神の篝火、蒼の信徒たち 4
遊び人のジョージは、貧民街の賭博場にあった。
リズムのあるノックで馴染みをアピールして、伸びた無精ひげを指先で弄りつつ。
それぞれのカードゲームでも覗き込みながら。
まあ、誰がツイてるのか。
或いはツキが無いかを物色しては――「あっち行けや! ツキがオチんだよ!!!」と邪険にする客とアイコンタクトを取っていた。
ここはそういう店。
いや、ちゃんと賭博場として運営されているけど。
娼館とおなじで。
奥のテーブルに通されたジョージの前に、ひとつ席が空いてた。
気づいたババアがチップ片手に声を掛ける――『こんな場末になんの用だい?!』
掠れた声だけど。
覇気かな。
衰えてる様子はない。
「黒の、最近、いい噂を聞かなくなったな」
切り出したのはカードを睨む片眼鏡のアスパラ。
細面の亜人で、レイピアひとつで貧民街の掃きだめの王になった男――仇名がアスパラ。
名の響きが似てたから、ジョージがそう名付けた。
「ほう耳聡いねえ」
席につくと、懐を左右から攻めて。
あれ?財布が...
「そもそも持ってねえんだろ、アンタ!!」
右隣は屈強な女。
一見すると、短髪で偉丈夫、傷だらけの大きな腕を持つ巨漢かと見間違える。
よく見ると胸筋にしては、まあ。
立派なスイカ、モモがごろんと張り付いてるんだから驚きだ。
あたしも絶壁よりかは、こっちがよかった。
『一文無し同士、キバればいいのさ』
ババアもか!
アスパラの表情が一層、不機嫌にしわくちゃになる。
◇
カードゲームは小芝居のようなもので。
実のところは、スラム一帯を仕切る“顔役”たちとの意見交換だ。
ジョージに寄せる底辺たちの要望。
出来ればすべてを汲み上げ、救ってやりたいが。
教会のリソースも無限じゃない。
大抵の案件は心を鬼にして。
いあ、それでも何とかしたい時に、彼は顔役に頼むのだ。
自費で。
『スラムの子供たちは確かに、安い労働力としてこき使ってくれてるよ』
教皇庁だけでなく、司教区の雑務に少年が狩りだされ。
少女たちは嗜好品として拾われている実態が見えてきた。
「前の会合の時、そんな話?」
「ああ、俺らも貧民街の子供らを、すべて把握してる訳じゃない。商人どものように脅せば、聞く気もない悪事まで下呂る奴らとは毛色が違い過ぎる。ジョージも分かってんだろ?! 片身でそっちに居んだ、黒はまだいい」
まだいい?
『黒色銃士隊は、目立ってくれる。灰色銃士隊の方は、教皇直属の番兵どもだ!! 女神正教会の中枢で何やってるかなんて、子供が数人消えたくらいではその当時、まったく動きも出来なかったのさ』
娼館に連れ込まれた青年は、氷山の一角。
瘦せた身で栄養が十分でない少女も、5つはガキに見えるだろう。
「少女趣味の聖職者か」
ジョージは手持ちのカードを場に捨てた。




