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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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奔れ、ワンコたち 5

 内陸にあるセーライム聖王国まで普通に馬車を奔らせると、ひと月は見る必要がある。

 10人以上の人員を無作為に詰め込んでも3ないし、4台の客車が必須で。

 さらにそんな大きな客車くるまを引くとなれば少なくとも、馬の頭数も2頭ずつ計8頭か。

 それが用意できる街を選択しながら進む工程だ。

 生半可な道のりではない。


 時には紛争地帯に入ったり。

 あるいは道がなくなってたり、盗賊や追いはぎに、奴隷商人たちに狙われることもあるだろう。

 世の中、アクシデントの無い旅なんてものはないんだ。




 そうやって考え直してみると。

 乙女神の救いの手はどんなに大きかったことか――「あ、今、野盗たちを追い抜いたよ!!」

 マディヤの好奇心が窓の外にあった。

 とはいっても、ひと足飛びで百里も走る馬の前では。

 イベントフラグなんてミシン目にもなりやしない。



「動力源の動力はどうやって補充するんだろうな?」

 アイヴァーさんの気づきに、騎士団員も固まる。

 そういや魔術師もそんな説明書は残してないな。

「うーんと、ね...」

 なで肩を小さく竦めながら、マディヤが絞り出す声音。

「たまに弾き飛ばしてる人や、動物たちの魂だと思うよ」

 聞かなきゃよかった。

 それよりも残り半日で、あたしとの。

 いや、今は分れ離れになった魔王ちゃんとの約束の日時に間に合う。

 結社幹部があるとする聖王都の郊外に集合する。


「郊外って何処かな?」

 さて。

 今、逃走中のあたしらに念話を飛ばしても誰が取るか。

 逃げるのも、ヤるのも余裕なミロムさんが受信するかもだな。

『あーはいはい、こちら“蒼の魔女”です』

 緊急海戦に割り込むは、後輩の魔女。

 あたしよりも多くの支援・補助魔法に通じて、各方面では特に斥候として腕を買われてた。

 教会でも一目置かれる()の二重スパイなんだけども。

 今は丁度、手が放せる状況のようだった。

「蒼の!」


『はーい?』

 なんかマヌケな冗長に感じる。

 ひと足跳びにとは表現で、跳躍には魔術的な現象が影響してた。

 跳躍中の僅かな空間では時間がゆっくりと流れるようだ。

 これはお転婆な妹柱と、ナシムの細やかな悪戯で発覚したもの。

 飛び散らした水が一瞬、宙に止まってたのだ。

 跳躍における人体への影響を極力小さなものにしているのが、客車に刻まれた魔紋なのだ。

『マ、ま~じ~』

 跳躍中は会話していても、たまに音声が途切れることがある。

 ま一寸のことなので支障はごく僅かなんだけども。

 いあ、今、すっごく間が長かった気がする。

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