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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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奔れ、ワンコたち 1

 洋館に滞在したのは4、5時間くらいだ。

 陽が西の地平線に沈みかかっている――「今夜は泊っていけ。悪いようにはせんし、聖堂騎士のグリフレットと、ライオネルの両名と10人の精鋭を使ってやってくれ。今、ふたりには特筆すべき仕事が無いので拗ねていてな、やる気を出させるためにひとつ」と押し付けられた。

 使ってくれと指揮権が譲渡されたんだけど。

 和装の剣士アグラが握った指示棒。

 振ると、10人が右へ、左へとマスゲームのように動いて見せてた。

 マジか?! これが精鋭。

「精鋭の無駄遣いじゃん」

 マディヤの呟きが背を抉る。



 騎士団の精鋭は、甲冑を脱ぐと――普通に『人』に見えた。

 いや、何だこの違和感。

「甲冑が」

 アーティファクト?!

 って思ったころもあったけど。

「現地人のような食事も採ることはある。が、基本的には俺たちの()()側が基準の食事になるな、栄養の取れ高は数十倍だろう。筋肉の量も身体が巨大化するほど必要はない! だから、惚れてくれても構わんぞ」

 なんて。

 気難しそうなイメージが先行してたけども。

 アーサー卿ほどの人懐っこさの無い皆無。

 だけどいい距離感のような。

「グリフレット卿もひとが悪い」

 アイヴァーさんは一通りの会話で、緩衝材みたいな位置取りに落ち着いた。

 シグルドさんの方はまだ。


 長年、騎士団のちょっかいのせいで苦しめられてきた。


 悪魔召喚や魔獣召喚などと言う現象は、招待する術式ではなく。

 強制的にある世界から()()するようなものであると分かり易いだろう。

 その瞬間はある時点を境に頻発化した。

 騎士団の活動時期だ。


 ある世界とは魔界のこと。


 魔界以外の世界にも魔獣と悪魔は存在するけど、その世界に棲んでいる。

 自然発生た下級、下等な生物であって牛や馬とも大差ない。

 掘っておけば、自然発生で魔王も生まれるかもしれない。

 シグルドさんの身内が攫われたわけではないけども、治安の維持のために原因を探るようになって知りえた事実――誘拐事件は、別次元の世界が干渉してきた人災だったというものだ。

 んー。

 なんかそれは赦されないわな。

 あたしもこの世界から引っこ抜かれて、別の世界へなんて。

 気が動転して、星を堕とすかもしれない。

 幸い、そんな強力な魔物ヤツは術式のセーフティで防がれている。

 けども。

 それは召喚している側の都合でしかない。

 騎士団と、和気あいあいとしてるアイヴァーさんと喧嘩だけはしないでくれ。





 優雅に世界を旅するような支度の馬車ではない()()が騎士団から用意された。

 馬も尋常じゃない魔力を感じ、客車にも魔紋による強化がうっすらと見える。

「なにこれ?」

 マディヤも感覚的に見慣れないもののようで。

 神さまを出し抜くとは。

「精鋭を出すんだ、もう少し協力しようと思ったのさ。魔術師ガンドが夜なべで支度したから、アレは未だ寝ているがね。魔法・物理の戦略級耐性防御結界と、奔る距離を跳躍で飛ぶことが出来る『まじない』が施された、あーえっと... 装甲馬車とでも、呼んでくれ」

 装甲馬車?

 捻りが足りないなあ。

「この馬は?」


「デュラハンが跨ってる、首なしの馬だったかな? 一晩こちらで馴致させ、拳で分からせてある。存分に使い倒せばいい!! 天上の乙女神が手を貸せば、我らの気遣いも杞憂に終わるのだろうがな」

 アーサー卿は嗤った。

 肩を竦めた自虐的な笑い。

「準備が出来たら、頼む」

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