妹柱と魔術師と 5
「ここいらはぶちゃけると、だ。お恥ずかしいことに、観測対象者たちの足取りが追えなくなった。騎士団として、時代ごとの血族に介入して知識を授け、回収していることを何れかの時点で知ったのだと思われる」
こんな言葉を贈ろう――身から出た錆。
玩具を取り上げられた者が、生き残って血涙でも流しながら、子孫たちに警告でもしようとした。
書物か何かに書き記してたのだろう。検索が掛からないなら日記かもしれない、中二病を患ったと擬装でもすれば、わざわざ恥ずかしい黒歴史を覗く者はいない。
しかし。
いや、同情しちゃあいかんのだと思うんだが。
与えられて奪われる苦しみは計り知れない。
「その時代、時代で魔界から刺客が送り込まれている。経緯は伏せたいがね、彼らのキレイな仕事ぶりには妬けるぐらいに素晴らしく、有難いなあと。あ、いやいや揶揄った訳じゃあない、本当に手際がいいので嫉妬したのは本当だ!! こちらで始末をつける筈の獲物らを片端から影から影へ、闇から闇へと消していく。ニアミスもあって魔狼族らに追われる羽目になったのだしね」
騎士団を指して嘲笑う。
これまでの結社はさほど狡猾では無かった。
これは神さまを懐に誘い込んだことで増長したのだろう。
「そんな、バカな?!」
ナシムが吠える。
いや、噛みつくほどの勢いはあった。
「不死や不老などは、アンチエイジングという技術のいちテーマにある。理解しなくてもいい、メモを取る必要も無い。現段階でこれらの再現性は移植くらいのものでしかない。つまりは、肉体の改造だな」
アーサー卿が冷めた茶をすする。
飲みやすくなったと零してたけど、アレは重度な猫舌とみた。
「卑しそうな表情が見れた、いや、これも馬鹿にしたことではない。普通の感覚ならば、肉体の機能不全は年老いたものだと分かるだろう。覚醒者とは、探求者であり究明者ともいえるか、その先がもっと知りたいという欲望に忠実な者たちだ」
場の空気が少しピりついた。
明らかに嫌悪感が表面化したような。
◇
「――壊れた部位があれば、交換すればいいと考えたそんなヤツが結社に現れたんだろ。きっかけは、神さまの体液とか、血液なんかじゃないのかな? いや実際にはきっかけだったかも定かではないんだろうけども。騎士団ではこれ以上、結社に近寄ることが出来ない。必要以上に警戒されているからな!」
紅茶を淹れなおしてきた魔術師と、メイドたち。
もっともあたしの関心は『メイド、居たんだぁ』である。




