神の篝火、蒼の信徒たち 5
「おっと、投了かい?!」
巨躯の女が問う。
「ああ、そうだ。俺の負けでいい、金は...」
天井に視線を泳がせて。
「従者がお前らの縄張りに行く。必要な額をババアに伝えておけ!」
そんな捨てセリフがあるもんかよって感じで。
ジョージは部屋の更に奥から出た。
そのまま地下まで抜ける道をひたすらに階段で降りて。
1ブロック分を地下で歩き抜けていった。
聖王都の地下に街がある。
正確には、
元は古代遺跡のようなもので、ダンジョン化しなかったラッキーな街だ。
幸運は住居として使える点のみで。
不運は稼ぎ場所には向いていないってことだ。
結果、地上の糞みたいな仕事しか回ってこない。
それでも内よりかはマシだし。
回しているのも、賭博場にいた3人からのもの。
クエストをどう処理するかは。
街の住人たちの問題だ。
◇
柱の陰、角に、穴倉みたいな瓦礫の中から見ている目がある。
ジョージを睨みつけて、
しばらくヒタヒタと。
憑いてきていた者――オオカミと呼ばれた魔族だ。
「邪魔するよ?」
街を仕切る長老のあばら家に入る。
厚手の布が扉の代わりで、
二間と半分でも手狭とは言えない一応住める家。
長老の孫娘が出迎えて、
ジョージは老人と対面で握手を交わした。
「べっぴんになったじゃねえか?!」
「もう、好いてるのが居るから、ちょっかい出すんじゃないよ!!」
節操がないやつじゃん。
「こりゃ、まいったな。先約があるんかー じゃ、2番目でも」
殴られた。
いあ、ポスって音はしたけど力は入ってない。
「何しに来たんだ?!!」
「駒を動かしてくれないか? 教皇庁の侍医んとこでいい。現教皇は、それほど老け込んでもいなかった筈なんだが、ここんとこ姿を見ることがない」
公の場に出てこないタイプは少なくはない。
ただ、流石に国主たる巫女が出た公務に欠席は。
「うむ。だがそれも歴代ってのを紐解けば珍しくはないのだろ?」
長老は長生きだ。
セーライムの建国当時から草として入り込んで今の地位にある。
魔狼族のハーフやクォーターが生れ落ちても、セーライムの地下で巣食い続けた筋金入りの密偵。
ジョージは若いころの無茶が重なって、彼らを知るきっかけになった。
一族の悲願ってのも知っている。
「ふー、居なかった訳じゃねえ。意図的に流布してる感じがするんだ、はぁー勘なんだがな」
根拠がない勘だより。
蒼の信徒たちは枢機卿のセンスに賭けている。
それで徒労に終わっても。
何もないなら民は苦しまなくていいってことになる。
あとは緩やかに意識改革をして――
「よし、探ってみるさね」
「助かる」




