見てよ、郊外に太陽がたくさんあるよ 1
誰かがさ、郊外に目印をと。
そんな無茶なお願いをしたんだか、聞いたんだか。
という訳で――
でも無いんだけども。
セルコットさんにお願いしてみましょう!
ってことになった訳だ。
どうしてこうなった、か。
それは今、記した流れで、なんとなく。
『セルって、いつも無詠唱? なんで』
いあ。
なんでって、なんでだよ。
あれ?
火の精霊に愛されちゃってるんで、かな?
ぢゃ、詠唱してみてよ。
気軽にそんな流れで何百年ぶりだ?! えーと、2,いや300年は経ってる筈だが。
封印したのには理由がある。
みんなから、お前のは変だよって。
あーもう、
◇
ゆら踊れ、ゆらゆら踊れ、火の精よ踊れ、ゆらゆら、ゆら踊れ。
そこでくいっと腰をひねって、片足立ちになる。
おお、久方ぶりで... あはは、あたし、なんか楽しい。
軸足はすこし膝を曲げるんだけど、ここがちょいキツくてね~
玉になって、ゆら踊れ、和になって、ゆらゆら踊れ...
爆裂魔法!! ふぁいっやー、ぼぉーる!!!!
これあたしが精霊たちから学んだ、エルフ式火炎球の詠唱法。
あれ? エルフ式だったかな、精霊式?
いやいい。
ぎゅるんって火の粉が玉になって、両腕を伸ばした宙の先に球が出来た。
それはもう、猛烈に、糞熱い熱量の火炎球が、だ。
おいおい...
いつもの5倍は汗出るじゃんよ、詠唱すると火加減が難しいんだよ、あたしにとっては。
こう、イメージがとっ散らかるというか。
「はいっ! デキました!!」
ギャラリーの連中はいいよ、自分でやらない癖に文句ばっか。
何で急に石が飛んでくるんだよ。
◆
※カメラ位置がギャラリー側へ――
「待て待て、セルーぅ、セルちゃーん、ちょーまて、話を!!!」
取り乱したミロムさんは珍しい。
ヒルダが居ない代わりのストッパーみたいな存在かな。
ま、それも9割、あたしを甘やかしてくれるんで、ふふ、気にしないよ。
「なんだ、そのデタラメな詠唱は!!!」
うっさいなあ。
後輩たちがきゃんきゃん吠えてんだけど、無視無視。
外野の目には、極悪な炎がうねりながら集まったように見えてた。
こう方々から水をかき集めて水球でも練り込むような。
後輩エルフ曰く、
『火炎球の作り方は、火の精霊から火種を集めるだけの作業です。先輩のように、炎の上級精霊を手駒のように扱い、触媒として極悪な火力にさせてしまう。もはや創造、神々の所業のよう』
なんて世界の終わりでも垣間見たような絶望に打ちひしがれてた。
大袈裟な。
あたし、普通じゃね?




