

 差はあるけど、あたしのは55センチメートル。

 ヒルダのは75センチメートルで、ミロムのは63センチメートル。


 ふたりのと図りっこした。

 懐かしい...


 冒険者ギルドでも、ショートソードを推奨している。

 勿論、取り回しが良いから。

 身の丈に合っているっていう、外見の話ではなく。

 片手で操作するために十分な長さと、重さ、そしてバランスがある。

 ショートソードの刃渡りは最大で50センチメートル前後で、最小で35センチメートル。

 これに柄があり、鍔が付くのだから...剣自体は、わりと大きいんだよ。


 で、もう一度、あたしは自分の獲物を見てた。

 利き手に握られた相棒を。

 たまに太腿で挟む事のある、それをだ。


 いけるかも――と思い立つ。



 対岸にあたしを見るジジイがあった。

《何を企む?!》

 気配というか、直感で感じてる。

 賢者と呼ばれるには、やっぱりそれなりの研鑽を積んできた。

 一朝一夕で名乗れるような、易い称号でもない。


《ここは、空中にも少し撒いておく、か...》

 って、彼は自身の周囲をマッピングし始める。

 地雷の設置には、座標値が要る。

 これは仕掛け罠と同じ要領だ。


 だけども、少しだけ...

 彼、ジジイは遅かった。

「よっと!」

 あたしが踏み込んだ寸で上空へ飛ぶ。

 ま、踏み込んだ先で爆発したんで。

 あたしは爆風に身を任せて、高く飛ぶことが出来た。

《やはり、致命的なダメージに繋がらんか!?》

 ジジイとしても、胸中に焦りはある。

 かすり傷をこさえることは可能――ただし、物理攻撃に限るという条件が、魔法使いに苦悩を与える。

 魔法で爆発を起こさせて、地中の小石などで礫の代用とする攻撃が、地味に効いている。

 今はいい。

 今は。

 このかすり傷で怯まなくなったら...


 ブロードソードの刀身を寝かせて、

 屈めた足の下に置く。

 鍔に巻き付けておいた紐を緩ませた後、あたしは跳躍に利用した。

 自分の剣をだ。

「な、んだと!!」

 ジジイの手元から、氷の礫が放たれる。

 ま、これを腹にモロ受けして、再び同じ跳躍で空へ。

 こやってジグザグに動いて間合いを詰める。



 あたし自身も魔法使いだし、剣士ってのはサブの職業だと思ってる。

 盗賊狩りの盗賊紛いもしてたけど...

 やっぱり魔法使いだと思う。

 そんなあたしからしても、この移動法はちょっとないな。

 出来たからって自慢は出来ない。

 他の魔法使いみたいに...色んな魔法で戦いたいってジレンマは、ある。


 出来ないから、こうなった。

 鋭角に飛び込んで、ジジイの懐間近に迫った。

 ここなら賢者の表情だって素直に読める。

『しまった??!』

 思った。

 思わせた...

 鍔に括りつけた紐を引っ張り、剣を呼ぶ。

 受け損なって左手を斬るんだけど...それは、それで。

 腰からショートソードが抜き取るだけで。

「マジックシールド!!!」

 ジジイの判断は正しい。

 今から出す技は...


 “リーズ王国式抜刀術・炎閃ほづつ


 刀身から“火炎球”紛いのを出すもの。

 厳密には纏った火属性魔法を、直線状に突き放つものでファイヤーボールとは、少し違う。

 似てるけど、違うって...師匠から叩かれて教わったもの。



 試合は決する。

 あたしの()()って形で。

 試合だから何でもしていい、訳じゃ無いってのを知る。


 失格したんだけど。

 賢者の爺さんが辞退した――理由は色々あるようだけど、炎閃ほづつの軌道を反らすのに、全魔力を使い果たしたんだと。...ま、精根も尽きて、今はとにかく寝たいんだそうな。

「試合で負けたのに、上にあがっていいの?」

 って、運営に尋ねたんだけど。

「賭ける対象がいない試合ほど盛り上がりに欠ける! 今回は特例で...おにゃしゃす」

 ――だって。

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