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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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武王祭 騒動 15 あたしと賢者の試合 3

 あたしの周りが、ちょっと焦げ臭い。


 火炎、爆破、炎症ダメージのすべてにおいて、あたしの前では相殺可能だ。

 世界で活躍する魔法使いたちの学校にて、今も教鞭をとっているあたしの師匠曰く――『セルコット・シェシーは、数多あまたの魔法使いとは異なり異質じゃ。何がと問われれば、先ず挙げられるのが、彼女の特異体質であろう...すべての属性に対応する高い耐性体持って生まれたことじゃな。これのせいもあって、使える魔法は火属性の火炎球まで...これは本人とってもデメリットのはずじゃ』と、評価してた。

 学校ではそうだなあ、教壇に座らされて...

 うん、生きる標本みたいな扱いを受けさせられたね。


 だって、すべての属性無効化。

 チートじゃん。

 ま、無効化っても...当たってダメージが身体にまで届かないってだけの話で。

 例えば、水着みたいな布一枚だと。

 布はダメージ切れたり、燃えたり、塵に成ったりする。


 しかも。

 こいつは、魔法属性に対する攻撃でのみの話。

 火矢の炎は深度が低いから...打ち消せたとしても、矢は刺さるからね。

 オークのこん棒で殴られれば、失神か、死ぬから実験しないで欲しい。

 マジ、そんな体験もさせられた。



 で、だ。

 さっきからあたしの周りで焦げ臭い...訳なんですが。

 焦げ臭いのは...あたしの一張羅である、ローブが燃えてた。

「ヤッバ!! 燃えてる、燃えてる!!!!!」

 両手で叩きながら、火を消してた。

 火傷しないってんなら、気にせず火が触れる。


 対岸のジジイは二やついてる雰囲気。

 ああ、そっか。

 あたしはダメージはないけど...服はそうじゃない。

 燃えてたローブを見て、

 彼は考えた――『身包み剥いで、ヤル』と、人差し指と中指の間に親指を差し込んだジェスチャー。

 会場からもどよめく声援。

 いや、映し出された巨大スクリーンに、例のジェスチャーが抜き出されてたからだ。

 ブーイングである。


 剣を構え直す。

 あたしのは火力が強いから、鞘に納められない。



 控室でもブーイングだ。

 男女に関係なく部屋では、賢者はすべての人々の敵になった。

「あれは無いわ」

 ヒルダが身を捩り、

 乳房を掴んで...

「会場で相手の同意なく“まぐわい”のコールサイン! 狂気の沙汰...セルコットちゃんを墜とせるとおもってるんかな...あの糞ジジイは!!!」

 身震い?

 いや、武者震い。

 でも、ゾクゾクする。


 世間知らずのあたしは、その()()()を知らない。

 ミロムも静かに怒ってるね。

 たぶん、会場のどこかで見てるだろう後輩()だ。

「あのお爺ちゃんは、どう出るか」

 ミロムは静かに燃える。

 沈静化したと見せかけた森林火災みたいな...何処かで機会を伺うような、小さな火のように。

「魔法使いにとって相性セルコットは最悪だよ。魔法使い職が、ショートソードで生計を立てられないとは言えないことは、彼女自身が示してるし私らも大概だ。でも、一般論からすれば...だ。魔法使いが実体剣を持ち歩くのは、重量が嵩む理由でアイテム士がポーションを棄てるのと同じこと」


「そう。剣は属性に備えて作り、練り上げればいい。わざわざ鋼を引いた実体剣を持つ必要はない!! これが通用しないのがセルコット・シェシーの怖いところだ。額面通りに受け取れば...では、会場を敵に回してまで挑発したのは、なぜか?!」

 あたしをよく知るふたりが頭を抱える。

 滑稽です、わ。


 だって...

 あのジェスチャー。

 挑発だってことも知らないあたしに何があろう。

 そう、何もない。


 あたしは、何の迷いもなく一歩、前に踏み出して――すっ飛んだ。

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