神の篝火、蒼の信徒たち 1
序列四位、神の篝火として知られる枢機卿はわりとだらしがない。
言動は粗野で育ちの悪さが目立ち、守銭奴たちに媚を売り、弱者に嫌悪している癖に花街で艶を買う。
うわさ通りに短慮、粗暴、腕力と権力を傘に暴力というが奮われた記録はないけど。
なんとなく近寄りがたいオーラをまとう。
まるで裏通りを牛耳る堅気ではない雰囲気の――人外のような。
どうやって枢機卿なんていう教会幹部にまで上り詰めたのか。
どうやって四卿に抜擢されたのか。
彼には二つの名がある。
枢機卿としての聖人に因んだ『マルキウス』。
乙女神が遣わしたという聖女とともに長く過酷な旅の世話係という清貧の老僧の名だ。
花街や繁華街でお忍びに出歩くときは『ジョージア』。
教会が運営する孤児院で貰った彼の名だ。
とにかく腕っぷしが強く、頑なな正義感を持ち合わせ。
拳一つで強者と渡り歩き。
異名として狂犬と呼ばれたこともあった。
若気の至りと嗤う時がある。
蒼いローブの下には様々な傷跡が隠れている。
人に見せるのは娼婦だけだ。
「――なあ、変わりはないか?」
気にかけた馴染みの娼婦の下にジョージアがある。
皆からは親しみの中で『ジョージ』と呼ばれた。
「そうそう、少し前に教会に雷が落ちたとか!!」
娼婦がからからと笑う。
他愛もない世間話。
「んー、まあ。枢機卿をはじめとした司祭長に多くの修道士たちがあって、女神に祝祷を挙げる宮に、、、いや、まさか天罰がくだるとは思わなかったよ。神の怒りは食らいたくはないが」
白の崇拝者たちのが妄言でなければ。
あれらの一連の出来事は『生まれたばかりの神』が起こした神罰ってことに。
神秘の回収は教会の権威を高め、女神の寵愛を失った後も世界に君臨し続ける奇跡の源泉となる。
これは是が非でもほしい。
「怪我人は?」
「君が気にすることでは」
と口の葉をつぐんで。
部屋の隅に目を配る。
戻って娼婦を見て――彼女は左右に振った。
「誰からだ?」
「はじめての客、外からきて。情報を持っているような素振りを」
パンツの神様の行方を知っていると安易に流した。
裏社会の流れの者だってことは明かして。
ジョージに繋いでくれと言伝を残した。
「俺を知っている?」
「解せないな」
娼婦もうなづいた。
蒼の枢機卿は出世欲よりも今の地位の維持に躍起な小物として見られている。他の三卿を出し抜くような度胸も才覚もなく、猪突猛進で盛りのついたサル並みという評価だ。
「えーそれ、自分でいう? わたしのこと一度も抱かないのに!!」
「抱いたことにしろ」




