武王祭 騒動 16 あたしと賢者の試合 4
吹き飛ばされた。
会場の大地に何か仕掛けてある。
お爺ちゃんの意図は其処にあった――分かり易い挑発に、会場を敵に回す為のジェスチャー。
対剣士用の絡めて法...つまり機動性封殺の魔法地雷。
本来ならば、この地雷で。
剣士は、身動きも取れずに詰むって寸法だけど、あたしにはダメージ相殺の高い耐久力がある。
ちょっと前に試したけど...
ドラゴンブレスを喰らっても、さ。
マッパに成るだけで、ダメージ無かったんだわ。
ひとりで挑んで良かった、あ。
パーティだったら、戦友にタダ見せさせてたわ。
いかん、いかん...結婚前の乙女の裸体は、貴重やぞ!!
で、分かったことは!
ドラゴンブレスは魔法だった。
『そこじゃない!!』
控室で、ヒルダのツッコミが入る。
びっくりしたのはミロムだ。
差し入れの菓子パンに、手を伸ばしたとこにだ。
突然、大声で叫ぶのだから、指を架け掛けそうになってたのを、急に引っ込めもしてる。
「な、なに?!」
「あ、いや...何となくツッコミたく...」
めんご、めんごと謝る、子。
おいおい。
そいつは、あたしんのだぞ。
◇
いやあ、盛大に吹き飛ばされるんだわ。
何処に埋まってるのかなんて、マジック・サーチのような魔法でも使えたらいいんだけど。
あたしはそっちの魔法もからっきし、なんだわ。
で、ここから直感!
逆を読む。
魔法使いの爺さん的には、組み付かれる事が困るのだから...
ない頭で考える~ 考える~
閃いた!
あたしの頭の上に豆電球が灯ったのだ。
あたしがそう感じたから、ジジイも観客も、控室の仲間たちも...それが見えた。
見えたんだろうねえ。
あたしバカだから、ポーカーフェイスが出来ない。
大技を出すぞって時も、ニヤニヤしてるらしい。
キモッ
「ここだあ!!」
飛び出して、氷柱により阻まれた。
アホだった。
会場から『っうわ、痛そう』って声が聞こえる。
うん、鼻から貰いに行ったから、豪快に出血中。
「ぢくじょー」
「アホか、獣か?! 警戒しておるのはお前の全属性への対応能力じゃ!!!」
利き腕に持ってた剣を太腿で挟み、
両手で顔を覆う。
くぅー泣きたくなってきた。
「しっかし、直撃喰らって...鼻血で済むとはラッキーな体質じゃなあ」
もう感心しかでない。
戦い難い事は、戦い難いけど。
地雷みたいなMPの消費量が少ないパッシブ・マジックは、罠が起動しなくても、消費されたMPは。自然と回復してくれるという優れもの。
とはいえ、これらには熟練した経験がないと、なかなかうまくいかないものだ。
素人は便利さゆえに、自分が詰む未来が見えなくなる。
それじゃあだめだ。
玄人は、逃げ場も用意しておくもの...
◆
控室で寛ぐ神殿騎士と、聖国の女戦士たち。
公国や王国の他に傭兵あがりだとか言う暗殺者なんかも、胡坐をかいてケツも掻く。
女ばかりだと素が出るのも、面白い話――てか、おっさん化するんだよなあ...こいつら。
「あのシェシーっての、真っ向から相手してっけど...ナイフでも投げればいいんじゃね?」
ってのが傭兵と暗殺者から。
各々で賢者と相対したら、っていう思考実験をしてた。
それはミロムだって同じだけど。
「いや、単なる物理攻撃なら、魔法使いの十八番だよ。パーティが普段、何と戦ってるかで...魔法使いの性格が分かるいや、性能だな!」
「あん?!」
喧嘩売ってんのか、買うぜぇーって流れは男女に差はない。




