武王祭 騒動 14 あたしと賢者の試合 2
あたしは走ってた。
お爺ちゃんとの間合いは、双方の立ち位置からざっと、5~6メートルはある。
審判さんの居ない武術大会の場合『双方に礼!』なんて、形式ばったものはない。
互いの呼吸で幕を開けるものだ。
だから、あたしも...
“リーズ王国式抜刀術・焔閃”
刀身に圧縮させた火炎球の炎を、纏わせる。
あたしの場合、剣が鞘の中にある状態では刀身に、魔法の圧を纏わす事は出来ない。
師匠やミロムみたいなのは、別。
...かな。
あいつは、紹介したらぬるぬる成長して、気持ち悪いほどに化け物になった。
ヒルダの帝国式と同じで、
戦場では絶対に相対したくはない。
◇
お爺ちゃんは、幾重にも張り巡らせたマジックシールドで、たぶん...
あたしの一撃を凌いだんだと、思う。
でって、手応えはあったんだ。
でも肝心の肉が灼ける匂いがしなかった。
《ぐぅ、初撃はマジックシールドで受け止めたものの。なんちゅう重たい剣戟じゃ...一撃で全面に展開した、六重増しの魔法盾が使い物に成らんようになった...いや、その重さだけではない、うむ》
目端でを利用して、己の後方へ気を回す。
闘技場エリアには、如何なる魔法でも殆ど無効化できるという、魔法城壁が張られてある。しかし、あたしの“焔閃”の前では、その壁は土壁にも等しかった。
要するに、
お爺ちゃんの魔法盾の方が強度が上という訳だ。
《アホじゃ...こやつ、何も考えておらぬ!!》
「若いのぅ~ や、やり居るわ!! やりお、おるが...手加減も覚えろ、会場の客まで殺す気か!」
お爺ちゃんは、お冠だ。
いや、こうやってあたしの気を別の方へ散らす作戦なのだろう。
うん、
そして、それは効果覿面だった。
あたしはブーイングの上がる方々へと謝罪して回る。
めんご、めんご...
◇
《仕切り直しじゃ...が、技のひとつであの大振り。...っ思わず見入ってしまったが、逆に考えれば動きがいちいち大袈裟すぎるゆえに、こちらも迎撃...はムリとしても、防御には十分に間に合う。いや、間に合う?》
賢者の頭脳がぴくぴく動き回る。
経験上、賢者とよばれたお爺ちゃんには対剣士用攻撃法があった。
ちょっと狡いけど...
それが年の功ってやつ。
《うむ、やってみるかのう...》
思案したお爺ちゃんは、謝罪行脚中のあたしに“火炎球”をぶつけてきた。
同属性への対処にはぬかりはない。
まあ、せいぜい飛んできたボールにクリーンヒットした感じか。
炎症ダメージはゼロだし、爆発によるダメージも相殺される。
ボールが当たったという事実のみがあった。
で、変な角度に転がって......
首が痛い。
「え? そ、それだけ!!」
お爺ちゃんが、驚く。
やられたあたしも、
「ボール直撃、痛ぃん!!」
身を捩って、甘い声で啼く。
控室では、興奮したヒルダの遠吠えが響いたという。




