奔れ、ワンコたち 2
乙女神の恩寵。
最初は期待したけども、妹柱のマディヤが交信しても彼女が現れることは無かった。
天界との交信にはいくつかの条件が必要になる。
そのまま交信すると妹柱のオドが消費されるので効率が悪い。
どれほどのコストか。
まあ、1日に2回しか呼びかけることができなくなる。
失ったオドは睡眠で回復するほかなく、
彼女は半日、ほぼ寝たきりになる。
「なあ、本当に寝るだけか?!」
アイヴァーさんが怪訝な表情で問うた。
睡眠で回復する――確かに頭脳労働だと、疲労の回復には横になって睡眠をとるのがごく一般的かもだろう。が、そのほかに例えば甘未を摂取するとか、あるいは温泉で身体の芯から温めるというのも手だと思う。
疲労と同じと考えれば英気を養うとするなら。
「睡眠しかない」
きっぱりと。
はっきり答えたのは燕尾服の少女・ナシムだ。
彼女は仔細に自分を騙らないけども。
どうやらゴルゴーンたちから言うに、巫女のお役目にある少女とのことだ。
マディヤに世話を焼く巫女。
伝言を残してしばらくぶりに、
『こちら玉座管理の天使です――』
交信が繋がる。
交信の条件だった、神聖な領域から送った伝言。
どうやら漸くつながったようだ。
それまではずっと話中のような――
ツー、ツーと、耳鳴りのような音が鳴り響いてたのだ。
玉座管理の天使が語るのは、
乙女神は、最高神の下へ郷帰りしているという。
事実と、各世界から神様が居なくなる時期があるという告知のみだ。
伝言に際して、マディヤがやや物騒なことを口走って場が穏やかではなかったが、時期の話を受けて――「なあんだ、神無月のことかあ」とのこと。神さまがある特定の世界に集まる儀式めいたものだという。
「干渉しすぎて、左遷みたいなこともあるのか?」
心配性も特性に持つシグルドさん。
胃、腹を抱えて思わずマディヤに訪ねてた。
「うーん。まあ、主神の奥さんを、継母だけど。彼女を怒らせたら、わんちゃん?!」
うわ。
マジか。
もっとも。
最高神こと主神さまは、干渉しすぎてご自身の管理世界に子供、孫が多数いるという。
それを浮気だと言った今の奥様に見つかって。
子供たちは星になって。
孫は苦労させられたらしい。
詳しいことは知らないけど。
「じゃあ、恩寵は」
無理だねって、結論になる。
くぅー。
魔術師が用意した怪しい魔紋付与の馬車。
これを使って距離を飛ぶしかないってことだ。




