恐怖!? ゴーレムの怪 2
「――市民の犠牲は?!!」
実験場だってのは、錬金教室から説明を受けていた。
ただし武装しているとは聞かされていない。
市長の手元には小型の“遠見の鏡”が用意されて。
対面に黒の枢機卿があった。
とても深刻そうな雰囲気はない。
「それがギルドに近寄ろうとすると、礫のようなものが飛んできます」
冒険者ギルドの下階は受付嬢たちと、冒険者しかいないはずだし。
その上階は事務所だろう。
敷地の奥には訓練場などがあるし。
『礫か』
「何かご存じで!!」
回避の仕方か、あるいは防ぎ方について問い質すつもりだった。
『なに、遺跡で発掘された旧文明の遺物を仕込んでみたものよ』
市長曰く。
なんてもん仕込んで糞野郎って叫びをぐっと堪え。
「対処、ありますか?」
遠見の鏡向こうの枢機卿は冷めた眼差しをしている。
まるで興味がないように。
『ふむ、まともな戦力が無ければ返り討ちになると思うが。アレの気が引ければいいのだが、仮にやり過ぎれば抹殺対象になりかねないし。仮にタゲを取れても飽きっぽい者であるからなあ』
他に優先すべき命令があるから飽きっぽく見えるだけで。
殲滅対象になれば執拗に追ってくることになる。
えっと、弱点らしい弱点は?
聖櫃騎士団がお土産として、彼らに与えた結果なので。
聖堂騎士団のライオネルからゴーレムについての簡単なレクチャーを受ける予定だった。
いや、今はとにかく逃げの一手しかない。
◇
ゴーレムの新情報。
ひとつ、アレの機動性は馬並みである。
「それ、要る? 要る情報なの!!?」
パンツがびちょびちょだよーって嘆くあたしは後方から泣きながら走ってるけど。
ライオネルに噛みついているのは蒼の魔女。
ローブの裾をたくし上げて、生足のたるんだ肉をぷるぷるさせて走ってた。
お!? これは眼福なのかもしれんな。
普段はローブで見えないんだし。
「先輩はこっち見んな!」
「じゃ、蒼の足は紅が見ててやろう」
観測者の違いだな、それ。
「本気で走れば馬以上の機動性だから、心しておけという戒めになる。もっとも、アレの錬金武器が解放されてたら、射程の概念無視で狙撃してくるから迂闊に外にも出られないんだ!!!」
射程の概念無視?
「そのままだよ」
怪物じゃんよ。
なんてもんを騎士団は彼らに与えたんだ。




