神の盾、黒の信徒たち 3
「――案じて、賊徒から街の人々の営みを守るって。傍から聞いてるといい話のように聞こえるけど?」
あたしの台詞にマディヤが首をふるふる振った。
磯の香りがしまずぞ!
「セル姉さんは、何もわかってない。脇が酸っぱい残念なエルフだよ」
ぐはっ。
妹柱だよと告げてきて。
あたしを見るなり『これ、ポンコツじゃないですかー』と。
失礼を発した子だ。
まあ、いい。
あたしは寛大だ。
周りに寄ってきて。
パンツの神さまの手を引き、あたしから遠ざけたのち。
すんすん、周りの匂いを嗅いだ後。
「やっぱり酸っぱいーぃ!!」
ほほう。
このあたしを怒らせたら。
「セル、ステイ!!」
なぜに。
ミロムさんから静止させられた。
ステイ、便利。
◇
お風呂タイムでは、女の子のウフフ、キャワワ、あひゃあひゃ...なんてのがあって。
多分、打ち解けたと思ったものだが。
「セル姉さん、次女としての威厳はどこに?!」
と、蒸し返された。
えー、
もう世界を灼いた魔女から離れようよ。
あたし、ソレ卒業したいよ。
てか部分的に忘れてるし、ふふ、思い出しても。
なんかあたしが小さく見えそうでヤだな。
「恐らくは聖櫃の知識に依存しているものと思われますが。自立起動型オートマタ・ゴーレムの試作モデルが各街に配置されました。起動鍵は、殺気の検出でしょうか」
錬金の研究は他の研究部門や、発掘品の管理以上に金のかかる代物で。
いち派閥だけでは限界がある。
故のゴーレム。
完全自立起動型ゴーレムが完成すれば。
複雑な命令に最適解で実行する優秀な兵士が生まれる。
これを傭兵ビジネスに投下したら、莫大な利益を生むだろう。
「そっか! 殺気に強弱はないから」
「明察です。初期バージョンは配置した都市で殺戮が起きてセーライムの存続危機になったといいます」
魔法生物たるゴーレムの謎は解明されていない。
黒の枢機卿一派は、今のゴーレムに満足していないのだ。
「でも、いやそうなると。聖櫃騎士団がもたらした知識を理解したんじゃなく、模倣したってこと?」
マディヤからの視線。
姉さん『酸っぱい』のに湯舟でうつ伏せで死にかけて、覚醒したんですか。
と、驚いてくれたが。
やっぱり殴っておきたい。
「錫を銀と偽っている研究室のものたちです。サンプルをそのまま量産したのでしょう」




