武王祭 騒動 17 あたしと賢者の試合 5
絡まれてるのに、ミロムの奴。
臆せず、堂々と彼女らに講釈...いや、正論をぶつけてた。
「普段、冒険者たちの獲物は獣、魔獣、害獣たち。...となると、攻撃の大半は物理って事に成る!! じゃ、自分たちの身体の守りは、どうだ?」
自ずと答えは出る。
ってことをミロムは言いたかったが...
「そんなこたあ、関係ねえ!! ぶった斬る!!!!!」
ヒルダが拳を掲げて立ち上がってた。
アホがここにも居ます。
「だろ、姉ちゃんも分かってんな!」
戦士たちから共感を得るが、
そう容易い話でもない。
「でも...魔法盾の防御力、甘く見てませんか?」
ああって言葉に濁点が混じると、絡まれてるように聞こえる。
不思議だ。
不思議だよ、今、ここで純白の乙女と、汚れものなお姉さん方の溝、スパッと割れました。
さて、あたしはどこへ...入るのかな?
そうそう、純白の乙女陣営の...
神殿騎士のお嬢さん方は、鎧をするっと抜け出してですねえ。
病衣みたいな姿で寛いでた。
これ、誰かに見られたら、さ...
ちぃーす、差し入れっすぅー
って入ってくる大会運営スタッフなんか来たら、ギャーギャー騒ぐ感じだよね。
こっちはジジイに苦しめられてるのに...
いい身分ですね!!
◆
ヒルダの剣のように、だ。
魔法の一切合切、無責任に“ぶった切る”という一念と、気合だけで振り下ろすだけのものならば。
剣圧だけで確かに...
斬れるんだろう。
魔法使いの初見殺しとは、よく言ったものだ。
帝国式の対処法はある。
使い手がバカだから、手足が吹き飛ぼうとも直進してくる猪さだ。
これを絡め捕ればいい。
対処法であって、必勝法ではない。
ま、うちら王国式も似た者ではあるが。
「さあて、手詰まりか?」
ジジイの挑発は、あたしにしてみれば、そよ風。
「もう少し狭いトコで戦いたいなあ」
ひとりごとにするつもりの言葉が、口から出てた。
会場からは『どうした、嬢ちゃん』めいた心配する声が聞こえる。
心が折れたと、勘違いされたらしい。
まあ、観客からしたら。
あたしは一方的に地雷を踏んで、吹き飛ばされ、転がされて。
また吹き飛び、氷柱に当たり、雷撃を受ける。
魔法使いのジジイは結果、悪役としてのロールを満喫している訳だ。
服へのダメージは、攻撃分貰っているので、ボロボロだ。
えっと...
フード付きのマントは、背中半分まで燃え落ちた。
耐火属性なのに、だ。
これは道具屋に訴える案件だろう。
次に、上衣。
胸当ては、やや健在だが、インナーの黒いスポブラが見えとる。
片側だけ(心臓守護)のブレストアーマーで、ケチったのが仇になった。
ブラまで裂けたら、どうしよう...
後は、下衣だな。
ズボンにしたのにこちらも...
ま、地雷だから足元は仕方ないか。
ブーツも、今、踵しか守って無い。
さっきから石が、チクチク刺さるんだわ。
「満身創痍のようだが、未だ、ギブアップせんのか」
して欲しい感は伝わってくる。
そりゃあもう、ひしひしと。
あたしの生ちっろい四肢に、会場から同情のような声援が響く。
で、何処からともなく『ジジイ、〇ねえ!!』とか『女の子を剥くなあ!!』ってのも聞こえ。
あたしは、いつからタマネギに?
まあ、知らぬ間にジジイはアウェイになってた。
いや、そうはしてたんだけど。
実際に、だ。
あたしに向けられる好意的な声援って、なんか、ね。
くすぐったいなあって。




