表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
56/539

武王祭 騒動 12

 神殿騎士の右手が、

 ハーラルの胸当てに這って現れた。

 視界で捉える前、身体に触れられた瞬間、全身から汗が噴き出してた。


 これは生きた心地のしない汗だ。

 そして震えさえ起きる。

「チェック...メイトです!」

 少女の声が耳元にある。

 耳を動かして、呼吸を捉える。

 深く吸い込み、止めるまでの刹那まで。


 体術・奥義“発勁”。


 “鬼火”にも同じ技を使うものがあった。

 流派によっては“勁気砲”とか言うらしい。

 無属性のオドを至近距離から、相手に叩き付けるものだそうだ。

 その威力は、巨大なハンマーでしこたま、打ち伏せるものと似ているという。

「ぐはっ!」

 ハーラルはその場で膝を突き、

 そのまま、意識喪失となった。

 握ってた獲物は、少女の手によって簡単に奪われてたし...


 まあ、これで勝負あった――的な状態だ。



 神殿騎士の子の剣技は、()()だけで見ても、熟練の域に達していると思う。

 免許皆伝者である“ミロム・バーナード”の言葉を借りれば、そういう事に成る。

 左手に添えただけの剣で、相手をいなすだけの技量。

 いうより困難だというし、右手は...ヤバイ。

 あれは視線誘導だ。


 獲物を使い分けられる。

「サシだとあんなに怖いものはない」

 ってのが、ミロムの締め。

 で、

「構うこたあないよ、なんもかんもひっくるめて叩き潰せばあ...いいだって」

 治癒士だと言ってパーティに入った、ヒルダの言葉。

 ちゃんとヒールも熟練の技だったし、キュアに高位系のハイヒールだって使えた子だった。

 が、こと戦闘では前衛よりも、前にすっ飛んでいって。

 ――怪我をこさえ、泣きながら帰ってきた...残念な子だ。

 その子の言葉は...

「信じろよ!」


「信じろと言う前に、行いを正せ!!」

 “鬼火”のミロムが彼女の頭に手刀を入れる。

 で、泣くヒルダを介抱するのが何故か、あたし。

「セルコットぉ~ この女、怖いよぉ~」

 立場逆転。

 ま、いいけど。

 女の子しかいなかったパーティだ。

 最初は、ノーマルだって互いに詮索し合ってたけど、ね。

 長く居ると...

 ほら、情。

 情が...ま、感染するというか。


 あれ?


 って...な、なるじゃん。



 警備隊長は肩を落としてた。

 ラグナル聖国の獅子殺しハーラルに賭けは、してた。

 賭けは賭けでも、賭博の方じゃあない。

 人生を賭けてたところがある。

 もっとも、彼らは聖国のなすべき仕事の引き付け役だから、未だ、終わったという訳ではない。

《...っ、だが、新興勢力だからと侮ったのが間違いか?!》

 いまの王国体制が存続し得ること、

 その一点で“女神正教”は、この国に()を張ることが出来る。


 また、王国の危機ともなれば。

《あのような技を使う騎士が...いる、か》

 奇怪な技だと見えた。

 ハーラルほどの武芸者から、弱点が分かったところで、死角から襲う事は容易ではない。

 それこそ誘い水である。

 自身がよく分かっているから、先ず、死角の対処法に何通りもの対応を用意している。

 そのすべてが不発になった事が驚きなのだ。

「お前の掛け金は?」

 官僚が問う。

 巻貝を耳に当てた。

「それは?」


「ああ、今...賭博の元締めと話してたとこだ。今の試合で、神殿騎士のレートが変動する...穴だと思って賭けてた連中も、これからは思うように稼げ無くなるって話でな」

 巻貝の方を問うたんだけど、

 隊長は両手を挙げ、

「負けたよ、銀貨50枚...今日の飲み代がパアっと消えたわ」


「お前の飲み代ってのは、額が違うのな?」

 高すぎると言ってる。

 屋台でほろ酔いなら、銀貨2、3枚。

 どこぞの店でとなれば、銀貨10枚で2時間の豪遊が出来る。

「俺の事はいい、次の試合は?」


「次は例の、王国式抜刀術の剣士。相対するは、メガ・ラニア公国推薦だな」

 推薦枠の剣士とは、3回戦以降でぶつけられる予定だったけど。

 公国側からの希望が、通った事らしい。

 この当たりの政治的駆け引きは、分からないんだけど。

 あたしの勘だけど、事情が変わったんだと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ