恐怖!? ゴーレムの怪 1
匂いの痕跡を追う。
皮脂とか汗腺の成分とか。
ゼロから百までのあらゆる分野の分析が一通り行われた結果。
後輩の肌着から、標的たりえるものがすべて敵認定された。
効果範囲、数百メートル。
数千、数万、数百万でなくて良かった。
国の境を越えて捜索されてたら――きっとぞっとしたに違いない。
聖王都だけでなく、数多の都市や、街が灰塵に帰した可能性。
あります、あります...
なんか偶然にも起動して大暴れしてるトコで、(他力本願にも)誰かが壊してくれたら。
起動実験の街以外は平和をつかみ取ることができるかもしれない。
なんて淡い期待をもったことに。
残ながら換気口の先と、元で視線が合っちゃったんだな。
あたしは今、非常に絶望を抱いている。
「うわっ!! セルが漏らした!!!!」
妹柱が『セル姉さま、ばっちいです』ってセリフなんて聞こえないし。
パンツの神さまもビビった。
ご~りぃ、ぞぉ~りぃって何か金属が擦れる音が気になった。
地下都市はかつて作られた発掘用の換気口で、空気の採集が行われ――缶に詰めて売っているくらいだ。
それだけ新鮮な空気は貴重だって話。
あ、あたしらかい?
魔法使いを舐めなさんな。
後輩が風の精霊に声を掛けて、さわやかな空気をいただいてた。
やっぱ後輩に魔法使いがいると助かるねえ。
「どうしたの!?」
ミロムさんも天井を仰ぎ見た。
血走ったゴーレムの目がこちらを瞬きもしないでぎょろぎょろ動いてた。
うわっ、キモい。
「どうしたん」
後輩が換気口へ。
ミロムさんの伸ばした腕で乳房を掴んで、突き放した。
おぅ...
揉んだわけじゃないが。
この子から変な声が漏れる。
「今の声で起動鍵が入った!! 散開ーぃ!!」
◇
街の路地には残骸となったゴーレムが多数、転がってた。
調査のために後輩がひとつひとつお触りしてたせいでもある。
紅の修道女と関わった者、
あるいは肌着に付着した別の匂いも対象になって――
白の信徒はミンチにされてた。
メンテナンスに訪れてた黒の信徒は大口径の弾丸を3本向こうの通りまで逃走したところで。
壁ごと撃ち抜かれて木っ端みじんに爆散してた。
市庁舎に飛び込むレンジャー。
立ち寄ったギルドは血の海だと聞かされて。
起動した理由と、対処に頭を抱える市長があった。




