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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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武王祭 騒動 17 あたしと賢者の試合 5

 絡まれてるのに、ミロムの奴。

 臆せず、堂々と彼女らに講釈...いや、正論をぶつけてた。

「普段、冒険者たちの獲物は獣、魔獣、害獣たち。...となると、攻撃の大半は物理って事に成る!! じゃ、自分たちの身体の守りは、どうだ?」

 自ずと答えは出る。

 ってことをミロムは言いたかったが...


「そんなこたあ、関係ねえ!! ぶった斬る!!!!!」

 ヒルダが拳を掲げて立ち上がってた。

 アホがここにも居ます。

「だろ、姉ちゃんも分かってんな!」

 戦士たちから共感を得るが、

 そう容易い話でもない。

「でも...魔法盾の防御力、甘く見てませんか?」

 ああって言葉セリフに濁点が混じると、絡まれてるように聞こえる。

 不思議だ。

 不思議だよ、今、ここで純白の乙女と、汚れものなお姉さん方の溝、スパッと割れました。

 さて、あたしはどこへ...入るのかな?


 そうそう、純白の乙女陣営の...

 神殿騎士のお嬢さん方は、鎧をするっと抜け出してですねえ。

 病衣みたいな姿ころもで寛いでた。

 これ、誰かに見られたら、さ...


 ちぃーす、差し入れっすぅー

 って入ってくる大会運営スタッフなんか来たら、ギャーギャー騒ぐ感じだよね。

 こっちはジジイに苦しめられてるのに...

 いい身分ですね!!



 ヒルダの剣のように、だ。

 魔法の一切合切、無責任に“ぶった切る”という一念と、気合だけで振り下ろすだけのものならば。

 剣圧だけで確かに...

 斬れるんだろう。

 魔法使いの初見殺しとは、よく言ったものだ。


 帝国式の対処法はある。

 使い手がバカだから、手足が吹き飛ぼうとも直進してくる猪さだ。

 これを絡め捕ればいい。

 対処法であって、必勝法ではない。


 ま、うちら王国式も似た者ではあるが。

「さあて、手詰まりか?」

 ジジイの挑発は、あたしにしてみれば、そよ風。

「もう少し狭いトコで戦いたいなあ」

 ひとりごとにするつもりの言葉が、口から出てた。

 会場からは『どうした、嬢ちゃん』めいた心配する声が聞こえる。

 心が折れたと、勘違いされたらしい。


 まあ、観客からしたら。

 あたしは一方的に地雷を踏んで、吹き飛ばされ、転がされて。

 また吹き飛び、氷柱に当たり、雷撃を受ける。

 魔法使いのジジイは結果、悪役としてのロールを満喫している訳だ。

 服へのダメージは、攻撃分貰っているので、ボロボロだ。


 えっと...

 フード付きのマントは、背中半分まで燃え落ちた。

 耐火属性なのに、だ。

 これは道具屋に訴える案件だろう。


 次に、上衣。

 胸当ては、やや健在だが、インナーの黒いスポブラが見えとる。

 片側だけ(心臓守護)のブレストアーマーで、ケチったのが仇になった。

 ブラまで裂けたら、どうしよう...


 後は、下衣だな。

 ズボンにしたのにこちらも...

 ま、地雷だから足元は仕方ないか。

 ブーツも、今、踵しか守って無い。

 さっきから石が、チクチク刺さるんだわ。

「満身創痍のようだが、未だ、ギブアップせんのか」

 して欲しい感は伝わってくる。

 そりゃあもう、ひしひしと。


 あたしの生ちっろい四肢に、会場から同情のような声援が響く。

 で、何処からともなく『ジジイ、〇ねえ!!』とか『女の子を剥くなあ!!』ってのも聞こえ。


 あたしは、いつからタマネギに?


 まあ、知らぬ間にジジイはアウェイになってた。

 いや、そうはしてたんだけど。

 実際に、だ。

 あたしに向けられる好意的な声援って、なんか、ね。

 くすぐったいなあって。

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