武王祭 騒動 13 あたしと賢者の試合 1
武王祭の裏では、各国首脳によるサミットが開催されてた。
首脳会談みたいなのは、そう、態よく集まれる口実がなかなか見つからなかった。
というのが、リアルな話で。
じゃ、何か大掛かりな催し物でもあれば...
都合がつかなくても、照準を合わせる事は出来るだろうって。
まま、自然に行き着いたわけだ。
武王祭を隠れ蓑とする、世界会議の開催と。
言い出しっぺは、先のラグナル聖国・法王猊下であるとされる。
議事録は残されても、会議以外の事は残さない決まり――呼びかけも、実のところあったかも分からなくなってるけど。首脳会議そのものに異を唱えないあたり、恐らくは真実なのだろう。
では、今期開催の議題はとなると。
軍備強化に努める“コンバートル王国”についてとなる。
周囲が警戒するよりも前に攻め込んでいれば、この会合の議題は、休戦か或いは停戦となっていただろう。まあ、コンバートル王国が何処まで本気だったかは分からないけども、だ。
開戦の好機はもう無いと言っていい。
◇
闘技場には、円卓が据えられた密室がある。
議事録をつける書記官は、ふたり。
各国に同じような設備で、似たシステムの警備が施された部屋。
扉は、ひとつだが、部屋は脱出の際に180度回転し、別の方角へ密室内の首脳陣を逃がすことが出来るように作られてた。
また、部屋に入った後の外口には、壁で塞がれるという仕掛けもある。
「コンバートル王が遅いようじゃな?」
開催国だし、挨拶回りで忙しいのだと...相席する小部族長らからあった。
小部族だって言っても、全土に散ってる一族郎党に声を掛ければ、兵の数で七王国の一角には喰らい付けられる武力がある。
そういった部族が3つほど代表して、相席している訳だ。
「政治だよ、政治」
ラグナル聖国の現法王猊下は、頬をほころばせた。
この闘技場の中で一番安全な部屋だが、同時に危険かもしれない部屋だ。
管理者が裏切らなければ、だ。
◆
本来ならば、3回戦で当たるかもしれなかった推薦枠の戦士。
いや、この場合は魔法使いとでもいうか。
メガ・ラニア公国から推薦されたのは、魔法使いだ。
肩書は“賢者”とするよう、煩いらしく確かに風貌は...
見えなくもないかな、然とはしている。
大きなツバのある尖がり帽子。
飴色のこん棒っぽいスタッフを突いて、ローブを手繰って歩く姿が...それらしい。
でも、胡散臭い。
「儂が“賢人”ブライ・ボルじゃ、て」
ローブと一体化してたから分からなかったけど。
お爺ちゃん、毛皮を羽織ってる。
あれ、オオカミかな?
「ほれ。そこの仮面の、年長者が名乗ったんじゃ! お前も名乗りを挙げぬか」
試合が始まらんじゃろ、と。
その件が必要かは関係ない気が――
で、あたしは走ってた。
お爺ちゃんの不意を突く!
これがあたしの戦い方。
◇
控室のヒルダとミロムからは、
「変わって無いなあ~ セルコットの戦い方」
「うん、嫌らしい」
性的思考ではなく。
スタイルの話。
いや...
バトルスタイルであって、
身体の方じゃなく。
「治癒士の仕事しないって怒るくせに、セルコットも魔術師だったことなんて殆どないよね。ああやって、単身で突っ込む姿...っ本当に変わってない」
ヒルダが吐き捨てて、
ミロムが突っ込む。
「あんたが真っ先に突っ込むから、目を惹く大技の多いあの子が、飛び込むざる得ないんでしょうが」
だって。
まあ、それもある。
タゲを引き受けて、ヒルダの一撃が通り易いようにはしてきた。
「でも、あのお爺ちゃんも...」
「セルコットの爆炎を真っ向で受け止めてるわ」
痛そうって声が漏れる。
うんうん。
痛いってより、熱いかもなあ。
涼しそうな表情に見えるけど...




